第18話 鬼灯みなわ
しばらく1話を短めにします。
ご了承ください。
生徒会室を出て、階段を下りる途中で後ろから鬼灯が声をかけていた。
「まさかわたくしが、最低辺のあなたのような方と戦うことになるとは」
その言い方には俺を心底軽蔑してるのが感じられた。
実際、腕を組んで俺を見下す態度だ。
「あなたには、いえ、あなたたちには完膚なきまでに負けていただきますわ。この鬼灯みなわの名にかけて」
俺がしゃべろうとしたところだった。
「鬼灯と言ったか。私は負けるつもりはない」
アリアがきっぱり言った。
「ふっ」
鬼灯は余裕の笑みを浮かべるとすたすたと階段を下りていった。
「鬼灯には絶対勝つ!」
俺は全身を震わせていた。
「竜一。どうも感情的になりすぎてないか?」
「あいつはな! あいつは赦せない! 弟も赦せないが、先にあいつだ。鬼灯だ」
「お前よほど、あの女に恨みでもあるのか?」
鬼灯みなわ。
俺は鬼灯のことが好きだった。
俺は中学のとき、告白した。
だが、結界が発現しない俺に鬼灯が浴びせた言葉は今でも忘れられない。
「いいですこと、結界が発現しないなんて、動物と同じなのですわ!
ネズミのオスに恋する女の子はいないのですわ!
ネズミのオスだからそんなことも分からないのですわね!
お気の毒様!」
俺はこれで思い知った。
女なんてろくでもない生き物だと。
そして、俺は人間扱いされないんだということに。
絶対に、絶対に赦すことはできない!!
試合当日。
結界戦用の会場として闘技場がある。
半径50メートルの正円のステージ。
そのまわりを取り囲む観客席。
全校生徒がこれを見に来ていることだろう。
俺とアリアがステージにあがると、もう鬼灯は待っていた。
アリアと最後の確認をする。
「あいつの結界の半径は約30メートル。
かなり広い。
その範囲で炎を操る」
「うむ」
「結界の展開速度、発動速度ともにかなり速いはず。
炎の特徴は実際には燃えないが体感的には非常に熱いということ。
だが、それだけだ。
建物を破壊せずに敵のみを攻撃可能で、殺傷能力はないが無力化できるから、ランクが高めになっている。
お前の蛇星鏡なら防げるはず。
あれで防ぎながらお前と俺で懐まで飛び込めば勝てるだろう」
「心得た」
俺たちと鬼灯が互いに10メートルほど離れた位置につくと、レフリーがほどなく試合開始を告げた。
「展開!」
鬼灯が展開と口にするのとアリアの髪が光るのが同時だった。
俺はアリアに近づき、俺ごとアリアは蛇星鏡に包まれる。
「発動!」
俺たちを火柱が包む。
だが、鏡の球面の中では熱はやはり感じない。
勝てる!
「なんですって?! 私の炎が効いていない?!」
鬼灯も驚愕の色を隠せない。
「このまま一気に攻めるぞ、アリア!」
「ああ!」
だが、そのときだ。
「私の力を甘くみないでくださいまし!!」
鬼灯がそう言うと俺たちを包む火柱が大きくなった。
そして、蛇星鏡の中まで熱が伝わってくる。
凄まじい熱さだ。
「ぐわあああああ!!」
俺とアリアの叫び声が会場に響きわたった。
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