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第21話 鬼灯を攻略せよ

「自分に惚れさせる?!」


 アリアは呆れた顔をしていた。


「そう、惚れさせることが復讐」


「お前、昔、告白を散々に断られたからというのは分からなくはない。だがな」

 

 アリアはなにか俺のことをかわいそうなやつを見るような目で見てくる。失礼なやつだ。


「それも心底惚れさせる。そうすれば、竜司の弱点を探ることができる。鬼灯は竜司の側近中の側近だったからな」


「なるほど、それが狙いか」


 もちろん、それも狙いだが、とにかくあの女を惚れさせる。

 なんとしても。

 俺の受けた屈辱。

 忘れることはない。


「アリア、ちょっと試したいことあるんだが」



 翌日、鬼灯の机と椅子は倒されていた。

 鬼灯が机を起こそうとすると罵声がとんだ。


「触るな!」

「ここはB組だ! 

 Aランク様の席はねえんだよ! 

 ‎ほら、SA組に戻りな! 

 ‎Aランク様!」

「ガハハハハ!」


 教師がくるまでその状態が続いた。


 休み時間には荷物を窓から捨てられたり、

 ‎女子が協力してトイレに行かせないなどの嫌がらせが行われた。


 まあ、俺からしたら生ぬるすぎて物足りないレベルだったが。

 

 助け船を出すと俺にまで被害が出そうだから、さすがにこのあたりは手を出せない。

 ‎他のやつがいないときには声をかけてやるといったことはした。

 ‎無論、礼など言われるわけもない。

 ‎だが、俺は誰よりもよく知っている。

 ‎この状況でほんの少しでも優しくされたら、嬉しくないわけがないということを。

 

 そして、放課後。

 ‎またどういうわけか誰かの手が滑ってバケツの水を頭から被らされる鬼灯。

 ‎昨日と似たようなことが続いて、掃除はやはり鬼灯1人に押し付けられた。

 ‎だから、昨日と同じくこっそり戻ってきて手伝ってやる。

 ‎鬼灯は当然ながらの疑問をぶつけてくる。

 ‎

「あなた、ほんとにどういうつもりですの?! 

 こんなことしても何の意味もありませんわよ! 

 ‎だいたいあなたのおかげでこんな屈辱的な状態に陥っているのですから!」


 そう、こういった言葉が返ってくる。

 だが、本当はそれはそれはもう藁にもすがりたい、そんな気分なものなんだ。

 どう取り繕おうと変わることはない。


「まあ、そう言うな。好きでやってることだ」


「好きでやってる? 

 ああ、分かりましたわ! 

 ‎そうやって優越感に浸っているのでしょ?! 

 ‎下のものに上からお恵みを与えてやる的な」


 まあ、そう受けとりたくなる気持ちが分からんでもない。


「そんなんじゃあねえよ、受け取り方はお前の勝手だがな」


 掃除はほどなく終わった。

 

「掃除は私1人でできますので、お手伝いは無用ですわ!  

 失礼致します!」 



「ちょっと待ってくれないか、鬼灯」


「なんですの?」

 

「もう一度結界戦しないか?」


 驚く鬼灯。


「は?! そんなことをしてなんになるというのです?」


「こないだの戦いは引き分け。

 だが、俺も意識が遠退く中での引き分けでなんか釈然としない。

 ‎お前だって負けた気がしない試合だったのに事実上敗北扱い。

 ‎決して納得してないはず」


「だからといって、私闘したところで公式の結果にはなんの影響も出ませんわ!」


 そう確かに結果が覆るわけではない。


「でもさ、気持ちの問題だろ?」


 すると、鬼灯の表情に明らかな変化が起きたのが分かった。



「分かりましたわ! お受けしましょう!」



 かかったな、クズ女!

 闘争心に火がついたところ悪いんだが、もうお前なんか敵じゃないんだよ。

 今度こそ完膚なきまでに叩き潰してやる。

 




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