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エリジャ姫  作者: 囘囘靑
27/43

27_死せる者の味方

 名を呼ばれてすぐ、エリジャは稲妻に撃たれたかのようになった。そして、自分自身でもどうしてそうするのか分からないまま、息を殺し、エリジャは背後に振り返った。


「アースラ……?」


 そこには、三年前に命を落としたはずの親友・アースラの姿があった。後ろで一房に束ねられた真珠色の長い髪、金色の瞳、尖った顎――アースラに間違いなかった。


「お懐かしゅうございます……」


 アースラが声を詰まらせる。そのときにはもう、エリジャはたまらなくなって、アースラのことを抱きしめていた。


「アースラ……!」

「ああ、エリジャ様……」


 しばらくの間、エリジャとアースラはお互いに抱き合っていた。


「アースラ、本当にあなたなのね……」


 アースラから離れると、エリジャは目元をぬぐう。


「でも、どうして? あのとき、てっきり死んだものとばかり……」

「親切な隊商に目を掛けてもらい、命を助けられました」


 エリジャの疑問に対し、アースラはよどみなく答える。


「……ヂョゼの餌食にならなかったのは幸いです」

「フフフ、そうね」


 アースラの言いぐさが面白かったので、エリジャは思わず吹き出してしまった。


「むしろ、あなたが死ななくて済むように、ヂョゼが隊商を導いてくれたのかもね。……どうしたの、アースラ? 顔色が悪いわよ?」

「いえ……そのようなことは……」


 アースラは唇を引き結ぶと、視線を落とした。アースラは取り繕っているが、その顔色が悪いことなど、エリジャにはお見通しだった。


 とは言うものの、どこが具体的に悪いのか、エリジャははっきりと見抜けなかった。エリジャの目からは、アースラはどことなく影を帯びているように映った。


「とにかく、エリジャ様。エリジャ様に会わせたい方がおります」

「私に……?」

「ええ」


 アースラの真剣なまなざしを受け、エリジャは黙ったまま一度、頷いてみせた。

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