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第37話 赤く鋭き眼光2

 体が浮いて建物に飲み込まれた後、俺とアリアは建物内を高速で引っ張り回された。

 前後左右と体ごと持っていかれ、ジェットコースターさながらのスリルがあった。


 やがて、奥の一室へと入ると、そこで俺たちは下ろされた。


「ここは?」

「なにかいるぞ!」


 アリアが何者かの気配に気づいたようだ。

 周囲を見渡すアリア。


「これは、魔竜か! 竜一、お前は下がっていろ」  


 そう言った瞬間、アリアは気配のあるほうに飛び立っていった。

 ‎暗くてよく見えないが、魔竜と戦っているアリア。

 ‎俺は言われた通り足手まといにならないように後ろに控えていた。

 ‎どうやら魔竜は何匹かいるようだが、銀の蛇のおかげで動き回れるアリアの敵ではないようだ。


 そのとき、俺は不意に後ろに気配を感じた。

 ‎

「誰だ?!」


 おそらく魔竜とは全く違う存在。


「ここにいるものなど、一人しかおるまい!」


 くぐもった低く響く声が帰ってきた。

 声の聞こえた方を見ると、人影があった。


「お前は?!」


 俺の問いにその人影は答える。


「そうだな、お前たちの言うところの魔王かと言われれば、そうなるな」



 そう言って現れた姿は黒い仮面、黒い鎧に全身を覆われていた。

 仮面の奥に剣のように鋭い眼光があった。


「お、お前が魔王?!」


 どんな化け物が出てくるかと思えば、大きさは人間くらいで、俺とたいして変わらなかった。

 ‎魔王は口を開いた。


「お前をここまで連れてきたのは私だ。余はお前の望みを知っておる。力が欲しいのであろう。圧倒的な力が」

「なんで、それを?」


 俺が驚いているとアリアがこちらに跳んできた。

「そんなものの言葉に耳を傾けるな」


「竜樹の騎士か」 


 竜樹の騎士とはアリアのことのようだ。


「お前をここで倒す。それが我が使命だ」


「やめておけ。そのような使命、時間稼ぎにしかならぬ」 


「時間稼ぎ? どういう意味だ」

 

 訝しげなアリア。 


「知る必要のないことだ」


 そう言って魔王が手をかざすとアリアはものすごい勢いで吹き飛ばされる。

 壁に叩きつけられたアリアはすぐに立ち上がれそうにもない。


 アリアからこちらに目をやる魔王。


「さあ、鳥羽竜一。

 力が欲しければ我と契約せよ」


「契約だと?」


「そうだ、復讐を遂げたいのであろう。

 お前のことはよく分かっているぞ」


 こいつはどこまで知っているのだろう。

 しかし、なんの犠牲もなしに何かの力を得られるわけがない。


「その力を得るための代償とはなんだ?」


「代償か、ないこともないが。

 といっても今のお前が損をすることはない。復讐ができるのならそれで満足なのであろう」

 

 確かに復讐さえできれば、満足であるが。簡単に信用できるはずもない。相手は魔王なのだからなおさらだ。


「そんな虫のいい話が簡単に信じられるか!」


「大いなる力を得たくはないのか。

 あの弟にどう対抗するつもりなのだ。竜樹の騎士がいたところであれの前には手も足も出まい」


 弟の竜司のことまで持ち出すとは。本当になんでもお見通しらしい。さすがは魔王だ。

 そして、確かにアリアでも、弟には敵わないだろう。


「重ねて言うが、お前自身にはなんらの力もない。

 あの竜樹の騎士アリアのみがお前の力。

 やがては彼女はこちらの世界に帰ってくるもの。

 向こうの世界に取り残されるお前は無力であろう」


 痛いところをついてきやがる。

 ‎まるで心を読まれているようだ。

 ‎魔王だからそれくらいできてもおかしくはないが。


「さあ、分かったであろう。我と契約を交わすのだ」



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