スーパーにも峠があったんや!
先日、スーパー行ったんや。
夏の昼いうたら、もうあれしかあらへんやろ。
素麺、豆腐、蕎麦……
夏の三種の神食や。
通い慣れたスーパーやさかい、商品の場所はよう分かっとる。
そこ目指して歩いとった。
するとや。
ぐいぐい、ワシの腰を小突いてくるもんがおるんや。
「なんや?」思て後ろ向いたら、
無人の買い物カートが、
“どかんかい、オッサン”
みたいな顔して突っ込んできよる。
ゾワッとしたで。
よう見たら、ちっちゃいおばあちゃんが押しとるんやけど、
下ばっかり見て運転しとるねん。
前なんか神様任せや。
あかん、あかん!
前方不注意や!
カートまで「行ける!」言うて興奮しとる。
そんなにイン攻めたらあかんて!
陳列棚が、
「ワイまで巻き込むな!」
いうて、ギィーギィー鳴きよるがな!
スーパーの通路やのに、ここだけ秋名の峠や。
針の穴のようなイン攻めてくるんは、
もう、伝説のハチロク乗りや。
カートと歩行者や。
普通やったら、道譲るんは、おばあちゃんのほうや。
……いや
高齢者に席譲るんはワシのほうか。
でもこれは席ちゃう。
道や! 峠や!
そうこうしとるうちに、
目的の豆腐が見えてきた。
赤ラベル5%。
今日の主役や。
赤ラベルまで、あと一歩。
……そう思た瞬間。
キュキュキュキュッ!
カートが内側に差し込んできた。
ワシの体が外側に膨らんで失速していく!
インや!
完全にイン取られた。
速い。
見とれてる場合ちゃう!
『絹美人』のおかめさん、
「ほな、お先です」
いう顔して、おばあちゃんについて行きよった。
嘘やろ……
食べたいもんまで、まさかの一致……
ワシ、今日ひとつ学んだ。
「豆腐は、速いやつが勝つ」
―了―




