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灰色の黒龍の碧  作者: 生木
2歳(19歳)編
17/21

黒龍の力

目の前のメイドが臨戦態勢になる前に全力で走り、距離を詰める


一瞬人化を解いて地面を全力で蹴り、一気に近付き跳んで人化する

狙うは首筋

右手にナイフを持ち、裏拳の要領でナイフを思い切り振り抜く


が、首にナイフが当たる瞬間、見えない壁にぶつかり止めらる


「ちっ」


防壁魔法………

しかも全身にかけてから僕らの前に現れたようだ


反撃を加えられる前に腹に蹴りを加えつつ元の位置まで逃げる

だが、その蹴りも防壁魔法に阻まれてしまう


氷結弾エンフィーレン・クーゲル!!!」


僕が体勢を立て直してる間にセシルが掌から成人の拳程の氷を飛ばして追撃をする


魔防壁ジャ・パーハラ


が、メイドも掌から魔防壁を出してそれを防ぐ


「夢人と言っても体は子供、貴方達の攻撃は通用しません」


そう言ってこちらに手を向け、


火炎弾ラウ・クーゲル


火炎を撃ってくる


人化を解き、横に避ける

さっきみたいに弾幕が来るわけではないので簡単に避けられると思ったが、スピードが段違いに早く、

危うく直撃しそうになりながらスレスレでよける


氷結弾エンフィーレン・クーゲル!!!」

火炎弾ラウ・クーゲル


セシルが死角から氷結弾を撃つが、それも阻止され、蒸発した氷の水蒸気が眼前を覆う



………ちょっとこれはキツイな

僕は魔法には全く詳しくないので正確なところは全然わからないが恐らくあの防壁魔法を突破するのは生半可な力じゃ無理だろう

元からかかってる防壁魔法は物理攻撃に対してしか機能しないみたいだが、魔防壁も一時的には張れるようで、セシルの氷結弾も効いてない

このままゴリ押しで倒すのはちょっと厳しいだろう


そう思い、水蒸気の中に突っ込む

中にいる二人は周りがほとんど見えていないようだが、僕は水蒸気の外から二人の場所を確認したので問題はない


メイドの死角から近付き、蹴りを加える



………うん、やっぱり無駄だ

防壁に邪魔される


が、効かなくても攻撃されたこと自体は分かるのか、少し怯んでいる

その隙に反動で跳び、セシルを掴んで森の奥に走る


「セシル、あの邪魔な防壁何とかできない?」

「難しいね。物理攻撃にしか効かないみたいだから僕の氷結弾は通りそうだけど、それも阻止されちゃうから」

「無効化する方法は?」

「魔法解除を使うか、防壁に想定されている以上の力で押し切るかのどちらかだね。前者は、僕は使えないからアオイがやるしかないけど」

「出来るわけないでしょ」

「じゃあ後者しかない。それか、あいつが気づかない死角から魔法を当てるとか。まあ僕の魔法ぐらいだと何発も当てないと決定的な攻撃にはならないけど」

「なるほど」


と、なるとセシルに頑張ってもらうしかないか

倒すのに何発当てたらいいのかわからないけど


「よし、じゃあすぐ行くよ。まず僕が行くからどこか死角から攻撃して」


もちろんそれで簡単に倒せるとは思ってないけどやらない事にはどうにもならない

とりあえず何とか一発は当ててそれから考えよう


「いまあいつが来てないならなんとか逃げれない?」

「無理だろうね。逃げてきた方向もバレてるし、すぐ追いつかれるだろうから他の奴らに接触される前に倒した方がいいと思う」


幸い防壁は面倒だがあいつ自体はそこまで強くないようだ

防壁がかかっている状態に慣れているせいなのか、

攻撃にたいしての反応が鈍い

あの防壁がなければ倒すのは簡単だっただろう


「………ほら、もう来たよ」


少し遠くからこちらに近づく足音がする

数は一つだけなのでほかの奴等に見つかったということはないだろう

まあそれも時間の問題だろうが


「じゃ、僕が先にいってくるよ。隙見て攻撃して」

「……いいの?」

「なにが?」

「このまま君を置いて逃げるかもしれないよ?僕」

「逃げるの?」

「いや逃げないけど」

「ならいいじゃん。それに多分逃げれないよ、もうそろそろほかの奴等も近づいてきてると思うし」

「………え?まじ?だったらあいつ倒しても意味なくない?」

「まあそうだね。でも、あいつとほかの奴等に接触されてこっちの場所がバレるよりはあいつを倒しといた方が逃げやすいと思うよ。居場所がバレてる状態で集団に追いかけられるのは結構辛いからね」

