戦闘の後
投稿遅れてごめんなさい
目の前に段々と川が近づいてくる
打ち付けられるのを避けるために腕を伸ばし体を一直線にする
体に当たる風のせいで完全には伸ばしきれないが仕方ない
数秒もしないうちに水に入る
「ぐっ!!!」
思っていたよりも浅いため、打ち付けられるのを避けるために伸ばした腕が地面に当たる
バキバキと音がして、指の骨が折れる不快な感覚がした
が、腕は全然大丈夫みたいで、ちゃんと動かすことができた
それを確認したのもつかの間、激しい激流が僕を襲う
深さが思ったよりも無いとはいえ、僕の身長よりは深いので、足がつかずに流されるままになってしまった
何とか川から脱出する為に何か掴める物を探すために腕を動かすが、川の真ん中に落ちたためか体を支えられるほど丈夫な物はない
仕方が無いので、流れてくる石や木に打ち付けられながら流れに逆らって何とか川岸まで泳ぐ
しばらくして、何とか川岸の木につかまることが出来た
「はあっ、はぁっ………」
岸には登らずに、急いで辺りを見渡す
「………あそこか」
少し離れた所に溺れかけている少年を発見する
かなりもがいてるけど意識があるのなら問題ない
意識なくなって沈まれたらもっとめんどくさかったからね
木に足をかけて水から出るように斜め上に向かってセシルの方へ飛ぶ
そのままセシルの元へ飛び込み、セシルを掴んで、
「おらっ!!!」
そのまま川岸に向かって投げる
「うわぁぁ!?」
セシルは山なりに跳んで地面に叩きつけられ、そのまま転がる
叩きつけられた後は体を抑えてうずくまっていた
まああの様子だと大きな怪我はしてなさそうだし大丈夫だろう
それを見て少し安心したところで自分も川岸に向かってまた泳ぎ出す
そこで、川下の方を見て気付く
「ちっ」
またさっきと同じくらいの大きさの滝か………
流石に二回目はまずいな
まだ戦闘し終わってから数分だし、さっきの滝でもかなりダメージを受けた
もう一回落ちたら体が動かせなくなるかもしれない
あそこまでに川岸つかないとヤバい
だが、頭で分かっていても体はそうもいかない
それでも無理矢理体を動かして川岸に手を伸ばす
「ぐっ!!」
だがその手が岸を掴むことはなく、川上から流れて来た大きな岩に阻まれてしまう
そして岸を掴めないまま滝の目前まで来て体を投げ出され、
「氷結!!!」
僕の下の水が凍った
「………間に合ったぁ〜」
そう言ってセシルは安堵のため息をつく
「早くこっち来て、この氷もそんなに長くもたないから 」
そう言うのと同時にセシルは地面にへたりこんだ
◇◆◇◆◇
「滝のしたに落ちたぞ!!!」
と、一人の山賊のような格好をした男が叫ぶ
「縄ばしごを持って来い!!!」
「いや、こっちだ!普通に降りた方が早い!!!」
「続け!絶対に逃がすな!!!」
そう言って、男たちは次々と滝の横の崖の方に向かう
「さあ、あなたも早く!!」
「………ああ」
そう言って男たちの中では珍しく、執事のような格好をした男も動く
が、すぐに立ち止まってぼんやりと上を眺める
「なにやってるんですか!!!早く!!」
「いや………」
執事風の男は諦めたように呟く
「ここまでか………」
「? 何言って………」
と、突然大きな光と轟音が五感を支配して、
「ぐわぁっ!!!」
数人の山賊の叫び声と強い突風が巻き起こる
「!? どうした!?」
そう叫びながら周りを見渡す
そこにはさっきまでの深い森の姿はどこにもなかった
背の高い大きな木々は自分の目の前だけ嘘のように無くなり
砂利でゴツゴツしていた地面は焦土のような地面になっている
そこにはさっきまで普通に動いていたであろう焼け焦げた人形の死体
「な………何だこれ………う゛」
と、言い終わる前に最後の山賊の生き残りの首も弾け飛ぶ
「………お見事です」
そう、執事の男は呟く
その腹からは光の槍が突き出ていた
「所詮ゴロツキとはいえ、1秒にも満たないで全てを殺害し、一番情報を持っている私をギリギリで喋れる状態で生かすその手腕、見習いたいものです」
「無駄話をしに来た訳ではない」
そう執事の後ろから光の槍を刺した存在、赤い髪で黒いローブを頭から深くかぶった女が言う
「あの子達は今どこにいる?なぜ、あの子達を狙った?」
「前者の質問は分かりません、滝の下に落ちたのは確認しましたから運が良ければ助かっているでしょうね。まあゴロツキよりは格段に強いもう一人の仲間を倒したのですから生きているのは間違いないも思いますよ。後者の質問は………」
そう言って後ろを向く
「分かっているでしょう?」
後ろの女は、少し不機嫌な様に顔をしかめる
「なぜ貴様が?例えあの子達が『夢人』であろうが、妾もアランも全力で………」
「一つ、忠告しておきますよカミラ様」
執事はカミラの目を見て悟ったように話す
「あの女の子は危険だ。今ここで殺さなければ絶対に後悔する」
「あの女の子………。アオイか?」
執事は答えない
だがその目は真剣な眼差しでカミラを見つめる
