表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1話 異世界に来てしまったようです

この作品は、僕のもう一つの作品 ダブルコンタクト の書き直しをした物です。

1話 異世界に来てしまったようです


ようこそ、<エルディア>へ」


周囲が光ったと思ったら、僕の目の前突然、神官風の男が現れた。


「……えーと、あなたはどちら様でしょうか?」


「申し遅れました。私はこの国の神官を務めさせております、エドと申します」


エドと言った男は軽く頭を下げてくれた。どうやら危険な人ではなさそうだ。


「あなたはこの国を救う、勇者として選ばれました」


………前言撤回、この人は危ない人のようだ。


僕は少し後ろに下がりながら、エドに冷たい視線を向けた。


「突然の事で、混乱しているかも知れませんが、あなたは勇者召喚で異世界から呼ばれた、勇者なのです」


「エ!?」


僕は目を見開き驚いていた。


どういう事?もしかしてエドが現れたんじゃなく、僕が違う所に来たって事!


そう思いながら周囲を見回すと、他にも何人かエドみたいな服装の人がおり、部屋の壁は石のブロックが積み重ねられて作られいた。


まるで外国の城のような作りだな……という事はエドが言っているのは、嘘じゃない可能性が高いと言う事か…。


「…どうやらご理解いただけたようですね」


どうやらエドは僕の表情を見て、現状を理解したと判断したようだ。


正直、油断してはいけない人物のようだ。


「それで僕が勇者である根拠でもあるの?」


「それは今から確認をして貰います。まず、勇者召喚で呼ばれ者は全員、ステータスと言う自分の情報を確認出来るようになっています。念じるようにしてもらえれば、カードが出てくるはずです」


ステータス……まるでゲームのようだな。確かに目視出来るのなら助かる事は事実だが。


そう思いながら念じてみる。そうしたら目の前に少し光っているカードが現れ、そこにステータスが表示されていた。


天兎 玲人


レベル  1


HP   12 / 12

MP   15 / 15


スキル 同期  ・ 合成術



「見えたようですね。それではスキルの欄に〈勇者の力〉、というものがありませんか?」


「……ありません。同期と合成術っていうのが、あるだけです」


その言葉を聞いた瞬間、ここにいるエドを含めた全員がざわめいた。


「…どうしました?」


明らかに周囲の空気が変わったのが分かった。…そうまるで、くじ引きでハズレを何度も引いた時のような感じなのだ。


「いえ、なんでありません。それでは此方に付いて来てください」


顔には出していないが、エドの対応に微妙な変化があり、不振に思った。


「何処へ行くんですか?」


「今後の話をするのに、相応しい場所に行きます」


そう言ってエドはさっさと歩いて行った。違和感はあるが、とりあえずは付いて行く事にした。



暫く階段を下りたら1つの部屋に入って行った。


「この部屋は?」


ここは椅子1つすらない不自然な部屋だったのだ。


「…とりあえずこれを飲んで落ち着いてください。突然異世界と聞いて、心の整理をする時間が必要だと思いますので」


確かに一息つきたい所だったし、喉も乾いていたからちょうど良かった。


そうして僕は出された飲み物を飲んだ。


「どうですか?痺れるような味でしょう?」


「確かに刺激はありましたけ……ど…?…あ、れ?」


上手く言葉が喋れない?


それだけではなく、僕は立っている事すら出来なくなり、床に崩れるように倒れてしまった。


「どうやら効果が出たようだね」


いったいどう言う事なんだ!そう言いたいが口が動かない。


「ただの痺れ薬だから安心してくれたまえ。死んでは次の実験に進めないからね」


?。実験?


「勇者が召喚出来ればそれでよし。もしハズレが来れば強化兵の実験台。そういう事になっているのだよ」


強化兵?いったい僕に何をするつもりだ!


「さて、これは捕まえた魔族から抜き取った魔族の核だよ。魔族は人の心臓とは違い、核と呼ばれる物で生きている。それを人に移植する事で魔族の力を得るという実験だよ。……さあ、生まれ変われたら有効に使ってやろう。幸運を祈っているよ」


その手に持っていた卵型の宝石のような物を僕の胸に押し当てられた。その瞬間、宝石自体が体内に潜りこむように入っていき、僕の全身はまるで電気を流されているような痙攣を繰り返し、体中にひびが入っていき右腕が取れるように落ちてしまった。


「ふむ、また失敗か。…残念だがお別れだ」


玲人に後ろを向き、そう言ってエドは壁の石を押した。


「!?」


その瞬間玲人の足元が開け、逆らう事も出来ずに下に落ちていった。


ガシャガシャガシャ!!


