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灰色の黒龍の碧  作者: 生木
0歳(17歳)編
4/21

魔王

どうなってるんだ?


と、水たまりに映る自分姿を見て思う

どこからどう見ても小さな人間の子供である


しかも全裸である

いや、ついさっきまでも一応全裸ではあったがドラゴンの裸と幼女の裸では全然違うだろう


「大丈夫かい?」


と、しつこく青年が聞いてくる


とりあえず彼らに話を聞いてみよう

さいわい言葉は同じみたいだしな


「あ……。…あ……」

「うん?」


とイケメンが聞き返してくる

ヤバイ、うまく声が出ない

久しぶりに喋るからなのか、声をだそうとするとのどから喉から空気が漏れるような感じがする

人間だった頃から合わせてももう数ヶ月はまともに喋ってないだろう

いや、今も人間か……


まぁとりあえず最後に喋ったのがコンビニでの「あ、袋一緒でいいです」の僕にはいきなりまともに話すのは厳しかったらしい


ならばと思って枝を拾って地面に文字を書く


―ここはどこですか?―


「???」


だが、二人の人間は理解していないようだ


ふと、イケメンの持つポーチのようなものから出ている本を見る

そこには見たこともないような記号がかいてあった


なるほど、言葉は同じでも文字は違うのか

だとするとどうやって意思疎通をしよう


「と、とりあえずこれ着ようか」


と、イケメンが布のようなものを渡してくる


そう言えばいま全裸だったな

ここ二日間ずっと全裸だったから忘れてた


ありがたく布をもらって羽織る

でかすぎて引きずっているが文句は言えないだろう


「さて、この子どうしますか?一回街に戻って「いや、殺していく」








……………は?

こいつ今なんていった?


「ちょっ、なにいってんですか!!?」


そうだ言ってやれイケメン!!!

森で見つけた子供をいきなり殺そうとするとかどういう神経してんだ!!!


「まだ子供ですよ!!?少し時間の無駄になるかもしれないですけど一回街に戻って協会に預けてからまた来れば………」

「よく見ろ、コイツは人間じゃない。うまく化けているが魔族だ」

「なっ……」


あ、バレた

っていかこの姿って人間に化けてるのか

いつの間にか無意識にやってたのかな?


「だったらよけいだめですよ!!!この時代に魔族を殺すのがどれだけ大変な事か………」

「落ち着けよ。立ち入り禁止の森だぜ?誰に見つかるってんだ」


と、髭面のおっさんはいう


「おれはな、魔族が嫌いなんだ。動物と変わらないくせして人間様の真似事しやがってなあ。ガキの頃は戦争に行けば魔族を殺し放題だと思ったら和平条約とか結びやがって。劣等種族なんて全滅させちまえばいいんだ」


と髭面のおっさん猟銃をこちらに向ける


ヤバイ

こいつ本気で殺そうとしてやがる


逃げようとしたが腰が抜けて動けない

ヤバイヤバイヤバイ


「じゃあな、お嬢ちゃん。恨むんならこんなところで俺に会っちまった自分の不運を恨むんだな」


ガサガサっと草むらを分けてくる音が聞こえる


「何だァ?……!!!…がっ……」


突然何かがすごい勢いでおっさんにぶつかる



狼だ

狼が草むらから飛び出してきてタックルをする

そしてそのまま切り返して僕を食わえて逃げ出す


「!!! まてっ!!」


というが、狼が待つ訳が無い

だんだんと離れていってすぐに見えなくなる


っていうか物凄い速い

さっき走ってたのは僕がついていってたからスピードを緩めてたのかな?

軽く車よりスピード出てる気がする

口に加えられて走ってるのもあって正直怖いんだけど

もう人間たち見えなくなったんだからおろして欲しい



♢♦♢♦♢



「はあっ、はあっ、はぁっ」


何度か落ちそうになりながらも何とか巨大な木の場所まで戻ってくる


ああ………疲れた

まさかこの世界で生まれてから初めて会った人間に殺されかけるとは

ヤバイ、ちょっと泣きそう


と、涙目になっていると狼が頬を舐めてくる

慰めてるのか?

結構気持ち悪いから正直やめて欲しい





突然背筋にぞわりと寒気がする


「!!!??」


なんだ?

なんなんだこの感覚?


なにか感じたことがない恐怖を感じる

さっき殺されかけた時より比べ物にならない恐怖

周りを見渡すが、ほかの動物はなにも感じていないらしい


が、狼だけは違ったのか、僕を食わえて木にある穴に逃げ込むように入る

と、外で誰かの声が聞こえてきた


「そこにいるのはわかっておる。出てくるが良い」


誰だ?

と、外を少しだけのぞき込む


フードのついている黒いローブを頭から羽織って

フードの隙間から赤色の長い髪を垂らした女性がいた


人間?

