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ネズミの洞

そう言えば、一つ、気になることがあった。

 

「なあ、ここって…初心者の冒険者が良く挑むダンジョンだよな?何でこんなに人気が無いんだ?」

「ああ、そんなの簡単よ。だってここ、深層だもの。」

「へ?つまりなんだ、俺は、いつの間にか、気がつかない内に深いところまで潜ってたって事か?」 

「初心者に良くあるミスよ。確かに、ここは初心者に推称される、難易度の低いダンジョンではあるけど…構造が厄介でね、斜め下に真っ直ぐ進んだ構造だから、気が付けばバカみたいに強い魔物の巣の中、って訳。」


あ、あぶねえぇ~~!!

どこが初心者推称だよ!!完全に殺しに来てるじゃん。

 

「途中で幾つか…分かれ道みたいなのがあったでしょ?ま、普通は下準備さえすればこんなことは起きないんだけどね。」

「うぐっ…」

 

それを言われると痛い。

下調べをせずに来たのは俺のせいじゃ無くてだな…

 

「あ、もうすぐ中層よ。」


成る程、確かに分岐点のような穴が開いている。

途中、やたら狭いと思っていた小道はこれだったのか。

 

「全然気がつかなかった…」

「情報が足りなさすぎだわ…もっとしっかりしないと、簡単に足元を掬われるわよ?」

「ご丁寧にどーも。」

 

彼女が中層と呼んだフロアは、深層よりは手狭な広場がいくつも繋がっているような構造で、前後の確認さえしていれば迷うような事もない場所だった。

まあ、俺はしてなかったが。


「しっかし、ここはネズミしか居ないな…」           

「ネズミでも立派な魔物よ?油断してたらあっさりやられるわ。」

 

ここが【ネズミの洞】と呼ばれる由縁は、その名の示す通り、異常なまでにネズミ系モンスターが多いことにある。

その中でも最も有名な魔物『ラージラット』は体長一メートルほどの巨大なネズミで、一応魔物ではあるがその生態は通常の元気なネズ公達と変わらないのが特徴だ。

 

肉は食用に適し(内蔵は臭みが強く、とても食えたものではない。)、良く冒険者の間では食べられることが多く、その皮も汎用性が非常に高いため、魔物だから減らないのを良いことに、もっぱら乱獲されまくっている可哀想な奴等でもある。


また、もう一つの特徴として、大きさ故かあまり群れないと言うのがある。

俺の時はあくまで例外だが。


ダンジョンのモンスターは摩訶不思議だ。

どういうわけか魔物を倒すと、倒した者は強くなる。

それも倒せば倒すほどに力が増していくため、通常はそうやって実力を付けていき、より難易度の高いダンジョンへと向かうのが定石だ。   

勿論、俺はしていなかったが。

 

「どうしたの?考え事?」

 

ハッとして顔を上げる。

 

「いや…ちょっと頭の整理をしてた。」

 

アリスが俺に訝しげな視線を向けるなか、地上をめざして俺は足を踏み出した。 

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