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第27話 双頭

 魔竜が3匹。

 しかも前回とは比較にならないほどの俊敏な動き。

 俺たちは圧倒されていた。


 魔竜の巨大な尻尾が上から叩きつけられる。

 アリアが俺の手をとると一気に駆け出してそれを躱す。

 だが、向かった方向にもう一匹の足が襲いかかってくる。

 今度はわずかな方向転換で魔竜の足と足の間を抜ける。

 だが、そこで赤い光が俺の視界を占領した。

 とたんに俺の体が動かなくなる。


「竜一?!」


 俺の方を振り返るアリアの後ろで魔竜が大きな口を開けた。

 そこから毒液が放たれる。

 アリアは振り返ると、髪を光らせて鏡の球面を作り出す。

 そこに毒液が容赦なく注がれる。

 鏡がある程度は毒を防ぐが、それでもアリアの腕の鎧の一部を腐食し、白い煙が上がる。


「ぐっ」


 少し皮膚にも達したらしい。

 顔をしかめるアリア。

 そこに横からの強烈な尻尾の一撃が見まわれ、俺とアリアはまとめて叩き飛ばされる。

 


「はいはい、あんまり追いつめて殺しちゃったらダメだよ」


 叔父の能天気な声がこんなときにも耳障りだ。

 ‎叔父の一言で魔竜たちの動きが少し遅くなる。

 俺は今の一撃をまともに受けて動けないし、アリアも膝をついた状態から立ち上がれなさそうだ。

 

 頼みの綱の水鏡の剣は、戦闘開始直後、魔竜の不意打ちで落としてしまい、かなり離れたところに転がっている。

 

「つまらんね。

 そんなことで君は復讐を成し遂げることができるのかい?」 


 叔父は嘲け笑う。

 俺は力を渇望した。

 ‎結局、力不足だ。

 ‎どのような代償を払っても、俺はこんな惨めなところで這いつくばっていたくない。

 そう思ったとき、水鏡の剣が光りだす。

 ‎そして、刀身が蛇と化して柄と鞘を脱け殻のように置き去りにし、俺のもとに這いよる。


「これは?! これは興味深い!」


 興奮する叔父。


 そして、銀の蛇は俺の右手とアリアの左手を結びつける。

 途端に体があたたかくなり、力がみなぎる。

 ‎俺が立ち上がるのと同時にアリアも立ち上がった。


「アリア! 行けっ!」

「心得た!」


 アリアは魔竜たちに真っ向から向かっていく。

 ‎一匹の左肩を飛び越えて背後にまわりこむと、今度は後ろから右肩の上をとびこえる。

 その間に左手から伸びる蛇を魔竜の首にひっかける。

 そこで、アリアが魔竜の右側から左側へと遠ざかる方向に走ると、魔竜の頚部に銀の蛇が巻きつき、さらに深く食い込み、そこから血がこぼれ落ちる。


「待った、待った、ちょっと待った!」


 叔父が慌てて戦闘を中断した。

 ‎結界の発動を停止し、魔竜たちを引っ込めたのだ。


「いやあ、素晴らしい素晴らしい!! 

 2人とも、見せてくれその銀の蛇を」


 俺とアリアは叔父のもとに近づいた。すると、アリアが叔父をキッと睨みつける。


「叔父殿、少々やりすぎではないか!!」


 俺の気持ちをアリアが代弁してくれる。

 甲冑の一部が壊れているし、当然のことだ。


「いやいや、済まなかった。

 しかし、あそこまでやらないとそいつは拝めなかっただろうね。 おや、よく見るとその蛇、頭が2つあるね」


 そう言われると俺に巻きついた側とアリアに巻きついた側とそれぞれに頭があった。

 だが、すぐに一つ頭の蛇になると、2人の腕から外れて鞘と柄のところに戻っていった。


「ああ、よく調べる暇もなかったよ」


 肩を落とす叔父。

 その様子を見て、俺とアリアは顔を見合せ微笑んだ。


 

 叔父とのバトルのあと、研究所の一室で2人で席について休憩をしているときだった。


「なあ、竜一。

 お前の復讐心はたいしたものだと正直感心しているんだが、少し訊いていいか?」


 ジュースを飲みながら、アリアが突然言い出した。


「なんだそれ、褒められてる気がしないんだが。なにを訊きたい」


「お前、昔何があって今みたいになったんだ?」


「俺はただ、昔から力がないためにボコボコにされて性格悪くなっただけだよ。

 力があるやつはいいよな」


 アリアはため息をついた。


「力があればいいというものでもない」


 その時のアリアの表情には、最初会ったときの憂いがあった。


「むしろ、お前のことを聞かせてくれないか? 

 ここに来る前どうしていたかとか」 


 俺が訊ね返すと、アリアはぐっとジュースを飲みほしてから、どこか悲しげな微笑みを浮かべた。

 

「復讐のために私との信頼関係作りか?  

 まあいい。話してやろう」


 アリアは話しはじめた。

 

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