初恋の叔父様は、私とは結婚してくれない【2000文字】
「ジルベルト叔父様!私と結婚してくださいませ!」
私は一世一代の告白とともに、初恋の人に結婚を申し込みに行った。
「シャウナ…、いつも断る身にもなってくれ…」
「今日という今日は本気です!」
「じゃあ、今までは違ったのか?」
「今までだって、本気ですっ!」
「はいはい、まったく…」
叔父であるジルベルト・ガルシア伯爵にプロポーズをしたというのに、今日も今日とて受け流されている。
もうっ、私はいつだって本気なのに〜!!
母とその弟であるジルベルト叔父様は、連れ子同士の姉弟なので血のつながりはない。
お母様よりも、私の方がずっと年も近いのもあって、どちらかというと私の方が兄弟みたいだ。
そんなわけで、私とも血のつながりはないので、なんの問題もなく結婚ができる。
「私、もう16歳です!貴族の娘として、婚約者がいてもいい頃です!」
「それなら君の父君がしっかり調査しているところだろう?」
「叔父様は、可愛い姪が変なところに嫁いでもいいんですの?」
「そんなに言うなら、僕の伝手で探してもいいんだよ?」
「叔父様こそ、24にもなって結婚どころか婚約者もいないなんてよろしいんですの?」
「僕のことはいいんだよ」
そう言って寂しそうな目で私を見ているけれど、その瞳に私が写っていないことは、ずっと前から気づいている。
…そんなにお母様に似ているかしら、私。
髪色と、この癖毛くらいしか似ていないと思うのだけれど…。
叔父様は、血のつながらない姉である、お母様のことが好きなんだと思う。
ずっと、叔父様を追いかけてきたんだ。
いつから好きだったかなんて覚えていないくらい、ずっと前から叔父様だけが好きなんだ。
「私ならちょうどいいではありませんか!」
「どこがちょうどいいんだ…」
「煩わしさゼロですわよ!」
「では、僕もちゃんと言うけれど。貴族の結婚と言うのなら、家同士のつながりだとわかっているんだよね?」
「もちろんですわ!」
「だったら、もうつながりのある義姉さんのところの娘と僕が結婚したところで、なんの利益にもならない。君ではダメなんだよ、シャウナ」
「…我が家と強固になればよろしいじゃありませんか」
「何事もバランスが大事なんだ。偏るのはよくない」
尤もらしい理由を言って、断られる。
いつものお約束だ。
でも、私だって引き下がれない。
早くしないと、本当にお父様が婚約者を用意してしまう。
そういう年頃になってきたのだ。
「…私なら、お母様に似ていていいじゃありませんか」
「義姉さんは関係ないだろう?」
「叔父様はお母様が好きなのでしょう!?だったら、似ている私にすればいいじゃないですかっ!」
「シャウナは別に、義姉さんに似てないだろう?」
「え…」
「義姉さんはもっと狡猾な人だし…。というか、なんだって?僕が義姉さんを好きってなんだ?」
すごく嫌そうな顔をしてそう言われたので、私は何度か瞬きをした。
「…違うんですか?」
「やめてくれよ、怖いこと言うのは。義姉さんに絞められるじゃないか…」
「じゃ、じゃあ、私を見る時に、寂しそうなのはなんでですか!」
私が食い下がるように言うと、いつもとは違った、困ったような笑みを浮かべた。
「…このままではいられないほど、もう大人になったんだなと思って、ね」
歯切れの悪い言い方に、私の方が戸惑ってしまう。
「私、もうすっかりレディーですわよ…」
「そうだよ。然るべきところに嫁ぐ立派なレディーさ」
「それが叔父様のところがいいって、言っているではありませんか」
「僕じゃダメだと、いつも言っているだろう?」
「私はジルベルト叔父様がいいんですっ!叔父様が好きなんです…!」
「わかっているよ」
いつもははぐらかすのに、今日ははっきりそう言って、私をまっすぐに見る。
なんとなく、言われたくないことを言われる気がして、私は後ずさった。
「…シャウナとは結婚させないと、義兄上に返事をもらっている」
いつもの寂しそうな目に捉えられて、言葉が出てこなかった。
「僕はとっくに断られているんだよ。だから、君とは結婚できない」
「…それって」
「シャウナが嫁ぐのを見届けたら、僕も結婚するから何も心配いらないよ」
「…じゃあ」
「だからいつも言っているだろう?毎回、断る身にもなってくれ」
その言葉の意味がようやくわかって、返事をするより先に涙が零れていた。
「あーあ、だから言いたくなかったんだ」
叔父様はポケットを探った後、困ったように腕を伸ばしてきて、袖口で私の涙を拭った。
「悪い…、ハンカチを持ち合わせていなかった」
「…ジルベルト叔父様、好きです」
「貴族の結婚は、仕方ないんだよ」
「…駆け落ち、したい」
「ダメだよ。僕にそんな甲斐性はないからね。貴族の地位もないのに、シャウナを幸せにはできる自信がない」
「…叔父様は、大人すぎます」
「シャウナよりは多少、ね」
叔父様は抱きしめてくれるわけでもなく、私が泣き止むまでただ隣にいてくれた。
初恋が叶わないって、本当だったんだ。
了
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