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第25話 地下遺跡で、俺の詠唱が歴史に刻まれた

──ルーンベルク・南区。


魔力異常の発生源を調査するため、アルたちは地下遺跡へと向かっていた。魔導工房跡地の地下に、古代の遺跡が眠っていたのだ。


「……なんで俺が行くことになってるの……?」


アルは重い足取りで、階段を降りていく。地下は暗く、冷たい空気が漂っている。


シアが淡々と説明する。


「魔力操作特化のスキル保持者は、空間魔力の安定に最適とのことです」


「それ、俺の羞恥心を犠牲にする前提だよね!?"詠唱で空間を整える"って、詩人の仕事じゃないから!!」


魔力操作特化。つまり、詠唱型魔法を使うアルが最適だということだ。だが、それは恥ずかしい詠唱を叫ぶことを意味する。


ー遺跡の入口


地下に降りると、そこには巨大な石の扉があった。


扉には、古代文字でこう刻まれていた。


『詠唱なき者、入るべからず』


「……え、マジで?」


アルは扉を見つめる。詠唱なき者は入れない。つまり、詠唱できる者だけが入れるということだ。


リリはきらきらした目で、アルを見る。


「アルくん、詠唱できるから入れるね〜!」


「それ、詠唱できる人が恥ずかしい思いをして入るってことだよね!?入口から羞恥心試されてる!!」


詠唱できることが条件。それは、アルにとっては有利だが、同時に恥ずかしさも伴う。


アルは深呼吸し、簡単な詠唱を試みる。


「……我が心よ、扉を開け……」


──扉が、ゆっくりと開く。


「本当に開いた!?詠唱で開く扉って、どんなセキュリティなの!?」


ー遺跡内部


遺跡の中は、古代の魔法陣が刻まれた広い空間だった。空間が微かに揺れ、魔力が不安定だ。壁には、古代の詠唱が刻まれていた。


アルは壁に近づき、文字を読む。


『エモーショナル・ブロッサム・オブ・インフィニティ・クライシス』


「……これ、第2位のやつじゃん!!黒歴史ランキングに載ってたやつじゃん!!」


エモーショナル・ブロッサム・オブ・インフィニティ・クライシス。感情の花が無限の危機と共に咲き誇る。あの恥ずかしい魔法が、ここに刻まれている。


シアは淡々と、壁の文字を解析する。


「この魔法は、かつて"感情干渉型魔法"として封印されたものです。詠唱が長すぎて、使用者が精神的に崩壊した記録があります」


「それ、俺の未来じゃない!?詠唱が長すぎて精神崩壊って、俺の黒歴史予言されてる!?」


使用者が精神的に崩壊。それは、あまりにも恐ろしい結末だ。アルも、いつかそうなるのだろうか。


リリが心配そうに言う。


「アルくん、大丈夫?崩壊しない?」


「今のところは大丈夫!!でも予感は悪い!!」


ルドは静かに、アルを見つめる。


「……使えるなら、使え。崩れても、守れるなら意味がある」


その言葉は重く、そして確かな信念を感じさせる。


「ルドさん……それ、かっこいいけど重い!!俺の詠唱に人生哲学乗せないで!!」


だが、その言葉は確かに響く。崩れても、守れるなら意味がある。


──そのとき、魔力の揺らぎが激しくなる。


空間が歪み、壁が震える。封印された魔法が、暴走し始めている。


「うわっ、やばい!魔力が暴走してる!」


アルは杖を構える。ここで魔法を使わなければ、遺跡が崩壊する。


アルは震える手で、詠唱を始める。


「我が心よ、古代の残響に応えよ──セレスティアル・ヴェイル・オブ・フォーゴトゥン・ライト!」


──空間が震える。


セレスティアル・ヴェイル・オブ・フォーゴトゥン・ライト。忘れられし光のヴェール。その神聖な光が、遺跡を包み込む。


古代魔法と、アルの魔法が共鳴する。


遺跡の魔力が安定し、封印が静かに閉じられていく。空間の揺れが止まる。


「……成功した……!」


アルはその場に座り込む。魔力を使い果たした。


──そして、壁の文字が、ゆっくりと変化する。


古代文字が光り、新たな言葉が刻まれていく。


『詠唱とは、心の記録である』


「それ、俺の羞恥心が歴史になったってこと!?俺の魔法、遺跡に刻まれた!?黒歴史が石碑になったの!?やめてぇぇぇ!!」


アルは頭を抱える。自分の詠唱が、遺跡に刻まれた。それは永遠に残る。


リリが笑顔で言う。


「すごい!アルくんの魔法、歴史になったんだね!」


「なりたくなかった!!俺の羞恥心、後世に伝わる!!」


シアが小さく頷く。


「アル様の魔法は、古代魔法と同等と認められました」


「認められなくていい!!同等とか言わないで!!」


ルドが静かに言う。


「……誇れ。お前の詠唱は、歴史に残る価値がある」


「ルドさん……それ、慰めにならない!!」


──こうして、魔力異常の真相は"封印された詠唱型魔法の残響"であることが判明した。


古代の魔法使いも、長い詠唱を使っていた。そして、封印された。アルも同じ道を辿るのだろうか。


アルの魔法は、遺跡と共鳴し、歴史に刻まれることとなった。


「……俺、古代人と同じなんだ……」


「そうだよ!アルくんは古代の魔法使いの後継者だね!」


「後継者って言われても嬉しくない!!黒歴史の継承者じゃん!!」


だが、確かに一つだけわかったことがある。


詠唱は、心の記録だ。


恥ずかしくても、それは確かに意味がある。


「……我が心よ……」


アルは小さく呟く。


冒険者としての道は、まだまだ続く。


そして、アルの詠唱魔法も──歴史として、刻まれ続ける。

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