と、思ったがなにか違う

なにが?と言われると分からないがとりあえず雰囲気?というか何かが違うのだ

威圧感がすごい

結構離れたところから覗いているがそれでもなにか本能的な恐怖を感じる


「そんなところから覗いてないでこっちに出て来い、龍の子よ」


………多分僕に言ってるんだろうな

さっき見た感じこの森に他にドラゴンなんかいなかったし


でもね、僕さっき人間に襲われたばかりなんですよ

何が言いたいかというと正直あの人がかなり怖いってこと

また殺されかけるんじゃないかってね


「早く来ないとここら一体に焼け野原にするぞ」


普通に脅迫してきた

出ていかないと殺す気満々じゃないか

焼け野原とか無理だろとか思えるが嘘だと思えない気配がする


チラリと狼をみると完全にビビってた


とりあえずこれ以上立てこもるのはマズいと思い穴から出る


と、渋々と言った感じに狼も穴から出てきた

心なしかさっき走り終わったあとより汗の量が多い気がする


「やっと出てきたか」


狼の後ろで体を半分隠しながら出ていく

狼もかなり警戒しながら少しずつ近づいていく


「そんなに警戒することはない。とって食うことなどせん」


焼け野原にするとか言ってたやつの言う事なんか信じれるか!!


「そんな警戒せんでもええ。ただの脅しじゃよ、本当にやるつもりは元からない。あのままじゃと黒龍殿は出てきてくれなさそうじゃったからの」


黒龍?

周りを見渡す

それっぽい動物はいない

狼を見る

無言で首を振られた


………もしかして僕のこと?

人違い………龍違いじゃないか?

僕全然黒くないし


「間違えとりゃせんよ、お主は間違いなく黒龍じゃ 」


だって黒くないし


「心配するな、成長すればだんだんと美しい黒色になる。」


いや別にそんなこと心配しちゃいませんけど

何しにきたんですかこの人


「ん?ああ……話がだいぶそれてしまったの。妾はお主を迎えに来た」


迎え?


「今は亡きお主の母親に頼まれての、卵から孵った自分の子を育てて欲しいとの」


へえ、やっぱこの体にも母親はいるんだ

生まれてすぐにいないからどうしたのかと思ったけどもう亡くなってのか………


「申し遅れたな、妾の名はカミラ。ダナヴァ王国第17代王女じゃ」


女性はそう言ってフードをとる

頭から斜めに2本の角が生えている


………うわぁ、やっぱり人間じゃなかった


「と、いう訳での少し一緒に来てもらうぞ」


そう言ってカミラさんは近づいてくる

やばい怖い

2本の角も相まってめちゃくちゃ威圧感がある


カミラさんが一歩近づく度に一歩ずつ下がる

向こうは少し驚いているようだが構っていられない

だって怖いんだもん


さいわい間には狼がいるから少しくらいは時間稼ぎに………っておい!!!逃げんな!!!自分は関係ないって顔して横にそれるんじゃない!!!


あ、いつの間にかカミラさん目の前に来てた

上からのぞき込んでくる


「そう怖がらんでも良い。危害を加えるつもりはない」


と、カミラさんが抱き上げてくる


「じゃが一緒に来てくれんかのう?お主の母親とのやくそくでもあるのじゃ、暮らしが気に入らなかったらまたこの森に戻ってきてもええ」


と、少し困った顔でカミラさんがいう


うーん、こんな顔でここまで言われたら断りづらいけど……

正直ちょっと怖い


迷っていると狼が近づいてくる

なんだ、僕を見捨てた狼さんじゃないですか、どうしたんですか?


「ん?ああ………そうじゃ、お主のボディーガードとしてこの狼を連れて行ってもええ。こやつもお主を守ろうとしとるしの」


その狼大事な場面で僕のことを見捨てたんですけど………


「大丈夫じゃ。この狼も本当にお主が危ない場面になったら命を賭して守るじゃろう。黒龍というのはすべての魔物の王じゃからの」


うーん、どうせここに居てもまたいつあの人間たちに見つかるかわからないし、カミラさんも別に悪い人じゃ無さそうだ

ついていってもいいかな………

もう今の僕はドラゴンじゃないからこの森で過ごしていけるかどうかもわからないし


「おお!!!来てくれるか!!!断られたらどうしようかと思ってたところじゃ、ありがたい。」


と、言って僕を地面に下ろす


「では、我が城まで飛ぶ。その狼に跨っとれ」


言われたままに狼に跨る

と、カミラさんが何やら呪文のようなものを唱え始めた


「しっかり捕まっとれよ………それっ!」


と、カミラさんが両手を押し上げるように上げる


うおっ、とんだ!?


僕と狼さんは浮き上がって、巨大な木のてっぺんと同じくらいの高さまでくる


「結構なスピードが出るからの、振り落とされんようにせぇよ」


僕は狼に体をすべて預けるように捕まる


「ではいくぞ、それ!!」


ああ、動き出した

ホントにこれ結構スピード出るな……あれ?なんかどんどんスピードあがって………ぎゃあぁぁぁ!!!!!!

なにこれ!!!おかしいでしょ!!!何百キロでてんの!?


かなり遠くからでも見えそうなあの巨大な木ももう見えなくなる


しばらくするとかなり大きな街が見えてきた

2015-02-14 本文一部修正

2015-02-25 本文一部修正

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