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スーパーにも峠があったんや!

作者: 天音空
掲載日:2026/10/09

先日、スーパー行ったんや。


夏の昼いうたら、もうあれしかあらへんやろ。


素麺、豆腐、蕎麦……


夏の三種の神食や。


通い慣れたスーパーやさかい、商品の場所はよう分かっとる。


そこ目指して歩いとった。


するとや。


ぐいぐい、ワシの腰を小突いてくるもんがおるんや。


「なんや?」思て後ろ向いたら、

無人の買い物カートが、

“どかんかい、オッサン”

みたいな顔して突っ込んできよる。


ゾワッとしたで。


よう見たら、ちっちゃいおばあちゃんが押しとるんやけど、

下ばっかり見て運転しとるねん。


前なんか神様任せや。


あかん、あかん!


前方不注意や!


カートまで「行ける!」言うて興奮しとる。


そんなにイン攻めたらあかんて!


陳列棚が、

「ワイまで巻き込むな!」

いうて、ギィーギィー鳴きよるがな!


スーパーの通路やのに、ここだけ秋名の峠や。


針の穴のようなイン攻めてくるんは、

もう、伝説のハチロク乗りや。


カートと歩行者や。


普通やったら、道譲るんは、おばあちゃんのほうや。


……いや


高齢者に席譲るんはワシのほうか。


でもこれは席ちゃう。


道や! 峠や!


そうこうしとるうちに、

目的の豆腐が見えてきた。


赤ラベル5%。


今日の主役や。


赤ラベルまで、あと一歩。


……そう思た瞬間。


キュキュキュキュッ!


カートが内側に差し込んできた。 


ワシの体が外側に膨らんで失速していく!


インや!


完全にイン取られた。


速い。


見とれてる場合ちゃう!


『絹美人』のおかめさん、

「ほな、お先です」

いう顔して、おばあちゃんについて行きよった。


嘘やろ……


食べたいもんまで、まさかの一致……


ワシ、今日ひとつ学んだ。


「豆腐は、速いやつが勝つ」



―了―

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