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第2話 その瞼をおろす手は偽善?

 能力者。

 念能力や発火能力、いわゆる超能力と呼ばれる部類から、瞬間移動、飛行能力などの魔法の域に達したものまで様々な能力を発動させた人間のことを指す。

 彼らは80年前から急に現れ始め、血筋、家柄、環境、年齢関係なく能力に覚醒した。だが、覚醒して体に不調をきたす訳ではなく、また能力も条件を満たさないと発動できないため能力者になったことに気づかぬまま一生を終える者もいる。

 唯一能力者を見分ける方法は、覚醒すると体のどこかに表れる逆十字の痣だけである。

 最後にこの事実は一般には公開されない。


 アルドラ皇国機密文書より抜粋―――




「その痣、能力者かって聞いてんだよ」


 切り裂かれた袖から覗く逆十字の痣。


「……だったらどうする?撤退でもするか?」


 なにかしらの能力に覚醒している能力者は、例え条件付きといっても十分脅威である。

 能力がわからないとなればなおさらだ。


「んなわけねぇだろ」


 だがそんな常識を蹴散らすように、男の口角が裂けんばかりにつり上がる。


「本気で殺す気になっただけだ」


 その狂気に満ちた笑みに気圧されてか男は反射的に引き金を引いた。

 しかし、銃弾は男に届く直前、強制的にその動きを止めた。まるで見えない壁にぶつかったかのように滞空し、男の足元に落ちる。


「なっ!?まさか貴様も」


「無駄口叩いてる場合じゃねぇだろ」


 距離を詰められ、下段からナイフが振り上げられるが、銃身でそれを受け止める。

 だがナイフを引くことで力の均衡が崩れ、帽子の男がバランスを崩す。致命的な隙に男の左手にもう一本のナイフがきらめき、帽子の男の脇腹を浅くえぐった。


「っぅ……!」


 痛みに意識がとられ、目の前の標的から一瞬注意が逸れる。

 その一瞬を見逃すわけもなく、今度こそ男のナイフが頸動脈を捕らえたかと思った刹那。

 派手な音をたててガラスが割れ、まさに死神の鎌たらんとしていたナイフを粉々に吹き飛ばした。

 即座に狙撃されたことを理解した2人は、割れた窓の方向から死角になる場所に身を潜める。

 その間も狙撃が止むことはなく、血塗れになっていた内装をさらにライフル弾が荒らしていく。

 ようやく静かになったのは、2人が身を潜めてしばらくたってからのことだった。


「あんたの仲間?」


「こっちの台詞だ」


男の言葉に苦々しげな声が答える。


「第三者か。で、あんたはどうすんの?今ならあんたの得物のが有利だぜ」


「ぬかせ。お前のナイフだって投げれば変わらない。お前こそ俺を殺すんだろ?」


「まあな。でも今は邪魔者が多すぎる」


 男が耳を澄ます仕草をし、帽子の男もつられるように音に集中する。

 夜半の住宅街特有の静けさの向こうに警察車両のサイレンの音が聞こえる。


「あんだけ騒ぎゃ流石にな。よかったな。少しでも寿命が延びて」


 それだけ言い切ると部屋の真ん中を突っ切り、先ほど叩き落とされたナイフを回収。まだ割れていなかった窓を蹴破り姿を消した。

 狙撃はなく、おそらく狙撃手も撤退したのだろう。

 途端に静かになった部屋で1人息をする男もゆっくりと立ち上がり、少女の傍らに立つ。

 少女はライフルの流れ弾が当たったのか頭の4分の1ほどを爆砕させ、事切れていた。

 一つになってしまった瞳は恐怖に見開かれたままの状態で硬直している。

 男は手袋をつけたままの手で少女の目蓋をそっと下ろし、闇夜に消えた。

 もうすでに耳を澄まさずともサイレンの音がはっきり聞こえてくるまでになっていた。




 前話に纏めようと思ってたら忘れたので若干短めです。


 でもあともこんな感じかも。

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