カミラはしばらくその目を見つめ、やがて決意したように言う
「私はあの子達を守る」
「………忠告はしましたからね」
その言葉を聞くと、カミラは槍を腹から抜き、掌からバチバチと光る縄のようなものを取り出し、執事の体に巻く
「しばらくしたら騎士団が来る。それまで大人しくしていろ。妾はあの子達を探しに行く」
そう言ってカミラは崖の方に走り出そうとする
「くく………くくく」
「……何がおかしい」
「騎士団なんて待つわけないでしょう」
そう言うと執事は馬鹿にしたようにカミラを見る
「さようなら、カミラ様」
そう言うと執事は体のど真ん中から爆発した
一瞬の静寂
それは後ろからは騎士団たちが馬で走ってきている音で消された
カミラはその執事だった残骸を見つめると、
「………なぜ?」
と、小さく呟いた
◇◆◇◆◇
崖の上の方でいきなり轟音と大きな黄色い光が起きる
「………何?今の」
「さあ?」
「敵の攻撃じゃないよね?まさか」
「それは無いでしょ」
そんな力持ってるならもっと速く僕等を捕まえれてるはずだ
「援軍とか?」
「かもね」
何にしてもうかつに近づくのは危険だ
敵だったら悲惨だからね
「とりあえず何処か見つからない場所に行こうか」
「見つからない場所がどこか分かったら苦労しないけどね」
そう文句を言いながらセシルは僕の後ろについて歩く
さっきまでのでかなり消耗しているので僕もセシルも足取りが重い
「少し休憩してから行く?」
「いや、いいよ。敵が来るかもしれないし……」
そう言ってセシルは僕を見て、固まる
「? どうした?」
「アオイ、その右目………」
「右目?」
そう言ってセシルはさっき作ってなにかに使えるかと思って取ってきておいた氷の一部を僕の方に向ける
そこに映った幼い少女の眼は光が入って鋭く尖っていた。良く見ると頬にはうっすらと銀色の鱗も浮かんでいる
「………ああ、力を使い過ぎた」
あの黒炎を吐いたせいでまともに人化をする魔力すら無くなったのだろう
かなりの魔力を使うからな、あれ
出来れば使いたくなかった
「まあ大丈夫。しばらく休めばすぐ戻る」
「ならいいけど………」
実際回復はかなり早いみたいで普段も一晩ちゃんと寝たら回復してるからね
少し不便だけど特に問題はない
「敵も来てないみたいだし、完璧に人化出来なくてもそんなに問題ないでしょ」
「アオイがいいならそれでいいけど………。人化できないって相当魔力減ってるんじゃない?」
「まあかなり減ってるけど戦う訳ではないし、歩いたりするのに問題はない」
「あの黒炎相当魔力使うんだね」
「うん。あの氷はどれくらい使うの?」
「氷結弾は大体1日に三十発位、水を凍らせたのはあれだけで弾十五発分位かな。今はもう戦えるほどは魔力残ってないよ」
「なるほど。何にせよ早く安全な所に行かないとね………ん?」
と、話しながら歩いていると遠くにある物を見つける
「どうしたの?………あ!!!」
セシルもそれを見つけたみたいで、驚きを隠せずに声を出す
そして、それをちゃんと確認するために二人で走り出す
数分走って
小さな崖の下のそれを見つめる
「………村だ……」
小さな村が、そこにはあった
♢♦♢♦♢
「人を探そう」
村を見つけて呆然としているセシルに向かってそう言う
セシルは少しびっくりしながらも無言で頷いて、崖の下に降りていった
村の目の前に立って、中を見つめる
関所のようなものはなく、この辺は作物を荒らす動物などはいないのか、防壁も貼られていなかった
中には少ないながらも何人か畑仕事をしている人が見える
しばらく眺めていると、そのうちの一人が気づき、こちらに近づいてきた
四十代くらいだろうか。布を貼り合わせただけの簡素な服に麦わら帽子をかぶっている
「あの、すいません。わるいひとにおわれているんです。たすけてください」
近づいてきながらも、警戒を解かない女性に向かってセシルが言う
女性は少し驚いた後、訝しげな顔をしながら
「少しそこで待ってな。すぐにうちの村長を呼んでくる。いいかい?絶対に動くんじゃないよ!!!」
と言って奥に走っていった
「これで何とかなるかな?アジトの場所の当たりくらいつけてるだろうし、待ってればすぐに騎士団が来るでしょ」
「……そう簡単に行ったらいいんだけどね」
「え?」
僕がそういうとセシルは驚いたようにこちらを向く
「どういうこと?」
「見てればわかる」
そう話していると、丁度奥の方から何人かの人が走ってきているのが見えた
一人はさっきの女性、一人は五十代後半くらいの男性で、その他は簡素な鎧をかぶって手に槍を持っている。
この村の駐在の警備だろうか
「ほら、警備まで来てくれてるし多分僕らの誘拐のこともこの村まで伝わってるでしょ。もう大丈夫じゃない?」
そう言ってセシルは騎士たちの方を向く
騎士たちは僕らの方に走ってきてある程度まで近づくと、
「………え?」
…………持っていた槍を僕に向けて投げ出した