伊吹
目が覚めると誰かが覗き込んでいる。
(…??)
俺は怪物に襲われた事を思い出し、飛び起きた
「やっと起きた…」
「誰だお前?」
小柄で、小さく、黒髪のショートカットの女が俺に話しかけてくる。
「お前とは失礼ね、怪物に襲われてるのを助けてあげたのに」
「…!そうか、お前が助けてくれたのか」
「だからお前って呼ぶな!」
「じゃあ名前を教えてくれ」
「私は楓」
「俺はの名前は…」
俺は口籠る。言葉が出てこない。
「名前が…わからない…」
「はぁ?なに、ただのバカなのアンタ?」
「違ぇよ!けど…本当に思い出せないんだ…」
(ただのバカね…拾って雑用させようと思ったんだけど…)
「あ、じゃあ私が名前つけてあげる」
「は?マジで言ってるのか?」
「そうね…ウマシカは?」
「は?どういう意味だ?」
「そのままの意味、ウマシカ(馬鹿)よ」
そのまましばらく俺は考える
「…?あ!馬鹿って意味か!!!」
「すぐ気づかないのも馬鹿よね」
「くそ…馬鹿にしやがって…」
「馬鹿だから仕方ないわ」
(ムカつく奴だな…)
「まぁ冗談はこれくらいにして、本気で考えましょ」
「うーん」
「あ、伊吹なんてどう??」
「まぁ…馬鹿に比べたらマシか…」
「じゃああなた今日から伊吹ね」
「っていうか伊吹、私が助けてあげたのにお礼もないわけ?」
(面倒クセェ奴だな…)
「うん、まぁありがとう…」
「どーいたしまして〜」
「まだ腕と頬は痛む?」
(そうだ、俺は怪物にやられて怪我をしてたんだ)
「頬の傷は残りそうね…まぁ仕方ないわ」
「そうか…」
「疲れたから寝ていいか?」
「全快したら手伝いしなさいよ」
それは聞こえたものの疲れていたので
カエデがどうやって助けてくれたのか気にもせず眠りについた