表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/41

第38話 洗濯魔法で守護者を叩き落としたら、仲間のツッコミが止まらなかった

ダンジョンの最深部。

広大な円形の空間が広がっている。天井は高く、壁には古代の文様が刻まれ、淡い光を放っている。


中央に立つのは、白銀の鎧を纏った巨人──魔力生命体の守護者。

高さは五メートルを超え、その全身は継ぎ目のない白銀の装甲に覆われている。右手には巨大な剣を構え、無言のままこちらを見下ろしている。その存在感は圧倒的で、空気そのものが重くなったように感じられる。


シアが慎重に魔力を探る。

「……魔力密度、過去最高。物理主体ですが、魔力の補助もあります」


その言葉に全員が緊張する。これまでの敵とは明らかに格が違う。


ルドが大盾を構え前に出る。

「……来るぞ」


──守護者、動く。

ズシン、ズシンと地響きとともに、ゆっくりとした動きで剣を振り上げる。その剣には魔力が収束し、刃が輝き出す。


そして──


ドォンッ!


剣が振り下ろされ、ルドの盾が衝撃を受け止める。金属音が空間に響き渡り、衝撃波が床を走る。ルドが数歩後退する。


「……硬い。そして、重い」


ルドの表情が厳しくなる。この守護者は、これまでの敵とは比較にならない強さだ。


アルが叫ぶ。

「動きを止めるぞ!……水よ、鞭となりて連打せよ!――ウォーター・ウィップ・オブ・ランドリー・モード!」


──詠唱完了。

杖の先から、透明な水の鞭が複数現れる。そして──


「ぴしゃん!」「ぴしゃん!」「ぴしゃん!」


水の鞭が守護者の装甲を次々と連打する。まるで洗濯板で布を叩くような、軽快な音が空間に響き渡る。


リリが思わず叫ぶ。

「洗濯してるみたい!ぴしゃん!ぴしゃん!」


アルの悲鳴が響く。

「だからそれやめて!?洗濯じゃなくて、物理連撃だから!!家事じゃないから!!」


しかし水の鞭は容赦なく、守護者の全身を叩き続ける。


──鞭の連打が守護者の動きを鈍らせ、スタンが発生。

守護者の動きが一瞬止まり、剣を構えたまま硬直する。その隙を仲間たちは見逃さない。


シアが素早く接近し、守護者の関節部分を正確に狙う。短剣が装甲の隙間に滑り込み、魔力の流れを乱す。


ルドが盾で守護者の体勢を崩しにかかる。巨体が傾きバランスを失う。


「今だ!追撃!」


──アル、追撃の詠唱を開始する。

「氷よ、乙女の心を映し、敵を貫け!――アイシクル・ピアス・オブ・フローズン・ハート・エモーション!」


──詠唱完了。

ハート型の氷が宙を舞い、キラキラと輝きながら守護者に向かって飛んでいく。


そして──


ザシュッ!ザシュッ!


ハート型の氷が、守護者の胸部に次々と突き刺さる。装甲に亀裂が走り、魔力の光が漏れ出す。


守護者の魔力が揺れ、装甲が大きく砕けた。


──守護者、ゆっくりと崩れ落ちる。

ドスンという重い音とともに、巨体が床に倒れ込む。白銀の装甲が砕け散り、魔力の光が消えていく。


完全なる勝利だ。


リリが拍手しながら、笑顔で言う。

「すごい!洗濯と乙女心で勝った!」


アルが絶叫する。

「それ、勝因の言い方おかしいから!!俺の魔法、もっとかっこいいはずだったのに!!」


両手で顔を覆い、その場にうずくまるアル。


シアが静かに補足する。

「戦術的には完璧でした。見た目はともかく」

「見た目が一番重要なんですけど!?俺、最強の守護者を洗濯で倒したみたいになってるんですけど!?」


ルドが一言だけ、真面目な表情で呟いた。

「……柔軟剤、要るか?」


アルの悲鳴が空間に響き渡る。

「誰か俺の味方して!?俺、真面目に戦っただけなんですけど!!」


リリがアルの肩を叩きながら、楽しそうに言う。

「でも、アルくんの魔法、ちゃんと効いてたよ!ぴしゃん!って!」

「その擬音やめて!?俺の戦闘が家事労働みたいになってるじゃん!!」


シアが冷静に前を指差す。

「それより、奥に何かあります」


守護者が倒れた先には、光り輝く宝箱が置かれていた。


ルドが淡々と歩き出す。

「……報酬か」


リリが駆け出す。

「わあ!お宝だ!」


アルは立ち上がり、疲れた表情で呟く。

「……もう何でもいいや……俺の尊厳、とっくに限界突破してるし……」


──こうしてアル一行は、最深部の守護者を撃破し遺跡の核心へと進む。


宝箱の前に立つ四人。しかしアルの心には、「洗濯と乙女心で勝った」という言葉が深く刻まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