ライトノベルが現れた
高校卒業後、夢を叶える為に専門学校に通い始めた俺は、クラスに馴染めないため学生寮に引き篭もっていた。引き篭もり生活20日後、外部との連絡を完全にシャットアウトしていた俺はインフルエンザに感染し、誰にも助けを呼ぶ事が出来ないまま、孤独死した。
孤独死したはずだった。
おかしい、最後に意識があった時は頭痛も鼻水も何もかも酷くて、意識も定まっていなかった。
大好きなアニメを見る余力も無く、どうしようもない脱力感の中、
天井に貼った「マジカル☆ハヤテ」のポスターがぐにゃぐにゃに歪んで見えたのに、
今の俺の視界はとても綺麗だ。
視界に違和感がある所かインフルエンザに感染する前よりも鮮明だ。
自分の視力の変化に呆然としていると、ある事に気づいたのだ。
そう、俺は今メガネをかけていないのだ、本当にどうなっている。
視力の回復現象について暫くして、身体のいたる所が健康的な状態になっていることに気づいた俺は、
再度困惑を繰り返した。
暫くして周囲の環境を観察する余裕が出来た俺は、自分が今いる場所を見渡した。
木製の壁に木製の床、窓にはフリルのついた可愛らしい白いカーテン、
俺が寝ていたと思われるベッドは小さな丸太を組み立てたかのようなデザイン、
どう考えても学生寮の俺の部屋ではない。
落ち着け、きっとここは夢の中だ、そうに違いない。
きっと最近はまった異世界転生ラノベの内容が夢の中に現れたんだ、
その証拠がこの部屋だ、この時代にこんな部屋に住んでるのはどこかの民族くらいのものだ。
どれ試しに頬を全力で引っ張ってみるとしよう。
夢なら醒めるし、醒めなくても現実程痛みが無いのはラノベで予習してある。
「痛ってぇー!」
静かな部屋に俺の叫びが響き渡る。
自分が指に込めた力以上に痛い、どうやらここは現実らしい。
ヒリヒリと痛む頬を摩っていると遠くから足音が近づいてくる、
木製のドアがゆっくりと開く、その向こう側から現れたのは…
「だ、だいじょうぶですか!?」
白と水色が混じったような髪、控えめなフリルのついたワンピース、
グリーンアメジスト色の透き通った大きな目、
小動物の様な保護欲をかき立てられる顔立ち。
ライトノベルが、俺の目の前に現れた。
次回 コスプレ少女(仮)