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第26話 魔族襲来で、俺の詠唱が敵にも響いた

──ルーンベルク・昼下がり。


平和な昼下がりが、突如として終わりを告げる。


ギルド前に非常鐘が鳴り響き、街の空気が一変する。冒険者たちが武器を手に取り、街の住民たちが避難を始める。


ギルド職員が叫ぶ。


「南門に魔族の部隊が接近中!魔力反応と物理反応、両方確認!」


「両方!?魔法型と物理型の混成部隊!?それ、普通に戦争じゃん!!」


アルは顔を青くする。魔族の襲撃。それも、混成部隊。これは、ただの小競り合いではない。


ー南門・防衛戦線


アルたちは急ぎ南門へ向かう。


そこには既に、防衛隊が展開され、冒険者たちも集まり始めていた。門の向こうには、魔族の軍勢が見える。


アルは魔力を感じ取る。


「魔族の魔力……詠唱型に近い……」


「それ、俺の魔法と似てるってこと!?黒歴史魔法、敵にも浸透してる!?やめて!?羞恥の共鳴とかいらない!!」


魔族も詠唱型魔法を使う。それは、アルにとって複雑な気持ちだ。


──そのとき、魔族前衛・物理型部隊が突撃してくる。


筋肉と牙と剣。詠唱など不要の暴力が、街の門を叩く。その速度は速く、迫力がある。


「詠唱してる暇ないじゃん!!物理型、詠唱待ってくれないじゃん!!」


アルは杖を構えるが、詠唱を始める時間がない。物理型は、詠唱を待ってくれない。


──ルドが前に出る。


巨大な盾を構え、魔族の突撃を正面から受け止める。


「……俺が受ける。詠唱してろ」


その声は低く、確かな意志を感じさせる。


「ルドさん、かっこいいけど無茶しないで!?俺の詠唱、長いから!!」


ルドは無言で盾を構える。その背中が、アルを守っている。


アルは震える手で、詠唱を始める。


「我が心よ、爆ぜろ──フレイム・ポップ・コーン・エクスプロージョン!」


──炎が爆発し、魔族の突撃が止まる。


そして、爆裂するポップコーンが空中に舞う。香ばしい匂いが漂う。


「なんでポップコーン!?爆発してるけど、香ばしい匂いがする!!」


魔族たちは混乱し、後退する。だが、その表情は困惑している。


「これは……食べ物の魔法か……?」


「食べ物じゃない!!爆発魔法だから!!ポップコーンは演出だから!!」


──リリが叫ぶ。


「ヒール・オーバードライブ!!」


光の粒子が、ルドに降り注ぐ。


──ルドの脚が回復しすぎて、突然加速する。


そして、魔族より速く突撃していく。


「待って!?盾役が突撃してる!?回復で突撃って何!?戦術崩壊してる!!」


オーバードライブの効果で、ルドの動きが倍速になっている。盾を構えたまま、魔族に突進していく。


ガンッ!!


盾が魔族を吹き飛ばす。


──シアは冷静に、紅茶のポットを手に取る。


そして、沸騰した紅茶を魔族の足元に投げる。


「"スチーム・エレガンス・トラップ"──足元、滑ります」


蒸気が立ち上り、魔族の足元が滑る。


──魔族の物理型が次々と転倒する。


「紅茶が罠になってる!?しかも技名がエレガント!!」


だが、後方の魔族魔法型が動き出す。


杖を掲げ、詠唱を始める。


『我が魂よ、忘却の空に咲け──』


「魔族も詠唱してる!?しかもポエム度高い!!」


アルは即座に詠唱で応戦する。


「我が心よ、空に咲くなら、せめて静かに──セレスティアル・ヴェイル・オブ・フォーゴトゥン・ライト!」


──二つの魔法がぶつかり、空間が震える。


白い光と黒い影が交差し、空中で激突する。魔力が渦巻き、風が吹き荒れる。


そして、均衡が保たれる。


魔族の魔法型は、アルを見つめて笑う。


「……その詠唱、面白い。もっと見せてくれ」


「やめて!?俺の黒歴史に興味持たないで!?羞恥心が外交ツールになってる!!」


魔族が、アルの詠唱に興味を持っている。それは、敵として厄介だ。


アルは次の魔法を詠唱する。


「我が怒りよ、泡立て──ウォーター・スライム・バリケード!」


──水で作られたスライムたちが、横一列に並ぶ。


ぷるぷると震えながら、魔族の突撃を阻む。


「なんでスライム!?防御力あるけど、見た目が可愛すぎる!!」


魔族たちは、スライムに阻まれ、困惑する。


「これは……何の魔法だ……?」


「防御魔法だよ!!見た目は可愛いけど、硬いから!!」


ー魔族の撤退


魔族は、一時撤退を決断する。


だが、魔法型の一人が、最後に言い残す。


「……詠唱型魔法。我らも、忘れてはならぬものかもしれぬ」


その言葉には、何かの意味が込められている。


「え、何!?何を忘れてたの!?魔族も詠唱型使ってたんじゃないの!?」


魔族は静かに撤退していく。


ー戦闘後


ルーンベルクは守られた。


だが、魔族の"詠唱への興味"は、今後の脅威となる可能性がある。


ルドは静かに、アルを見つめる。


「……詠唱は、敵にも届く。だからこそ、守る意味がある」


その言葉は重く、そして深い。


「ルドさん……それ、かっこいいけど重い!!俺の黒歴史に使命感乗せないで!!」


だが、確かにその通りだ。詠唱は、敵にも届く。それは、武器であると同時に、コミュニケーションでもある。


リリが笑顔で言う。


「アルくん、また街を守ったね!」


「……うん、守った……けど、恥ずかしかった……」


シアが小さく頷く。


「アル様の魔法は、確実に効果を発揮しています」


「効果はあるけど、羞恥心も増えてる……」


──こうして、アルはまた一つ、羞恥と共に街を守った。


詠唱は、心の叫び。


黒歴史は、街の盾。


そして、アルの詠唱魔法も──街を守る力として、響き続ける。

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