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灰色の黒龍の碧  作者: 生木
0歳(17歳)編
8/21

買い出し

「らっしゃいらっしゃい!!!東の地方から新しく入荷した魔石がやすいよ!!!見ていって!!!」

「昨日取れたての魔獣の肉だ!!!早い者勝ちだから早く買ってきな!!!」

「休憩するならよってくださいー!!!美味しい紅茶とお菓子がありますよー!!!」


大通りの至る所から人々が大声を出している

道の両端には色とりどりの店があり、そのほとんど店の前で呼び込みをしていた

店と店の間にも旅商人のような人がシートを引いて商売をしているようだ

かなり広いはずの大通りは大量の人で溢れ帰っていていて、少しでも気を抜くと押しつぶされてしまいそうだ


祭りというわけでもなさそうなのに至る所に屋台がある

いろいろな食べ物が売っていて、いろんな所からいい匂いがしてきている

城下町っていつもこんな感じなのだろうか


「食べ物はもうちょっとあとでね。先に用事済ませちゃうから」


屋台の方を見ていたのがわかったのかカミラさんが言ってくる


カミラさんは今日はジャージでも重そうなローブでもなく普通の街娘というような格好をしていて、人化で角は隠している

一応お忍びで来ているのに変装しなくていいのかと思ったが、認識を薄くする魔法を自分にかけているので、角と服装を変えるぐらいで大丈夫らしい


僕もいつも城で着ているような豪華にフリルのついたような服ではなくもっと簡素な服を着ている

服の見た目から判断するとここは元の世界よりも文化が全然進んでいないらしい

まあ温度調節まで魔法で出来るらしいから別に服が便利になる必要はないのかもしれないが


ちなみに今日は二人きりだ

ヴェラさんやカミラさんのお付きは来ていない

認識を薄くする魔法は自分にしかかけられないので

メイドさんが来ると目立ってしまうかららしい

まあそれでも僕達みたいな格好をすればいいだけだと思うのでただ厄介払いしただけだろう

メイドさんがいると楽だが常に見られてるので結構疲れるのだ


「お嬢さん、綺麗なアクセサリーいっぱいあるよー。みていかないー?」

「持ち合わせが少ないので、また今度来ますねー」


嘘つけ

金色の小判大量に持ってきたくせに

まあ呼び込みを回避するにはあれが一番いいのだろう

商人のおじさんももう別の人に声をかけ始めてるし


「欲しかったなら買ってあげるよ?」


僕が見つめているとカミラさんが言ってきた


僕は首を振る

あのおじさんには悪いがいつも僕が付けてる(付けられてる)物の方が一回りも二回りもいい物だろう

あのアクセサリーが安物なのではなく城のものが高すぎるのだ


それにしても僕の生活用品を買うらしいがホントにここに城に合うほどの価値のものがあるのだろうか?


「ここだよ」


いろいろと考えながらしばらく歩いていると着いたらしい


決して豪華とは言えなく、どちらかといえば質素な店だ

他の店はレンガ造りなのに対し、ここは木造なのでやたら目立っている

看板などはないのでなんの店なのかはわからないが、中を見る限り雑貨屋のようだ


カミラさんが扉を押して中に入ると、カランコロンと音が鳴る


「あ、いらっしゃいませ」


中に入ると商品を並べていた30代くらいの女性が言う

こちらでは珍しい黒髪を肩まで伸ばして、いかにも従業員の服ですという服を着ている


中には服やカバンなどの日用品や見た事も無いような道具がいろいろおいてあった

壁に剣や盾も飾ってあるが、値段がついているのを見ると売り物なのだろうか

魔法が普通にあるような世界なのだから剣が売っていてもおかしくはないと思ってはいたが、実際に見るとやはり驚いてしまう

珍しいものがたくさん売ってるので正直ものすごく見て回りたい


「本日は何をお探しですか?」

「この子の生活用品をお願いしたいんだけど」


カミラさんが僕を指さしながら言う


すると、店員さんが僕の方をじっと見つめてくる


「……まだ生まれて間もないですね。幼児用の道具はあまり置いてないのですが……」

「いや、大丈夫です。かなり賢い種族なので見た目ぐらいの知能はあります」


いえ、知能は17歳です

見た目よりも13、4歳は年上です


とは流石に言えないので大人しくしておく

まあ、言いたくても伝える手段が今のところ無いのですけどね


「でしたら、大体の物なら揃うと思いますのでゆっくり見ていってください」

「いや………」


カミラさんが人化を解く

認識を薄くする魔法も解いたのか、店員さんが驚いた顔をする

そりゃいきなり国王が目の前に現れたらそうなるよな……


「ゴドさんを呼んでもらえますか?」


店員さんは少しの間呆気にとられていたが、すぐに立ち直る


「失礼しました。夫はいま奥で作業をしていて、少々時間がかかるので中でおまちください」

「いや、いいですよ。商品見て待ってますから」


申し出を断ってから、僕の手を離す


「さあ、もう好きに見てきていいよ?」


色々見たくてソワソワしていたのが伝わっていたのか、カミラさんが笑いかけてくる


まあせっかくだから、お言葉に甘えることにする

とりあえず気になっていた使用方法の不明な道具の所まで小走りで行く


これは………何だ?

小さな釜のようなものの蓋に少し穴があいている

料理道具にしては小さすぎるし


「それは錬金釜だね」


錬金釜?

