Episode 1: オファー
登場人物
田所家
健一 /元ハリウッド映画原作主演、なのに影が薄い
カヨ /健一の妻、ハリウッドのカリスマ、管理魔
トシキ /健一の息子、東大生、マザコン
シンディ・ゴールドバーグ /トシキの彼女、東大留学生、カヨの弟子
ある日、俺のメールボックスに、一通のメールが届いた。
送信者:Hollywood AI Summit 2027
「何だ?」
開いてみる。
『Dear Mr. Tadokoro,
We would like to invite you as a keynote speaker at the Hollywood AI Summit 2027.
Your experience in using AI for creative content and your work in Hollywood has inspired many in our industry.
We would be honored if you could share your insights on “AI and the Future of Filmmaking.”
Date: March 15-17, 2027
Location: Los Angeles Convention Center
Please let us know your availability.
Best regards,
Hollywood AI Summit Committee』
『田所様
2027年ハリウッドAIサミットにて、基調講演者としてお招きしたく存じます。
あなたのAIを活用したクリエイティブコンテンツ制作の経験、そしてハリウッドでのお仕事は、業界の多くの方々に影響を与えました。
「AIと映画制作の未来」について、あなたの洞察を共有していただければ光栄です。
日程:2027年3月15-17日
場所:ロサンゼルス・コンベンションセンター
ご都合をお知らせください。
敬具
ハリウッドAIサミット委員会』
「…マジか」
俺は、画面を見つめた。
ハリウッドAIサミット。
業界では有名なイベントだ。
そこで、基調講演。
「すごいな…」
その時、カヨが後ろから覗き込んできた。
「何見てるの?」
「あ、これ」
カヨは、画面を見た。
「ハリウッドAIサミット?」
「ああ。講演してほしいって」
「へぇ。いつ?」
「来月。3月15から17日」
「ロサンゼルスね」
「ああ」
カヨは、少し考えた。
「行くの?」
「どうしようかな…」
「行けばいいじゃない」
「でも…」
「何?」
「いや、緊張するし…」
「あんた、ハリウッドで映画撮影したのに?」
「あれとこれは別だろ…」
カヨは、呆れたような顔をした。
「まあ、いいわ。行くなら、私も行く」
「え?」
「血圧管理。あんた、一人じゃ絶対サボるから」
「…はい」
俺は、小さく頷いた。
その夜、トシキが家に来た。
シンディも一緒。
「父さん、母さん、こんばんは」
「おかえり」
「Hello, Mr. and Mrs. Tadokoro(こんばんは、田所さんご夫妻)」
シンディも、にこやかに挨拶した。
「あら、シンディさん。いらっしゃい」
カヨは、お茶を入れた。
「で、今日は何?」
トシキが聞いた。
「実はな」
俺は、メールの話をした。
「ハリウッドAIサミット?」
「ああ。講演してほしいって」
「すごいじゃん、父さん」
「まあ…」
シンディが、目を輝かせた。
「Los Angeles!(ロサンゼルス!)」
「ああ」
「That’s my hometown!(私の地元よ!)」
「そうだったな」
シンディは、興奮気味に言った。
「If you’re going to LA, you should meet my family!(もしLA行くなら、私の家族に会ってください!)」
「え?」
「My parents would love to meet you!(両親、絶対会いたがるわ!)」
トシキも、頷いた。
「そうだね。せっかくの機会だし」
「でも…」
俺は、少し戸惑った。
カヨが、横から言った。
「いい機会じゃない。行きましょう」
「母さんも行くの?」
「当たり前でしょ。健一の健康管理があるもの」
「…そうだね」
トシキは、笑った。
シンディも、嬉しそうに言った。
「I’ll arrange everything!(全部手配するわ!)」
「ありがとう、シンディさん」
カヨは、にこやかに答えた。
俺は、小さく溜息をついた。
(また、LAか…)
(しかも、シンディの家族に会う…)
(嫌な予感してきた…)
数日後。
俺は、AIサミットの委員会に返信した。
『I would be honored to speak at the summit.』
『サミットで講演できることを光栄に思います』
すぐに返信が来た。
『Excellent! We look forward to having you.』
『素晴らしい!お待ちしております』
そして、もう一通、メールが届いた。
送信者:Steven Schpieger
「…シュピーガー?」
開いてみる。
『Kenichi,
I heard you’re coming to LA for the AI Summit.
Let’s have dinner. I want to catch up.
And bring Kayo. The actresses still talk about her.
Steven』
『健一、
君がAIサミットでLAに来ると聞いた。
ディナーでもどうだ。近況を聞きたい。
カヨも連れてきてくれ。女優たちが今でも彼女の話をしてるんだ。
スティーブン』
「…カヨの話?」
俺は、少し複雑な気持ちになった。
(やっぱり、カヨなんだな…)
カヨに、メールを見せた。
「シュピーガーから」
「あら」
カヨは、メールを読んだ。
「ディナー?」
「ああ。女優たちが、お前の話をしてるって」
「そう」
カヨは、平然としていた。
「まあ、私も久しぶりに会いたいわ」
「…そうか」
俺は、小さく笑った。
(結局、また脇役になりそうだ…)
翌日。
シンディから、LINEが来た。
『LA、楽しみですね!
母も会えるのを楽しみにしてます。
あと、叔父のカフェにも連れて行きますね!
変わった場所ですが、面白いですよ!』
「叔父のカフェ?」
カヨが、横から覗き込んだ。
「何?」
「シンディの叔父、カフェやってるって」
「あら、そう」
「変わった場所らしい」
「…まあ、行ってみましょう」
カヨは、あっさりと答えた。
俺は、何となく、不安になった。
(変わった場所…)
(どんな場所なんだ…)
数週間後。
俺たちは、成田空港にいた。
健一。
カヨ。
トシキ。
シンディ。
四人で、LAへ。
「じゃあ、行くか」
「ええ」
カヨは、パスポートを確認した。
「健一、血圧の薬、持った?」
「持った」
「サプリメントは?」
「持った」
「ちゃんと確認して」
「…はい」
俺は、バッグを確認した。
トシキが、横で笑っていた。
「父さん、相変わらず管理されてるね」
「…うるさい」
シンディも、にこやかに言った。
「Mrs. Tadokoro, I’ll help you manage him in LA(カヨさん、LAでも管理、手伝いますね)」
「ありがとう、シンディさん」
カヨは、満足そうに頷いた。
俺は、小さく溜息をついた。
(ダブル管理体制、LA編…)
(始まるのか…)
搭乗ゲートをくぐった。
ロサンゼルスへ。
新しい冒険が、始まる。
episode2は2/9、20時アップ。
それ以降は毎週月曜日、8時更新します。