結構な高さから落ちたが、ゴミのような物のおかげで奇跡的に生き残る事が出来た。


「痛っ!?」


「おお!生きているか、勇者でもないのにしぶとい奴だな」


上から聞こえるエドの声は、先程までの丁寧な口調ではなくなっていた。


「な、何故こんな事をするんだ!」


玲人は痺れが消え、喋れるようになった事には気付かずに、姿が見えないエドに向かって叫んだ。


「何故だって?そんなのは簡単な理由だよ。

君を呼んだこの勇者召喚は、魔力を大量に使う割に正確性がなく、ハズレばっかり引くんだよ。そしてそんなハズレ達は、決まって元の世界に返せと喚き散らす。最近は君みたいに実験に使うがね。

…そんな奴等を黙らせるのは苦労したからね………手っ取り早くゴミ箱に捨てる事にしたのさ」


姿は見えないが、嫌らしく笑っているエドの顔が思い浮かぶような話だった。


「そこは昔からあるゴミ捨て場だ。もちろん出口などなく、生き残った者などもいない。

我々の魔力を無駄遣いさせた事と、実験に耐えれなかった事を反省しながら死んで逝くがいい。だが安心してくれ、明日の朝には綺麗に焼いてやるからな、ハハハ」


そう言ってエドの声がどんどん小さくなっていった。


「……夢じゃないよな」


玲人は定番の頬つねりをしたがやっぱり痛かったが、不思議となくなった右腕の痛みはなかったし、血も出ていなかった。


しかしこの状況、…生き残って良かったとは言えないな。


ひとまず周囲を確認すると、そこには数多くの骨が転がっている。目に見える範囲だけでも数十人分はあった。


人はどこの世界でも最低だな。


散策の結果、食料などはもちろんなかった。


「この中から使えそうな物を探すのは不可能だな」


そう言って玲人は、何か持っていないかポケットを漁ったが何もなく、仕方がないからステータスでも確認してみた。


しかし、合成術は何となく分かるが、この同期ってのは何なんだ?


そう思ってカードの同期の文字を突っつくと、新たな文字が出て来た。


同期 『使用MP  5 ・・・ 他人の魔力などと波長を合わせる取り込む事が出来、自分の力として、または他人の力として使う事が出来る。』


これはスキルの説明か?1人しかいない現状では全く役に立たないじゃないか。


……一応、合成術も見て見るか。


合成術 『使用MP  6 ・・・ 銅までの金属を合成する事が出来る。更に上位の金属を合成するには、錬成陣を使用しないと成功しない』


…銅までって、…覚えた瞬間から合成出来る上限が、決まっているなんて……やる気を無くさせるスキルだな。


「全く、エドもどうせ呼ぶなら、もっとマシなスキルを用意して欲しいもんだよ。

………もういい!どうせ助からないんだしスキルの無駄遣いだ!〈同期〉!」


しかし何も起こらなかった。




………という事にはならなかった。


突然、周囲から黒い霧のような物が現れて、周りに集まり出し、一気に玲人の中に入り込んで来た。


「ちょっとタンマ!?何で急にこんな事に…」


玲人の言葉を無視するように、黒い霧は容赦なく入って来て、胸から始まり全身にまた痛みが広がった。


「痛たたたたた!!!」


今度こそ死ぬかもな…。


胸は焼けるような痛みで、全身は骨から筋肉にかけて、ゴキゴキと音を出しながら、砕けたり切れたりする痛みが続いている。


その痛みが30分ほど続いた後、どうにか収まって来た。しかし今までの痛みで暫くは動けそうにはなかった。


「いったい何だったんだ?」


落ち着いて考えても、答えは出てきそうにはなかった。


「…面白い事が起こったな」


「何だ?話し声がした気がしたが?」


気のせいか?


そう思っていると、また声が聞こえて来た。


「あいつは1人で何を言っているんだ?さっきので頭がおかしくなったのかもな」


今度はハッキリ聞こえた。少し軽そうな男の声だが、間違いなく誰かいるようだ。


だけど気が付いた事がバレて襲われたら、動けない状態の今は不味いな。もう少しこのままにしておくか。


「しかし、ここ数百年で初めて起こった現象だったな。まさか人の怨念で、あそこまでの瘴気が生まれるなんてな、…全く人の業は深い物だ」


数百年?瘴気?いったい何の事を話してるんだ?



暫く声の主は、1人で喋り続けていたが、喋る事がなくなったのか静かになった。


そしてようやく玲人は動けるようになった。


早速僕は声がした方へ歩いて行った。


なんだか、さっきより視線が低くなったような?それに歩幅が小さくなった気がするな?……さっきの痛みの性かな?


そう思いながらも声のした場所に着いた。しかしその場所には人がいる気配はない。


おかしいな?この辺りだと思ったんだけど。


「お!?やっと動けるようになったみたいだな」


やはりこの場所から声がする。でもこれって下から?