「………もしかして経験あり?」

「さあ?………と、もうしゃべってる暇はなさそうだね」


足音はもうかなり近づいてきてる

今更逃げようとしてももう遅いだろう


僕が足音にする方に走り出すのと同時にセシルも森に隠れながら走り出す

出来るだけ音を立て、こちらに注意を向かせながら走る

敵はかなり近くまで接近してるので、少しでも注意をこちらに向かせないとセシルの場所がバレるかもしれないからね


と、視界の先にあのメイドが映る

音を立てて近づいた甲斐あって完全に注意はこちらに向いているようだ


警戒しながらメイドに近づく

人化を解いた状態で戦った方が強いが、龍になると目線が下がったりして戦いづらくなるので人化した状態の方がいいだろう

龍になっても恐らく防壁を破壊することはできないし


メイドの方もこちらをかなり警戒しているようで、隙を作らないようにこちらに近づいてくる

しばらくそうして、人化した状態だと飛びかかっても届かないだろうぎりぎりの距離で止まる


「セシル様はどこですか?」


メイドが警戒しながら聞いてくる

喋りながらもいつ攻撃されてもいいように臨戦態勢は解かないようにしている

こっちが幼児だからともっと警戒解いてくれたらもっと楽だったんだろうけどな………


「さあ?逃げたんじゃない?」

「………まあいいでしょう。たとえ本当に逃げていたとしても、あなた一人殺せば十分ですから」

「僕一人、ね。なんで僕らを殺そうとするの?こっちの世界では何もやってないと思うけど」

「あなたが『夢人』だから、ですね。何をやったかやってないかじゃないです」

「『夢人』?」

「貴方達みたいな転生者のことです」

「歴代の転生者は危険な思想を持っていたから殺すってこと?」

「………これ以上話すことはありません。どうせあなたはここで死ぬのですから」


そう言ってこちらに手を向ける

動いたら魔法を撃つ、という牽制だろう


うーん、これ以上情報引き出すのは難しそうだな

出来ればこいつらの目的も知りたかったんだけど

それを知れれば僕が狙われることも無くなるだろうしね

ここから逃げだせてもこれからずっと狙われ続けるとかは嫌だし


まあ出来ないもんは仕方ない

とりあえずこいつを倒そうか


そう思い両足に力を込める

いつでも攻撃を出来るように

いつでも攻撃が来ていいように


警戒を解かないように半歩だけ足を前に動かす

それが開戦の合図となった


火炎弾ラウ・クーゲル!!!」


メイドがそう叫び、掌から火炎が飛んでくる

それと同時に右側へ跳ぶ

手のひらの向いてる場所は確認できているので、どんなにスピードが速くてもよけるのは簡単だ


「ちっ!!!連弾ユガラ!!!」


そうメイドが叫び、掌からさっきよりも小さな炎の弾が大量に飛んでくる

スピードはさっきよりも速い

全部よけるのは困難だろう





()()()()()()()()、ね





僕は()()人化させて火の玉をよけ、メイドに向かって跳ぶ


「!?ラウ………」

「遅いよ」


完全に勝った気になって気を緩めていたメイドは反応が一瞬遅れる

その一瞬で十分だ


僕は右手に持ったナイフを相手の眼球に突きつける

防壁魔法に阻まれるが特に問題はない

防壁魔法は体に当たる寸前に発動するようになっている

よって、たとえ最終的に阻まれたとしても、自分の眼球にナイフが突きつけられたら反射的に目を閉じてしまう

火炎弾を撃とうとしていたメイドの体の動きが一瞬止まる


その一瞬の硬直の状態のうちにメイドを蹴ってその場から離れる

防壁魔法があるので、蹴られてもメイドがその場から微動だってすることはない

今回は、それが仇になる


「………ナイスタイミング」


僕がメイドを蹴ってすぐ、氷の塊がその顔に直撃する


「ぐっ!!」

「よし!!!」

「まだ!!!油断するな!!!」


そうセシルに向かって叫ぶ

一発程度じゃ倒せないことはわかってる

ここでセシルがやられたら、倒せるものも倒せなくなってしまう


連弾ユガラ!!!」


メイドがそう叫び、氷が飛んできた方向に向かって炎の弾を連発する

が、セシルはもうそこからは居なくなっていた


「糞っ!!!」

「メイドの言葉遣いじゃないね」


氷が当たった右側の額からは流血していて髪は凍っていて、流血のため目が開けられないのか右目を閉じていた

攻撃を受けて焦ってきているのか、さっきまでの余裕の振る舞いではなくなっている


と、セシルに攻撃が当たらないと悟ったのか、僕に向かって駆け出してくる

さっきまではその場から動かずに戦っていたのに、急に動き出したのはセシルの攻撃に当たらないようにするためだろう


だが、焦っている状態で何も考えずに突っ込んでくるだけなので、簡単に対策が打てる



メイドが僕の目の前まで迫ってくるのを見て、地面を思い切り蹴りあげる


「!?」


蹴りあげた砂はメイドの開いてる左目に直撃する

両足は人化を解いたままなので蹴りあげた砂は相当なものだ


防壁魔法というものは敵からの物理攻撃を自分に触れる前に無効化する魔法だ

一定以上のダメージを受けないものは無効化されないようにできている

