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第七話 武源開放

 フラックの実力はなかなかのものであり、ゴーレムとまともに打ち合えるレベルであった。

「大ボスを彼に任せた身としてはこいつ一体くらいは何とかしたいものだな!」

 ゴーレムの動きは一般的なものよりも素早かったが、彼は手にした剣でその攻撃をいなしていく。名のある鍛冶師がうった剣であるため、折れる心配はないと多少強引に攻撃を防ぐことができていた。

「ゴーレムの弱点は……核だよなあ」

 だが何回かそれをするうちに攻撃を受けている手がしびれてきたため、次の対応を考えるが、ゴールほどの爆発的な火力がない自身がどう動いたものか悩ましかった。


「でも、やるしかないんだよなあ。彼らもアレを倒すのは難しいだろうから、ね!」

 ちらりと騎士二人を見てからフラックは素早く足元に潜り込むとゴーレムの足を削り始めた。彼の動きはゴーレムのそれを上回っており、足の傷が増えていく。その間もゴーレムによる攻撃は繰り出されているが、スピードに乗った彼についていくことはできなかった。

「ぐおおおお」

 痛みは感じていないだろうが、ゴーレムは攻撃があたらないことに苛立ったのか声をあげる。

「声を出しても当たらなければ意味はないよっと!」

 次の一撃は傷をつけるための攻撃ではなく、傷を更に深くするための攻撃だった。同じ場所を集中的に攻撃されたゴーレムの足はついにバランスを崩し、その場に片膝をつく形となる。


 背が低くなったことで、顔まで攻撃が届くようになった。

「とどめだ!」

 フラックの一撃は目を貫き、更にその奥にある核までとどき、それを見事に打ち砕く。核を破壊されたゴーレムはガクガクと震え、腕を振り上げるがそこで動きが止まり、がらがらと崩れ落ちる。

「は、はあ、なんとかなった……」

 自分が持てる最大限の動きで攻撃を繰り出したため、全身をどっと疲労が襲い掛かる。

「休んで、られないか」

 それでも疲れよりもやらねばならないことがあると気を持ち直した新隊長の視線の先には、ゴーレムに押され気味の騎士二人がいた。


「くっ、重い!」

「何とか食い止めるんだ!」

 それでも二人は何とかゴーレムの攻撃を受け止めていた。彼らの力ではゴーレムを翻弄するほどの動きはできず、剣の腹で受けて耐えることで精いっぱいだった。

「いいぞ、そのまま耐えてくれ!」

 声をかけたフラックは前方を彼らに任せて、後方からゴーレムの足に向けて攻撃を繰り出していく。


「隊長! ……よし、俺らももうひと踏ん張りがんばるぞ!」

「おう!!」

 フラックの援護に二人は声を掛け合い、気合を入れなおしていく。

 しかし、ゴーレムという堅い体をもつモンスター相手に二人の剣もフラックの剣もそろそろ限界が近づいてきていた。

「くそっ、まだ持ってくれよ!」

 ゴーレムは攻撃されている足を気に止めず、前方にいる騎士二人に猛攻といえる攻撃を繰り出していた。


 その一撃が剣に当たった時、大きな音と共にそれぞれの剣が刀身の中央あたりから真っ二つに割れてしまった。

「くそっ! ダメか!」

 騎士の一人が自分の手にある剣を見て、絶望に崩れ落ちそうになる。

「いや、よくやってくれた」

 先ほどの大きな音は剣からだけ発せられたものではなく、ゴーレムもまたがらがらと音をたて膝から崩れ落ちていた。


「これで、止めだ」

 フラックは折れた剣を捨て、予備の武器を手にしていた。その一撃は先ほどと同様にゴーレムの核を貫いていた。

 核を破壊されたゴーレムはそのまま目の光を失うと、支えを失ったように前方にバタンと倒れていく。

「二本の剣を潰したけど何とかなったね……二人ともお疲れ様」

「はい! 助けて頂いてありがとうございます!」

「隊長のおかげで助かりました!」

 騎士二人は礼の言葉を口にするが、言われた彼は違うと手を横に振った。

「いまのゴーレムを倒せたのは君たち二人ががんばってくれたからだよ。それに……本当に助かったかどうかは、まだ彼次第だろうね」


 その視線の先にはいまだ巨大なゴーレムと戦うゴールの姿があった。

「なかなか、やるじゃないか!」

 強度も他のゴーレムをはるかに上回る固さをしており、その見た目に似合わず軽快な動きをしている。

 ゴールは苦戦というほどではなかったが、しかし突破口を見いだせずにいた。

「固い、速い、弱点もガードされている。どうしたものやら」

 彼はゴーレムの攻撃をいなしながらぼそりとつぶやいた。


 彼の持つ大剣は強力なものではあったが、これまで数多くの魔物を倒してきており、そのせいで切れ味も徐々に鈍ってきている。それでも彼の膂力をもってすれば問題なかったが、目の前のゴーレムはその差を強引に乗り切ることが難しいほどの強さを持っている。

 また、騎士たちの剣と同様にこの大剣にもダメージが蓄積されてきており、ゴーレムとの打ち合いも厳しくなってきていることを彼はひしひしと感じていた。

「これは、持たないか?」

 彼の注意が手にしている大剣に移ったところで、ゴーレムの口が開き光が見えた。

「!? まずいっ!」

 ゴールは慌てて大剣の腹を盾にするように自分の前に持ってくる。


 予想の通りゴーレムの口からは光の帯が放たれた。

 高火力のそれは大剣によって防がれるが、その圧力で大剣ごと押されたゴールは壁まで吹き飛ばされてしまった。

「ぐむむう、こ、これは結構くるな」

 土煙が立ち込める中、ゴールは首を横に振って身体を起こした。肉体へのダメージはそれほどでもなかったが、彼の手にしている大剣の受けたダメージは致命的なものであり、中央に亀裂が入っていたため、このまま使うのは無理だった。

「ぐっ、いくら俺でも武器がこれじゃあな……」

 ゴールは苦い顔をしてから立ち上がり、使えなくなった大剣を投げ捨てた。

「さて、どうしたものか」

 そう口にした彼は、それでも次にどうするか既に腹をくくっている表情で左手の小手を外していた。


「ゴールさんの剣が……僕の剣を!」

 彼の剣が壊れたことに気付いたフラックが自分の剣をゴールに投げようとするが、その動きはゴール自身が手で制したことによって止められる。

「どうして!? 武器がなければ戦えないじゃないですか!」

 そう必死に声をあげるが、ゴールは静かに首を横に振って自分の左手に巻かれた包帯の上にそっと手を置く。

「武器なら……ある。武源解放!」

 言葉と共に包帯の下にある腕輪が強い光を放つ。光が収まると次の瞬間にはゴールの両手にはそれぞれ一本ずつ刀があった。

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