今立っている足元は、ゴミの山しかないのだ。しかし、下から声がする以上掘って行くしかないと覚悟を決めた。


「まだ諦めないとは、なかなか根性があるじゃねーか」


そして暫く掘ると、そこには漆黒の大剣が一本埋まっていた。


「おいおい、遂に俺を見つけやがった!やるな~、この広いスペースで埋まっている俺を見つけるとは」


玲人は驚いていた。…声の元はなんとその剣だったのだから。


「な、な、何で剣から声が聞こえるの!?まさかトランシーバーや携帯でも内蔵してるの?」


慌ててる玲人の姿を見て、


「は!?まさか俺の声が聞こえていたのか?」


互いに互いを観察するように、2人?の間に沈黙が続いた。


「……えーと、…さっきから喋っていたのは、君なのかな?」


先に動いたのは玲人だった。いくら周囲を見ても人の気配はなく、信じられないがこの剣が喋っていたとしか思えない現状だったのだ。


「さっきってのが、何時からを指しているかは分からないが、確かに俺は話せるな」


「何か仕掛けでもあるんですか?」


「…どうやら本当に俺の声が聞こえるようだな。俺は〈オメガ〉、何も仕掛けはない普通の喋る剣だ」


…剣が喋っている時点で、異常な事だけどね。


「僕は天兎玲人、よく分からないけど異世界から呼ばれたらしいです」


そういえば僕ってこの世界の事は、何も分からないんだよな…。


「それでオメガさんは、どうしてここにいるんですか?」


「俺の事はオメガでいい。ここにいる理由は簡単だ。俺の声が聞こえた持ち主が、気味悪くなってここに捨てられたんだ」


「じゃあ僕は玲人で。それで…この世界でのルールみたいな事を、何か知っていますか?」


玲人はオメガの前に座り込んで、話を聞こうとしていた。


「残念だが俺は速攻で、ここに捨てられたから殆ど何も知らないな。だが、玲人みたいにここに捨てられた人の、話はいろいろ聞こえて来たから、それで良ければ話してやる」


「それで構いません。お願いします!」


「しかし、お前さんを玲人とは呼び難いな…」


何がそんなに言い難いかは分からないが、オメガはいろいろ教えてくれた。


まず、異世界から呼ばれた者は、レベルという神の恩恵で身体能力が高まる上昇値が多い。

スキルは神から授かる物と、条件を満たして得る物がある。

ステータスを見る時のカードには、アイテムや武具を収納出来るが、持ち主が死亡した時には全て解放されてしまう。

魔族は神の恩恵とは別に、瘴気を吸収して上がるレベルを持っている。

MPは精神の力で、回復は寝るか、専用のアイテムなどを使わないといけない。

そして、ここから逃げれた者はいなかった…。



いろいろ分かったが、ここから逃げる事は出来そうにないな。…そりゃそうか、逃げれる手段を知っていれば、既に誰かが逃げているよな。


「しかし、本当に手詰まりのようだな……」


そう言った時、玲人を中心にして足元に魔法陣のような物が浮かび始めた。


「な!?いったい何が起こっているんだ?」


急に起こり始めた現象に、パニックになりながら起き上がる時、とっさに目の前のオメガを掴んで構えた。


「!?馬鹿!、俺を持つな!」


オメガが叫んでいるが、魔法陣の光がどんどん強くなっていき、玲人にはそれどころではなくなっていた。


そして周囲が光しか見えない状態にまでなり、次の瞬間、ゴミ捨て場から玲人達の姿は消えてしまっていた。





「ここは?」


光が収まると周囲の景色はガラリと変わっていた。


「クソ!またハズレか!俺にはガキか、ゴミしか当たらないじゃないか!」


スキンヘッドの男が魔法使いっぽい男に怒鳴っていた。


「こればっかりは運ですから、仕方がありませんよ」


魔法使いっぽい男も、慣れているようで軽く流している。


ここはどこなんだ?それにいつの間にかに、オメガも消えている。


「まったく…また研究所にでも売って、召喚にかかった金を少しでも回収するか」


「でも一応、可愛らしい女の子じゃないですか。研究所に売らないで飼うのもありじゃないですか?」


この2人は何を言っているんだ?ここには僕以外いないよな。


「さっきから何を言っているです?それに僕は男です」


目の前の男達は顔を見合わせていた。


「それにここは何処なんですか?」


連続で質問していたら、怒鳴っていたスキンヘッドの男が、怒った顔で玲人に近づいて来た。


…で、でかい!僕が身長170センチぐらいなのに、頭2つ分は高いぞ。


「お前のどこが男だ!お前のせいでどれだけ損していると思っているんだ!」


スキンヘッドの男は、玲人の服を勢いよく破った。


その破られた箇所を見た玲輝は、信じられない物が目に入った。



玲人の胸は少しだが膨らみがあったのだ。そしてあるべきはずの物が無くなっていた。


どういう事なんだ?何で?何で女に?????


玲人は自分の体の変化に混乱していた。


「…まったく、こんな頭がおかしい奴は、手元なんて置いときたくはないだろ」


「まー頭がおかしいなら、仕方がないか」


2人は残念そうに話していた。


「待ってください!いったい何をしたんですか?」


スキンヘッドの男は、うんざりしたような顔で玲人の首筋に一撃を入れた。


その瞬間、玲人の意識は真っ暗になってしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