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第26話 再戦

「鬼灯、大丈夫か?! 鬼灯?!」


 鬼灯は俺に抱き抱えられ、気絶している。


「竜一、これはいったい?!」


 当然の疑問を口にするアリア。


「おそらく、弟の仕業だ」


 あたりを見渡すが、弟、竜司の姿はない。

 あいつを倒すには元側近の鬼灯から能力について聞き出したかったが、それすら不可能なのか。

 だが、結界である以上、当然有効距離があるはずだ。


「とりあえず帰ろう。学園から、あいつから離れよう」


 俺は鬼灯を背負い、アリアとともに学園の外に出た。

 しかし、学園を背にしてそれなりに時間が経っても、意識は戻らない。


「くそ! どうなってやがる!」

「そう苛立つな、竜一。鬼灯はいったん医者に見せた方がいいのではないか?」


 こうなると、弟のせいなのか、もしくは持病なのか、判断に困りはじめた。

 そもそも、普通保健室に運ぶところをこんなところまでおぶってきてしまった。

 冷静さを欠いている。


「おーい、そこでなにをしてるのかね、君たち」


 こんなときにすぐ近くで止まった車から、何やら聞き覚えのある声がとんできた。


「叔父さん!」


 車内から見慣れたメガネの中年男がこちらをのぞいていた。



「いやあ、学校から研究所に向かうところでね」


 鬼灯含む俺たち3人は、叔父の車に乗って研究所に行くことになった。


「調子の悪くなった鬼灯家のご令嬢をおんぶして道端で途方にくれるとは、竜一、君も変わり者だね、ハハハ」


「笑い事じゃないぜ、ったく。でも助かった。研究所なら医者もいるしな」


「ところで、倒れたのはどういう状況かね?」 


 俺は叔父に簡単に説明した。

 ‎無論、その直前の俺が告白したがどうのという話は割愛した。


「なるほど、そういうことか」


 叔父がそう言いながら、カーブを曲がると目の前に研究所が見えてきた。



「鬼灯くんは医学的には特に問題はなさそうだ」


 とはいえ、鬼灯はベッドに寝かされ、覚醒しない。

       

「じゃあ、なんで目を覚まさないんだよ」


「それは……薄々検討は付いているのではないのかね?」


「ってことは、あいつの?」


 叔父は頷きもせず、肯定の言葉も発さなかった。


「こういう状態になった生徒の報告を何人か受けてきたが、そのうち目を覚ますだろう。

 鬼灯の家の人にはこちらから伝えておくから安心したまえ。

 そのことよりも話したいことがある。

 ついて来たまえ」


 叔父の背中の後ろを歩くが、この道はなんとなく覚えている道だ。

 

「ここだ」


 そこはあの三連休で見慣れた模擬戦の部屋だ。

 ‎天井はとても高く、どこもかしこも真っ白な部屋。


「君たちはこないだあの廃屋でいろいろとやらかしたみたいじゃないか」


 情報だだ漏れだな。

 B組との対決のことだ。


「なんで知ってんだよ、叔父さん」


「この研究所は、観測所でもある。

 私闘にしてはかなり大規模な結界使用者間の争いだったからね。

 しかし、訊きたいのはそこじゃない。

 あの数にどうやって勝ったか、だ」


 なるほど、叔父としてはそっちに興味があるのは当たり前だ。

 ‎俺は詳細に説明した。

 ‎銀の蛇が柄から脱け出して、俺とアリアを結んだこと。 

 アリアが半径2メートルをこえて動き回れたこと。


「素晴らしい! 

 では、今すぐ見せてくれその力を!」


「そんな無茶な」


 たまたま気まぐれで水鏡の剣があんなことを起こしただけだ。


「1度できたことが2度できないという道理はないだろ。

 科学とはそういうものだよ」


 それは科学の話だろ、とツッコミをいれるのも面倒だ。


「まあ、いい。力ずくでも見せてもらうよ」


 そう言うと叔父は結界を展開した。

 またドラゴンを出してくるつもりか。

 案の定、床から黒いドラゴンが現れる。

 だが、これは?!


「魔竜が三匹だと!」


 これにはアリアも驚いたようだ。


「一匹だけしか召喚できないなどと言った覚えはないよ」


 叔父の瞳が眼鏡の奥で光った。 



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