任務:取り残された冒険者達を救い出せ!!・四
「ふぅーーっ…」
大きく息を吐き出した。
騎士もこちらの様子を伺っているようだ。
『ヌゥゥ…』
最初の頃と比べて、俺は格段に強くなっている。
隙を突いて脇腹に剣を突き立てること位しか出来なかったが、今ではこうしてマトモに戦える位には成長しているのだ。
剣を握る手に力が入る。
スタミナポーションの効果で体力が回復するのを待ち、呼吸を整えた。
迷いが晴れていく。
俺にもやれるんだと言う自信と勇気が湧いてきて、自然と頬が吊り上がった。
「気を付けて!!そいつ、何か変よ!!」
「…は?」
騎士の左手が雷のような黄金の光を放つ。
剣に手を押し当てて、ゆっくりとその刀身をなぞると、その刀身が、まるで生きているかのように動き出したのだ。
まるで、東洋に伝わる『大曲剣』のような形に変化する剣。
逆転する戦況。
流れるような連撃が俺を襲い、上段からの一撃が左肩にヒットした。
「ぐ…ぅあ…」
「クリス!!」
回りに響くほど大きな『ボキリ』と言う音。
「う、おおぉぉおおあぁぁぁあ!!!」
だが剣を手放す訳にはいかない。
クレイモアを逆手に持ち、剣の柄を利用してパリィを決めまくる。
痛みでおかしくなりそうな中、『ゆっくりと』迫る剣をいなし続けた。
いや、視界に写る『全ての物がゆっくりと』動いていた。
その中で俺だけはいつも通りの動きが出来るようだった。
素早く剣からダガーに持ち換え、ヤツの脇腹目掛けて、何時かそうしたようにその矛先を突き立てた。
元に戻る世界のスピード。
『ウグ…ァ……ぐ、オォッ!!』
今度ばかりは顔面を殴られる。
冑がひしゃげ、変型した鉄板がメリメリと顔にめり込んだ。
右目に激痛が走る。
「ぐあぁッ!!」
『オノレ…一度ナラズ二度マデモ……土よ…オ、オォォォオッ!!!』
苦しそうにそう叫ぶと、先程と同じく金色の光を放つ左手を、今度ね地面へ叩きつけた。
ビシ、ベキベキベキ。
地面がヤツを中心に割れ、ヒビがフロア全体に広がり始めた。
「くっ、なんだってんだ!!」
俺は気絶したままの少女を担ぎ上げた。
顔とか肩とか色々痛いが、ぼさっとしている暇はない。
『潰レテ死ネ…!!』
騎士はそう言葉を残し、黒い靄と共に姿を消した。
一体どんな仕組みだ。
「クリス!!こっちへ!!」
「走れ!!」
二人が視界の効かない俺を声で誘導する。
「いまいkどわぁぁぁぁぁああ!?!?」
所が、地面はパックリと開き、俺と少女は中へ吸い込まれて行くのだった。
○○○○○○
「そ、そんな…」
武器が手から滑り落ち、ダリルはへなへなと地面に膝をついた。
「嘘…嘘よ…こんな…」
アリスは現実が受け入れられず、ぶつぶつと何かを呟き続けているようだ。
「あ、ははっ、あははははは…」
アリスの乾いた笑い声が、空虚な地面の大穴へ吸い込まれていく。




