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第45話 手っ取り早い方法

 俺は叔父の首から手を離す。

 叔父は尻餅をついた。


「ほんとうか、叔父さん?!」


 叔父は少し咳き込みながらも喋りはじめる。


「ああ……。本当だとも……。

 こないだ鏡美と戦ったときの戦闘データを解析した。

 君のその力について分かったことがある」


「なんだ? なにが分かったんだ?」


 前置きは良いからさっさとしろよと気が焦る。

 

「君の力が発動するときに検出される電磁波は、結界発動時に検出されるものと性質が酷似した電磁波だ」


「それって……」


「魔王とやらに授かった力というのは、おそらく結界の能力」


 それを聞くと当然また1つの疑問が浮かんでくる。


「しかし、それだと話がおかしいじゃないか。

 俺の力は世界間をつなぐ力なんだろ? 

 能力は単一なんだろ?」


 叔父は頭を少しかきむしりながら話す。


「うーむ。そこはまだ私にも分からん。

 だが、お前の力が結界の能力と似たものだとしたら、比較して解析すればその発動条件などを探れるかもしれん」


 力の正体は不明でも、使い方が分かれば良いという考え方だ。

 それには一理あると思う。

 俺は叔父の考えにのることにした。

 叔父としてはさらなる研究データを取りたいだけなのかもしれないが。


 

 俺はたまたま研究所に用があった鬼灯にばったり出くわした。


「いったい、どうなってますの?! 

 この3日、学校以外全く連絡がなかったのに研究所には来ていらっしゃるなんて!! 

 私をなんだと思ってますの?! 

 それでなくてもいつもアリアさんを連れ回っているというのに!!」


 そう言って俺の次にアリアを睨みつける。

 やっかいな状態になったもんだ。

 ‎これはなかなか機嫌を直してくれそうにもない。

 ‎どうしたものかな。

 ‎困った視線でアリアに助けを請うが、わざと目を合わせてくれない。


「私が話してますのよ! 

 アリアさんのほうを見るなんてどういうことですの?! 

 どういうことですのよ?!」


「いや、鬼灯すまん。これはだな」 


「い、いいい、今、鬼灯とお呼びになりましたわね?! 

 みなわとお呼びになっていらっしゃいましたのに。

 何かこれまでにない距離を感じますわ!

 どういうことですの?! 

 どういうことですのー?!!」


 まずい、致命的ミスを犯してしまった。

 目を潤ませながら、詰め寄ってくる鬼灯。

 アリアさん、助け船だしてください。

 あ、体ごとあちらを向いていらっしゃる、アリアさん……。



 鬼灯のご機嫌をとるために実験に参加してもらうことになった。

 実験室では鬼灯の結界と俺の能力とを比較するといったことをやった。 

 発動が成功したり失敗したり安定しなかったが、その間、脳もモニターするなど叔父は徹底していた。


「す、すごいですわ!! 

 アリアさんを召喚しただけでなく、物を自由に動かしたりできるなんて! 

 さすが私の見込んだ方ですわ!」


 ほんとこの鬼灯の調子の良さには腹立ちを超えて呆れてしまう。

 アリアはこっそり笑っていた。


 

 だいぶ遅い時間になって、鬼灯はさすがに門限うんぬんで帰った。

 俺とアリアはそのあと叔父の研究室に通される。


「叔父さん、話ってなんだ?」


「結界の発動に必要なことって、なにか分かってるかい?」


「必要なことか。イメージじゃないのか?」


 叔父はうなずく。


「そのとおり。

 結界の発動は頭の中のイメージが現実を侵食するようなもの。このイメージが現実を侵食するためには確信がないとできない。君の能力もおそらく似たようなものだろう」


「ああ、その話は分かる。

 俺は確信ができないからダメなんだろ? 

 何回もその話は聞かされたよ。

 じゃあどうやら安定して確信できるのかってことが大切なんだろ?」


「君はこれまでいろいろあって心にダメージを負っている。

 私の知る限り、それで自己評価が低い場合、あらゆるものに対して不信感が強くなる。

 それが能力の発動を不安定にしているなら、自己評価を高めるしかない」


「そんなこと簡単にできるなら苦労はねぇんだよ!」


 悪い癖だが、つい怒鳴ってしまった。


「まあ、そう怒るな。手っ取り早い方法がある」


「なんだよ、その手っ取り早い方法って?」


「ずばり、好きな人と両想いになることだ」


「……はぁ?!」


 叔父の言葉があまりに意外であったために、俺の中で時が止まった。



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