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第38話 契約

「仮にお前と契約したらどんな力が得られるというんだ? 

 俺の弟に、竜司に勝てるってのか?」


 俺は魔王に問う。 

 その内容いかんによっては考えなくもない。


「一度にすべての知識を得ることはできぬ。だが、間もなくすべてを知ることになるであろう」


 なんともいまいち分かりにくい説明だ。


「もっと具体的に、はっきり言ったらどうなんだ?  

 俺は結局弟に勝てるようになるってのか?」


「余を信じる以外にない。お前に力を与えるかわりに払う代償についても同様だ」


「代償についても力についても訊くな、だと」


「そうだ、余を信じよ」


「そんな一方的な契約を結ぶなど考えられない」


 そんな契約は聞いたこともない。せめて、こちらにもう少し情報が与えられるべきだろう。


「契約をしないのは勝手だが、お前はこの世界からあちらの世界には帰れない」


「お前!」


 なんとしても契約を結ばせたいらしい。

 こいつにとっては俺との契約がそれだけ重要なのだろう。


「余はお前の全てを知っている。現状を変えたくば、他に可能性などない。それはお前が一番分かっていよう。どのみちお前はこの契約を交わす以外にないのだ」


 今のままアリアに力があっても、いつまでもアリアが側にいるわけではない。

 俺は俺で力を持てなければ、元の世界に居場所などない。

 ‎そして、鏡美に守ってもらいながらの人生なんて耐えられない。

 この魔王は俺の心を読みきっている。

 ‎おそらく、俺が行き詰まっていて、やけくそになっていることも。だからこの一方的な提案ですら飲まざるを得ないだろうと分かって持ちかけている。

 

「魔王の言葉に耳を貸すな!」


 アリアが叫ぶ。


「そう言うなら、他になにか選択肢があるのか?」

 

 俺はアリアに疑問をぶつける。

 ‎この疑問に対する十分な解答が出せないのを知りながら。


「魔王に破滅させられてもいいのか?! そいつがまともな契約など持ちかけるわけないだろ?」


 正論中の正論。

 こいつはなにも、なにも、なにも分かっちゃいない。


「まともな方法で俺の現状を打開することはできないに決まってるだろ?! 

 もうどうにもならないんだ。

 お前の提案するのはどうせ全てまともな方法だろう。

 お前の話なんぞ聞いてなんになるんだ!」


 俺はアリアに背を向けた。


「決めたぞ、魔王。契約する。この際、お前にかけてやる!」


 魔王の汚い笑い声があたりに響く。


「よくぞ、よくぞ受け入れた。最も難しいことをやってのけたお前にふさわしいものを与えよう」


「よせ! やめろ!」


 アリアが声を張り上げるが、もう何も変えることはできない。


「こちらに来るのだ」


 魔王の声が俺を誘う。

 ‎俺は魔王のすぐ近くまで歩いた。

 魔王は全身から赤い稲光を放つ。

 それが俺の体を包み込む。

 まばゆい光が部屋中を照らした。


「契約は完了した」


 魔王はそう告げた。



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