第34話 鏡美の思い
今回は鏡美の一人称です。
私は鳥羽鏡美。
実は私は世界最高記録を持っていたりする。
それは生まれて4才で結界の力に目覚めたという記録。
早くても5歳ころからと言われる結界の力に目覚める時期が私は1年も早かった。
しかも、私の力はとても強かった。
周囲の大人は私の力をとても恐れた。
そのせいで近所の子と遊んだことはほとんどなかった。
私は自分の強すぎる力が嫌だった。
そこからずっと自分の力を、そんな力を持った自分を認められなかった。
小学校に入った頃、従兄の竜一お兄ちゃんと一緒に住むことになった。
お兄ちゃんだけは私とよく遊んでくれた。
当時のお兄ちゃんはとても明るい利発な子だったけど、お兄ちゃんはなかなか結界の力に目覚めなかった。
お兄ちゃんが小学校6年になったあたりからお兄ちゃんはよくからかわれるようになった。
それはいじめに変わっていった。
よくお兄ちゃんが家に帰ってきて泣いているのを見るようになった。
お兄ちゃんの教科書やノートに落書きをされているのも見たことがある。
ある日の学校帰りに公園でいじめられているお兄ちゃんを見た私は、気づいたら結界を使っていじめっ子どもを退散させた。
私はお兄ちゃんを守ってあげられるって、はじめて自分の力を肯定的に考えた。
それから、私はお兄ちゃんを積極的にいじめから守った。
でも、お兄ちゃんからしたら、私に守られることはいじめられることよりも嫌なことだということがしばらくして分かった。
お兄ちゃんは自分にとっては叔父にあたる私のパパによく研究所に呼ばれていた。
私も昔から研究所を出入りしていたから、たまたま二人が話しているのを聞いたんだ。
「鏡美に守られるのがつらい」
その言葉で私はまた自分の結界の力を嫌いになった。
私が守るのをやめるようになり、中学に上がるとお兄ちゃんに対するいじめは激化した。
でも、私に助けてほしいとも言ってこなかった。
そうしているうちに、お兄ちゃんが鬼灯みなわ先輩に告白したというのをうわさで聞いた。
それがきっかけでさらにいじめはヒートアップした。
私はお兄ちゃんがそのうち自殺しないか本気で心配した。
お兄ちゃんは上級生、同級生はもちろん下級生や小学生からもいじめを受けていた。
小学生のいじめを行っているメンバーの話を盗み聞きして、私はお兄ちゃんのいじめの現場に駆けつけた。
そして、お兄ちゃんを守った。
私はお兄ちゃんを守ると逆にお兄ちゃんを傷つけてしまうことで自分を責めた。
自分を責めることが私が生きていてもいい証のように思えた。
だから、私はもう迷わずにお兄ちゃんを助ける。
相手が誰であろうと。
そう心に誓った。
「鏡美、私を殺すというのなら、私もお前を殺す気でいくぞ」
目の前のアリアさんの言葉。
ちなみに、私は今お兄ちゃんの部屋にいて、後ろにはお兄ちゃんがいる。
元の世界に戻るためにアリアさんがお兄ちゃんを殺そうとするからお兄ちゃんを守ってる最中なわけ。
にしてもずいぶんと最初とイメージが違うよ、アリアさん。
まあでも、私が今ここでアリアさんと戦っても間違いなく勝てるし、アリアさんがいなくなったら、またお兄ちゃんは無力になる。
だから、私には好都合だ。
「鏡美、どけ!」
その言葉は意外にも私の後ろから聞こえてきた。
「お兄ちゃん?!」
「俺はお前に守られるくらいなら、アリアに殺されるほうがいい!!」
ちょっと、どんだけ私に守られるの嫌なんだよ、お兄ちゃん!!
ここまで来ると悲しいというより、呆れるというか感心するレベルだよ、全く。




