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婚約破棄をさせられ、傷心気味になった私を救ったのは相手の弟だった

作者: 桜橋あかね
掲載日:2026/01/20

私の名前はエーリャ。今日、隣国のスィラー家の長男との合同婚約発表の為に出向いています。


会場に着くと、大勢の人たちに拍手で迎え入れられる。


「……少し表情が強張っています。大丈夫ですか?」

側近のミルが小声でそう耳打ちをする。


「え、ええ。大丈夫だわ。行きましょう」


私は今回のお相手である、ゴヨム・スィラーの横の席に座る。


(……?)

その時、私は()()()に違和感を少し持ったのだが、これは後で判明するとは思いもしなかった―――


▪▪▪


『これより、ゴヨム様とエーリャ様の婚約報告を致します』

司会が言うと、周りの人達が拍手をする。


『では、ゴヨム様から一言』

ゴヨムは立ち上がる。


「皆様にご報告致す。……この婚約は無しにする!」


周りがざわつき始める。


「う、そ……!?」

私は思わずそう呟き、彼の顔を見上げる。

すると彼は私を冷めた目を向ける。


―――さっきの違和感は、こういう事だったのか。


そう私は悟った。


『え、えーっと……どうされましょう』


司会が困惑すると、奥から一人の男性が手を挙げる。


「それじゃあさあ、兄上。その娘は俺が貰っていいよねえ?」

「ルズ、お前何を言っているのか分かっているのか!?」


ルズと呼ばれた男性がこちらに歩いて、目の前で腕を組む。


「だぁからさ、兄上が婚約しないって言ったじゃん。だったら俺が貰うって言ってんの」

「そ、そんな事して良いと思ってんのか!破門にするぞ、破門に!!」


ルズは私の手を握り、ゴヨムの方を睨む。


「今更なんだよ。この娘、わざわざ遠くからお越しになったのに失礼な事をしてるの分からねぇのか……まあ、散々言ったのに聞かなかったのはそちらさんだがな」


ゴヨムは少し顔を(そむ)き、早く行けと言わんばかりに手を外に振る。


「それじゃ、行こっか。エーリャちゃん」

「え、は、はい」


私はルズに手を引かれ、その場を後にした。


▫▫▫


「あの、これでよろしかったのです?」

帰路の馬車の中、私はルズに聞く。


「あーあー、いいさ。元々俺はあの家族の中でも嫌われている立場だったからね。破門と言われた時にもう吹っ切れたさ」

ルズがそう返す。


「でも、お父上にはどうお話をすれば良いのでしょう」

ミルが心配そうに聞く。


「それなら、俺の方から話をしておくよ。貴女方は分家とは言えそれなりの影響力を持っているはずだし、いずれは―――…」


それから私はルズを迎えるというカタチで、婚約が決まった。

不測の事態だったが、経緯の事とルズの気さくな性格を見た両親は快く許可を出してくれた。


▫▫▫


それから2ヶ月が過ぎ、そろそろ籍を入れる準備に入った春先に元婚約者のゴヨムが謁見の申し立てをミル経由で聞く。


「もしかして、あの事かしら」

私が言うと、ミルは「そうかと……」と呟く。


「あの愚兄、今更泣き言伝えに来たのかよ」

部屋の奥からルズが出てきて言う。


「どうすれば良いのでしょう?」


私が言うと、ルズは笑顔で返す。


「貴女は傍に居てくれれば良いさ」


▪▪▪


私とルズが謁見の間に入ると、やや苛立っているゴヨムの姿があった。


「これはこれは、元兄上。こんな昼間にどうしたのでしょう」


「『どうしたのでしょう』じゃねぇんだよ!この国からの金融面の支援と軍の連携警備を無くしたってどういう事なんだ!」


ルズは「あー」と言いながら、顎を触る。


「あんた、エーリャがシルミア家の分家だから婚約破棄するって前々から言ってたけどさ、分家でも政治に携わっているの知らねえの?」

「……あ?何の事……」


知らぬという表情を見せたゴヨムに、ルズは更に畳み掛ける。


「財政のドン呼ばれるガルオンデ様、海軍総司令部のボルミン中将、救護司令部部長アミロンド様、南ベスタラニブの王国に嫁いだサリャ様……この方々はすべてこの娘の家族さ」


それを聞いたゴヨムは顔が青ざめる。


「それを勝手に本家の人間だ、と思っていたのはあんたとその取り巻きだけさ」

「で、でも!これはやり過ぎ……」


ゴヨムが更に言おうとした時だ。

「やり過ぎだそうですよ、義兄(おにい)様」

とルズが言う。


扉が開き、外で待機していたボルミンが中へ入る。


「やり過ぎ、ですか。我が妹に仕向けた事のお返しですよ」

そうボルミンが言う。


「お、おい、エーリャ。何か言ってくれないか」

ゴヨムが私にそう言う。


「い……今更何なんです!もうお帰りください!!」


その言葉が決定打になったのか、ゴヨムは何も言えずにその場を立ち去った。


▪▪▪


それから、私が子を身籠った事を機に正式に結婚が成立した。


あの謁見後、ゴヨムは失脚し国を追われたという。その後の事は何も知らない。


「……新しく国の政治に携わるのは、ミロン家ですって」

新聞を見ながら、私が言う。


「ミロン家は、俺も信頼しているよ。関係修復に尽力するよ」

「ありがとう、ルズ」


『エーリャ様、お散歩の時間でございます』

扉の向こうから、ミルの声がする。


「ええ、行きますわ」

「俺は少ししたら合流するよ」


私は笑顔を見せて、頷く。

新聞を机に置き、私は扉に向かう。


それを見届けたルズは新聞を手に取り

「……復讐成功」

といい、破り捨てた。

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