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第46話 選択

「君には君を肯定してくれる存在が必要なのだ。

 しかも君もその存在を大切に思えないと意味がない。

 ‎つまり、両想いであることが必須なんだよ」


 俺は家に帰ってベッドの上に仰向けに寝転びながら、この叔父の言葉を反芻するのだった。

 好きな人と両想いか……。

 まさか力を使えるようになるためにそんなことを考えないといけないとは。

 俺も健全な男子だ。

 ‎女の子に興味が全くないわけではない。

 ‎だが、復讐のこと以外に特に関心がなく、誰かと進んで付き合いたいとか考えていないのだ。

 ‎鬼灯にはもちろん内緒だが。


 まず現在恋人ということに一応なっている鬼灯。

 ‎まず彼女のことを真剣に考えてみよう……。

 ああ、俺は何を考えているのだろう。

 馬鹿馬鹿しい。   

 ‎こんな馬鹿馬鹿しいことを真面目に考えないといけないとは。

 ‎何を考えていたんだったか。

 ‎まず、相手をどうするかだ。

 ‎とりあえず、初恋の相手でもあった鬼灯だ。

 ‎現状、鬼灯は俺のことを好いてくれているようだ。

 ‎昔の態度とはずいぶん違う。

 ‎あとは俺が鬼灯のことを本気で考えることができたなら、好きになることができたなら、そうすれば。

 鬼灯好き、鬼灯好き、鬼灯好き……。


「お前、なにをぶつぶつ言ってるんだ?」

 

 甲冑を外したアリアが覗きこむように訊いてくる。


「え、あ、いや、なんでもない!」


「鬼灯のこと、そんなに好きだったのか?」


 恥ずかしくて思わず顔を腕と枕で覆い隠す。

 ‎考えていることが、しかもよりによってこんな恥ずかしいことがだだ漏れだったとは。


「おい、1つお前に言っておきたいことがある」


「な、なんだよ?!」


 どうでもいいから話しかけるな!

 今すげえ気まずいんだから。


「正直お前は復讐心のせいか良からぬことを考えないようだから、それはいい。だが」


「なんの話だ」


「しかし、ほとんど全く意識されないとまるで私に何の魅力もないみたいではないか?!」


 ずいぶんと不機嫌そうな女騎士樣だが。

 ‎なんだ? それはどういうことだ?

 ‎要するに女として見てくれ、的な意味合いか?

 前にも恋もしたかったができなかった的な話は聞かされてきた。

 しかし、基本アリアは使命優先の戦士という感じだ。

 力も強く、喧嘩や戦闘となると頼りになるやつというポジションであまり意識せずにきた。

 しかも、頑丈だからと俺も手荒な真似をしてきた。

 ‎だから、こうしたことを言われるのは意外であった。 


「だが、お前にははっきりと言っておく。

 私はお前を好いたりすることはない。

 ‎私ではなく鬼灯か鏡美と両想いになればいい」


 お、告白もしてないのに断られたぞ。

 ‎いや、以前に1回嘘の告白してたな。

 ‎それが嘘だということもばらしてしまったがな。

 ‎そんないい加減なことをした男のことを思ってはくれないだろうし、俺は俺でこいつに殺されかけたし常識的に考えてアリアはないな。

 やはり鬼灯からいくか。

 ‎鏡美を今さら女として見ろと言われても……。

 強いて言えば、能力に目覚める前から俺のことを大事にしてくれてはいたが。

 やはり今は考えられん。

 鬼灯ではダメなときに考えるとしよう。


 

 鬼灯をデートに誘って、デート当日の土曜日。

 最近、恋人らしいことをしていなかったからか彼女の喜びようは尋常ではなかった。

 家の前まで迎えにいった。 

 これがはじめてというわけではないが、豪邸だ。

 結界研究所の所長は俺の叔父だが、理事長は鬼灯の父親であるくらいだから当然か。

 なんとなくインターホンを押しづらい。

 インターホンを鳴らすと、本人が出てくれて、なにやらほっと

する。

 ほどなく外に出てくる鬼灯。

 栗色の縦ロールに、真っ赤なワンピースがよく似合う。

 だが、顔色が冴えない。

 具合でも悪いのか? と声をかけたくなったところで。

 髪や瞳の色は鬼灯と全く同じだが、身長が180くらいのガタイのいい男が鬼灯の後ろから現れた。

 短髪で精悍な顔立ち、年は20台半ばくらいと思ったが、よく見ると結界学園の制服を着ている。

 思い当たる男は一人しかいない。

 生徒会副会長、鬼灯朽長(くちなが)

 生徒会長の竜司以外で唯一SSランクにランク付けされている男だ。

 副会長は俺を見下ろすと低く響く声で言った。


「お前のことは昔から知っているが、その年になっても容姿だけは会長そっくりだな」

 

 こいつが弟、竜司にたどり着く前の最後の難関になるのか。

 



 

 

 

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