そんな高級そうな物が普通の雑貨屋に売ってるのか

流石異世界


「使ってみる?」


使っていいのか?

売り物だろこれ


「大丈夫大丈夫、壊れたら買い取ればいいから」


この金持ちめ!!!


まあ使えるならためしてみるか

なにげに異世界っぽい道具使うの初めてだし


「ここに何個か石入れて………」


カミラさんが使い方を教えてくれる

そのカラフルな石も多分売り物なんですけど……


「それで蓋をして、混ぜる」


蓋を回すとゴリゴリ音が鳴って石が砕けているのがわかる

そして蓋を開けると入れた石が全て混ざったような色の石がひとつだけあった


「はい、完成。やってみな」


カミラさんに言われたとおりに石を入れて混ぜる

すると、また同じように石が一つだけ中に入っていた


どうなってんだこれ?

いろいろな角度から見てみるが、見た目はただの釜だ

石を砕いてる音しかしないのにいつの間に混ざってるのだろうか


「人の店の商品を勝手に使うな」


と、遊んでいると奥から人が出てきる

さっきの人とそう変わらない年だろうか

作業着を着ていて、短髪の黒髪で無精髭の生えているいかにも職人と言った感じの人だ


「ああ、遅かったね」

「来るなら連絡をしろ。俺だって暇じゃないんだ」

「その割にはちゃんと対応してくれるんだね」


カミラさんが楽しそうに笑う

この二人は長い付き合いなのだろうか

国王に向かってタメ口というのは普通できないだろう


「で?何の用だ?」

「この子用の生活用品を作って。特注で」

「なんだ?こいつは」

「私の新しい妹」

「………どこから拾ってきた?」

「しいてゆうなら森かなー?」

「………ああ、紅の子か。もう生まれてたのか」


こんな人まで僕のこっちでの母親のこと知ってんのか

もしかして有名人?


「まあいい。具体的に何を作ればいい?」

「この子うちに来たばっかでこの子の生活用品全くないんだよ。服だけは私のお古があるけど。だから必要そうな物はとりあえず全部作って」

「なるほど………まあせっかくだから服も作るか。どうせどんなに高くなっても気にしないんだろ?」

「うん、最高級のものを作って。はいこれ、この子のサイズ」


おい、いつの間に測った

全く身に覚えがないんだが


「どうせならなにか武器も作るか?そのうち必要になるだろ」


ならねぇよ

と、思ったがカミラさんが割と真剣な顔している


………え?必要になるの?


「いる?」


ブンブンと音がするほど首を振る

そんな物騒なもの必要な世界なのかここ………


「いらないみたい」

「本当にいいのか?今ちょうどいい鉱石が手に入ったんだが」

「まあ流石に武器持たせるのは早いかな」

「……まあいい、出来上がったら連絡する。ほかに何かあるか?」

「あとは………あれを貰える?」


カミラさんがぼくのもっていた錬金釜を指して言う

あれだけ遊んでたら流石に買うよね

このまま置いていったらどうしようかと思った


「銀貨3枚だ」

「はい」

「まいど」


商品を受け取って僕に手渡す

さっきまで楽しそうに話してたのにこういうとこらは淡白にやるのな


「じゃあまたくるよ」

「本当に武器はいいのか?今ならオーダーメイドで装飾も付けるぞ?」


どんだけ武器作りたいんだよこの人………


「まあこの子がいらないって言ってるからね」


できれば一生持ちたく無いです


「……そうか、気が変わったらいつでも言ってくれ」

「うん、じゃあまた来るよ」


カミラさんがそう言って僕の手を引きながら逆の手で手を振りながら店を出る

ゴドさんは片手だけあげてそれに答えていた



「さて、せっかく街に来たんだから遊んで帰りますか」


そう言って僕の方を向く


「何か欲しいモノある?」


僕は首を振る

この世界にあるものがわからないので、欲しいものと言われても正直困る


「まあそうだよねー。じゃあ適当に屋台でも回って食べ歩きでもしますか」


そう言ったカミラさんの顔はとても楽しそうに輝いていた



♢♦♢♦♢



「お帰りなさいませ」


城に戻って自分の部屋に入ると扉のすぐそばにヴェラさんが立っていた

毎度毎度びっくりするから開けたら目の前にいるのはやめて欲しい

だが、それを伝える手段を僕は持っていないのだ


「じゃ、私は部屋に戻るから。また明日ね」


カミラさんは僕を部屋に連れてくるとすぐに部屋に帰っていく

それを見送ると、買ってもらった錬金釜を棚においてから、ベッドに倒れ込むように寝転がる


疲れた…………

結局朝から晩まで歩きっぱなしだったし………

初めて行った街でテンション上げすぎるのは危険だということが分かった

遊んでる間はいいが、帰りが地獄だった

明日は筋肉痛だな


「お疲れ様です。寝てしまう前にお風呂に入りましょうか」


このままいるとホントに眠ってしまいそうなので疲れた体を無理やり動かしてヴェラさんに連れられながら風呂場まで歩いて行く

ああ、まだここに来てから2週間しか経ってないのに女性と風呂に入るのが普通になってる自分が怖い



♢♦♢♦♢



後日、ゴドさんから道具が届いた

いろいろと高そうな食器や服の中に短剣が混ざってたのは見なかったことにしようと思った

いらないって言ったのに………

本編の方は次から少し時間を進めようと思います

一応ここまでを第一章として考えています


2015-02-14 一部修正

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