第24話 覚醒
勝機は最初の先制攻撃。
動きを止める高林が一番厄介だ。
そう思うと水鏡の剣の刀身は銀の蛇になって伸びていき、高林に襲いかかった。
「うわあああ、なんだ?!」
結界を展開する前に首をしめつける。
驚くB組連中。
「今だ! 鬼灯!」
すぐに鬼灯の声が響く!
「展開!」
B組の連中の半分くらいが結界の範囲内に入る。
「発動!」
鬼灯の炎の結界が内部の敵を燃えない炎であぶる。
阿鼻叫喚。
その言葉がぴったり当てはまる。
続いて俺とアリアが一気に前に出る。
アリアの髪が光りだす。
鬼灯の攻撃から免れている連中が結界の展開を終える。
同時にアリアの鏡の球面が形成され、俺と鬼灯はその内部に逃げ込む。
B組連中の結界が次々に発動するが、それを鏡の球面が跳ね返す。
ここまではよかった。
だが、鬼灯の炎が弱まっていく。
「ふざけないでよね!」
一宮だ。
彼女の冷気の結界が炎を中和している。
だが、それ以上の問題があった。
水鏡の剣が凍りつきはじめたのだ。
高林を抑えられなくなっていく。
高林は結界を発動させると水鏡の剣の動きを完全に封じてしまった。
高林が叫ぶ。
「あの鏡みたいなのなんとか突破しろ、集中攻撃をかけるんだ!」
あの鏡みたいなのというのは、言うまでもなくアリアの蛇星鏡のことだ。
攻撃手段がなくなった俺たちにB組の結界が連続で発動される。
そのほとんどはアリアの蛇星鏡で反射される。
しかし。
「なんだこれは?!」
俺は思わず叫んでしまう。
足元が凍りついていた。
俺だけでなくアリアと鬼灯もだ。
蛇星鏡が防ぎきれていない。
多数の結界による攻撃を受けて、いつもより鏡の曲面が削られているのが分かった。
そして、とうとうB組の何度目かの一斉攻撃で砕け散る蛇星鏡。
その後はひどいものだった。
動きを封じられた俺たちは縛られ、特に男の俺はぼこぼこになぐられた。
「まさか、鳥羽とアリアちゃんが鬼灯とくっついてたとは意外だなあ」
そう言いながら男子生徒は俺の腹に何発目かの膝げりを見舞ってきた。
「いくらなんでも3人で1クラスを相手にするのは無謀だろ?」
「鳥羽、俺お前のことけっこう気に入ってたのによ!
そこのいけすかない縦ロールとなんで仲良くしてんだよ?」
「ほんとありえないわ~」
その他好きなことを言いたい放題のB組。
「ほんと腹立つね、私の結界の威力、味わってみる?」
そう言ったのは空手をやってるという天野って女だ。
天野は俺から5メートルほど離れたところから結界を展開するとその場で回しげりをする。
普通ならば、その距離で彼女の脚が当たるわけはないのだが、側頭部に強烈な衝撃が加わる。
そして、俺の意識は遠退いていく。
結局、俺は負けた。
Bランクになろうがなにも変わっていない。
ただ、ひたすらに虚しいだけだ。
力の前に屈伏させられるため、惨めな想いをするために俺はここにいる。
俺は強者が優越感を得るための餌に過ぎない。
変わることのない俺の人生。
どうしてこれ以上このような屈辱に耐えねばならない。
どうして俺はこんな酷いところにいるのか。
俺はこんな酷いところではなく、良いところにいたいんだ。
良いところと酷いところのうち、良いところにいたいんだ。
俺は倒れ、頬を床にくっつけた状態で意識を取り戻しつつあった。
ぼやけた視線の先に水鏡の剣があった。
俺はそれを見て願った。
俺を包んで、俺のいるところを良いところにしてくれ。
すると水鏡の剣が光りだし、柄から刀身が外れた。
そして、外れた刀身は完全に銀色の蛇となって、こちらに向かってくる。
「動きを封じているはずなのに、どうして剣が動いているんだ?」
高林の驚きの声がきこえた。
銀の蛇は俺の周りに丸くなるとと、自らの口で自らの尾を加えて輪になった。
その輪がまばゆく光輝いた。
力が体にみなぎるのを俺は感じた。
気がつけば俺は立ち上がっていた。




