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灰色の黒龍の碧  作者: 生木
2歳(19歳)編
18/21

閑話 少女と不思議な白い子 終

あれからどれだけたっただろうか

意識が朦朧とする

もうどこがどれだけ攻撃されたかわからない


また、腹を殴られる

そしてそれと同時に聞こえる、二人の男の下卑た笑い


ああ、もうダメだ

もう何度目かも分からない、気絶

そしてそれと同時にまた、頭から水をかけられる


「ふひ、ふひひひひ。気絶なんかさせないよォ、ひゃははははは」


そう言ってまた殴られる

今度は、鼻先からなにか鉄のようなもので

ボキボキ、と嫌な音が聞こえる


「ひゃははははは、痛いか?痛いか?恨むんなら槇村を恨むんだな!!!あのガキ、下手に出てたらいい気になりやがって!!!糞っ!!!糞っ!!!糞っ!!!」


そう叫び、また狂ったように私を殴る

殴る

殴る


「あはっ、あはははは!!!!うっ、おぇ」


狂ったように殴ったかと思えば、横を向いて吐しゃ物を撒き散らす

それが足にかかってとても不快だが、それももうなんとも思わない

それほどまで、疲れ果てていた


「ふひ、あは、あはははは」


そう笑いながら、男達は部屋を出ていった






あの時、アオイに会いに公園に行く途中

後ろから強い衝撃を受けたと思ったら、気がついたらこの小屋に居た

何かで殴られて拉致されたのだろう

目が覚めた時にはこの使われていない倉庫のそうな場所で、ボロ椅子に縛り付けられ、二人の男に見つめられていた


「こ、コイツで間違いないのか?」


「ああ、間違いねぇ。ひひ、ひひひ。こいつを使えば、あのガキに目に物見せてやれる」


そう、男たちは言った


人質に使われたのだ、私は

アオイを呼び出すための



それからは、ずっと同じ事の繰り返し

自分達がどれだけアオイを、槇村家を恨んでいるかを延々と喋りながら僕に暴力を振るい、しばらくして気持ち悪がって吐いて回ったとおもえば部屋を出ていき気持ち悪いくらい高揚して帰ってくる


「あは、あのガキに俺らを見限ったことを後悔させてやるんだ。散々、散々こき使いやがった上に少しの失敗で捨てやがって!!!挙句の果てに交渉してた仲間を…………畜生!!!畜生!!!!!!」


「お、落ち着け。殺しちゃいけない。あのガキが来たら、目の前で殺してやるんだ。ひゃ、ひゃははははは」


「そ、そうだな。あは、あははははは」



狂ってる

槇村を恨むあまり、完全に理性を失ったのだろう

やっていることが、余りにも馬鹿すぎる


アオイにしか、しかもほとんどそっちの世界について教えられなかった私ですら分かる

槇村家とこいつらのような者たちとはビジネスの関係だ

失敗を犯しても置いてもらえるほど親密な関係じゃないだろう

その上、それをアオイに言ってどうするというのか

あの子は正式な槇村家の子として発表されてない

そんな子に直談判したところで何が変わるわけでもない

恐らくこいつらの仲間であろうあの黒服が殺されたことに怒って、アオイに復讐しようとするのはまだ分かる

だが、その手段さえもが馬鹿だ

私がここで目覚めた時、まだ日が暮れていなかった

アオイと会うのはいつも日が傾いてきたころなので、ここがあそこからかなり近場であることがわかる

連れてこられるときに殴られて流血した事もあって、血痕も残っているだろう

何かしら事件があった事は明確だ。すぐに警察も動く

たとえ呼び出されていたとしてもアオイが無理してここに来る必要はないのだ

その前にこいつらが捕まるから

アオイは頭がいい

アオイがここに来ても何も事態は好転しないことを知っているだろう

どちらにしろ私は殺されるのだから、この場にいない方がいい、助けに来ても無駄だ、ということを知っているだろう




………ホント、馬鹿だな

そう思い、ニヤリと笑う


「なんだよ?」


そう男の一人が私の顔をのぞき込んでくる


「何笑ってんだよ!!!」


「うっ」


と、男が叫ぶのと同時にもう一人の男が倒れる音がする


「? どうした?」


と、振り向いたとき、その男の心臓部にナイフが突きつけられる


「!?てめぇどうやっ、うぐっ!!」


ナイフを突きつけていた子は、その男が叫び終わる前にそのナイフを男の体に刺し、突き飛ばす

男はされるがままに壁に寄り添って倒れた


「ふふ、あはははははは!!!!少し遅かったな!!!おまえが何をしようがもう」


言い終わる前にもう一度ナイフを突き刺す

男はその後も何か言いたそうに口をパクパクさせるが、やがて動かなくなった


それを確認すると、目の前の子はこちらを向く


「馬鹿だね。こんなとこに来ても、何もならないのに」


「喋らないで。いま車を手配した。救急車なんかよりよっぽど設備のいいのがすぐ来るから、それまで……」


「いいよ、もう」


そう言って、目の前の子、アオイを止める


「下手なことしないでも、自分がもう助からないことくらい分かってる」


そう言うと、アオイはなにか怒ったような悲しんだような困惑した表情を浮かべるが、しばらくして諦めたようにいつもの無表情に戻る


「ごめんね」


「なんで謝るのさ」


「僕と出逢わなけば、こんなこと………」


「そんなことない」


そう、力強く言う


「アオイに会えて、良かった」


「………そう」


ありがと、とアオイは小さく呟く


「君は僕に出会ったことを後悔してないの?」


と、聞かれる


「していないよ」


と、答える


「変わった人だね、君は」


「君ほどじゃないよ」


「そうだね」


そう、アオイは言う


「短い間だったけど、楽しかったよ」


「うん」


「じゃあ、さよなら」


「うん、バイバイ」


そう目の前のに言って、私は意識を手放した

もう二度と戻ることのない

二度と戻らないと思っていた、意識を




◇◆◇◆◇




目が覚めたら明るい場所にいた

と、急に体が持ち上げられる


なんだ?

何が起きている?

私は死んだんじゃないのか?


周りを確認しようとするが何も見えない

喋ろうとしても、うまく話せず、しゃがれた鳴き声だけが出る


何か歓声のようなものがずっと聞こえ、何を言っているのかもわからない



しばらくして、歓声が止む

すると、男女の話し声が聞こえてきた


「あなた、産まれましたわ」


「ああ。可愛い、元気な子だ」


「ふふ、この子も素敵に育ってくれるといいですね。」


「当たり前だ。で、この子の名は?君が決めていたんだろ?」


「ええ」


女性はそう言うと、もったいぶるように少しの間をあけてから、はっきりとした声で言う


「この子はセシル。セシル・ガルフィールドよ」

年度始めが忙しくてしばらく次話は投稿できなさそうです

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