よって砂などの自然物は物理攻撃とは認識されないのだ



「うぐっ!!」


なんとか目を開けようともがいているところにまた氷結弾が直撃し、土の上を転がる

が、それでもまだ倒れないで、立ち上がる


「はぁ、はぁっ。ぐ、殺す!!!」


流れている血はもう相当なものになっている

もうほうっておいても手当しなければすぐに動けなくなるだろう

だが、それでもまだ諦めずに僕に攻撃をしてくる


連弾ユガラ!!!」


メイドはまた、掌から炎の弾を飛ばしてくる

が、片眼が見えていない、しかも意識も朦朧としているであろう状態で今更そんな攻撃が僕に当たるわけもない


案の定連発した炎の弾は木に当たり、燃やし始める


「糞っ!!!糞っ!!!糞っ!!!」


そう叫びながら、両手をこちらに向ける

そして何か詠唱のようなものを唱え始めたかと思うと、その両手に今までよりも大きな、サッカーボール程の大きさの炎が浮かぶ


「死ねぇ!!!爆炎弾ビスフォ・クーゲル!!!」


そう叫び、大きな炎の弾を打ち出してくる


さっきよりも速く、大きいがギリギリよけられない程じゃない

全力で地面を蹴り、横に向かって跳ぶ

スレスレで炎の弾をよけ、炎の弾は地面にぶつかる


と、ぶつかった弾が大きな爆発を起こす


「!?くっ!!」


とっさに人化を解き、防御する

が、間に合わなかった

爆発によって飛ばされ、地面を転がる


痛みと熱さを感じていると、体が急に地面から離れる


「捕まえたぞ!!!」


メイドが僕の目の前でそう叫ぶ


「ようやく、殺せる!!!」


そう言って下卑た笑みを浮かべ、僕に向かって手を向ける


氷結弾エンフィーレン・クーゲル!!」

魔防壁ジャ・パーハラ!!!」


セシルが氷結弾を撃つが、阻止される


「焦らないでくださいよ、貴方もすぐに殺してあげますから」


ヒヒヒ、狂ったように笑いながらそう言って再度手をこちらに向ける




………仕方ない

出来れば使いたくなかったんだけど、そうも言ってられなさそうだ


そう思い、僕は口を大きく開け、お腹に魔力を込める


火炎弾ラウ・クーゲル !!!」


そうメイドが叫ぶのと同時に、魔力を一気に口から吐き出す


「!?ぐわっ!!!」


そう言って、メイドは僕を突き飛ばす

そのメイドの体は、黒い炎に包まれていた



………そう、僕が吐いた炎だ

出来ればこの技は使いたくなかった

かなりの魔力を使うし、何より目立つ

こうなってしまえば、僕の居場所を教えるも同然だ

まあさっきの爆発でどうせバレただろうしそれはもう言っても仕方ないだろう


と、黒い炎に包まれていたメイドが地面に倒れ込み、しばらくして動かなくなった


「………死んだ?」

「うん」


セシルが木の陰から出てきて言う

その体は黒い煤がこびりついていた

あれだけ炎を連発されている中で逃げ回っていたのだ、そうもなるだろう


「さ、行くよ。あれだけ派手にやったからね、直ぐに見つかっちゃう」

「うん。あ、ちょっとこっち来て、いいものを見つけたんだ」


そう言ってセシルが走り出す

人かを解きながらそれについていって、少し行ったところにそれはあった


「川?」

「うん。この下流に行けば、この森を抜けられるよ。さあ、行こう」


そう言って、セシルが手を差し出してくる

と、そこに光が当てられる


「!!いたぞ!!!」


と、光を当ててきた張本人、山賊のような格好をした男の一人が叫ぶ



くそ、思ってたより追手が速い

多分あの爆発を見てあそこに行く途中だったのだろう

運の悪い


「セシル!!!」


そう言ってセシルの手を引きながら人化を解き、背中に乗せる

疲れてるところにこんなことをやりたくはないが、二人で別々に走るより何倍もましだ


「待てっ!!!」


そう言って火炎弾をうってくる

振り返ってる余裕もよける余裕もないので、まっすぐ走りながら当たらないことを祈るのみだ



しばらく走り、川のに着く


「うわ………」


セシルがそう呟く

が、それは大量の水が流れ落ちる音にかき消される


そこには、20mほどの高さの滝があった


「どうする?」


セシルがそう聞いてくる


正直言って、この滝の下に飛び込むのは自殺行為だ

どれほどの深さがあるかも分からないし、この川の流れは結構急だ

下で生きてたとして、上手く岸に上がれる保証はない

だからといって、回り道をしても下に降りれる場所を見つけるのは困難だろう

ここは崖と急な坂ばかりで山を下りる道が極端に少ない

そのため、奴らもここを隠れ家に選んだんだろう

僕らが逃げられないように


しばらく逃げる道を考えて、僕はセシルに質問することにした


「後ろに戻って殺されに行くか、生きる可能性にかけてここを飛び降りるか、はたまたここで楽に自殺するか。どれがいい?」

「………まあ答えは一つしかないね」

「だろうね」


そう言って、二人ともが苦笑いする


「じゃあ、生きてたらまた会おう」

「うん」


その言葉を合図に、僕らはその滝を飛び降りた






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