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第39話 手にした力

「もう契約はできたのか」


「そのとおりだ」


 魔王は大きく頷いた。

 ‎ 

「貴様!! うわあああ」


 アリアが魔王にとびかかったが、魔王の見えない力でまた吹き飛ばされる。


 気がつけば魔王と契約していたが、なにか変化があったのだろうか。


 体がいつもより熱い感じこそあるものの、よくわからなかった。


「なにが変わったというんだ?」


 俺がそう言って魔王の顔を見ると、燃えるように赤い瞳がこちらをのぞきこんでいた。


「今に分かる。なんならここでそこの女騎士と戦ってみてはどうだ?」


 それを聞いて俺は腹が立った。


「言っておくが、俺はお前の部下じゃない!」


「無論だ。お前が部下などではない。我が友。いや、我が兄弟。いや、我が分身と言ってもよい」


「どういうことだ? どういう意味だ?」


「今、答える必要はない。お前はただ信じればよいのだ、余をな」


 魔王はかすれた不気味な笑い声をあげる。

 ‎契約とやらを結んだ以上、今さら疑問も不信も意味がない。


「それもそうだな。

 力がついたというなら、手っ取り早いのはアリアと戦うことだな」

 

 俺の発言にアリアは目を丸くした。


「お前、正気か?! 目を覚ませ、竜一! 魔王の言いなりになるなど!」


「俺は正気だ、アリア」


 俺はなんの感情もこめずに淡々と言った。


「それのどこが、正気だというのだ?! 

 魔王、貴様!! 竜一に何をした?!」


「この魔王に唆されているわけでもなんでもない。

 俺は俺の意思でお前と戦うのがいいと思った」


 俺の言葉に、理解できないというふうに首を横にふるアリア。


「私にはお前が魔王の支配下にあるようにしか思えない!」


 俺は馬鹿馬鹿しくて笑いがこみ上げてきた。

 ‎このアリアという女の馬鹿さ加減には呆れるものだ。


「なんにも分かってないな、お前は。

 これまでお前と戦うなんてしなかったのは、そんなことをしても無駄だったからだ。

 ‎お前に守られる以外になかった。

 ‎だが、魔王が俺に力を与えた。

 ‎それを試すのにお前が適任だと言ってるんだ」


 そう言うと俺はアリアと俺を結んでいる銀の蛇を力強く引いてみた。

 ‎途端にアリアは前につんのめる。

 ‎頭から床にめりこむほど激しい勢いだった。

 アリアにとっては不意打ちを食らったようなものだったろう。


「力が強くなったのか?」


 自分の手のひらを見ながら、つぶやく俺に魔王が言う。


「その程度ではないぞ、魔王と契約せしものの力は」


 これまでの魔王の話を思い出すと、俺は魔王から与えられた力がどういうものなのかなんとなく理解できた。


「そういうことか」


 俺はほくそえんだ。


「竜一、やめるんだ! 私と戦うことに意味なんてない!」


 アリアの声は俺にはなんとも聞き苦しく、不快極まりなかった。


「お前はちょっと前まで、俺を殺してでもこっちに来るとかなんとか言っていたじゃないか! 

 あげく俺の首を実際に締めた。 

 ‎ふざけるな!!!」


「うわああ!」


 アリアは俺の怒号だけで後ろに吹き飛んだのだった。

 俺は自分でも気が狂ったかのように笑っていた。


 






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