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爆ぜる  作者: 変汁
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第十三章 ⑨⑥

「どうしたの?こっち来てハサミを持ったらどうだい?」


このまま立ち尽くし続けるわけにもいかず、守親は倒れている蓮を跨いで恭次郎さんの側へと行った。


ハサミを手渡された守親は両肩を掴まれた。回れ右をさせられ、悠人達の前に立つ。悠人と宗太郎は鬼のような形相で守親を睨みつけた。


「君達、守親君を睨むなんてお門違いもいいとこだよ。最初に裏切ったのは君達の方だろう?守親君に不満があったのはわかるさ。だから虐めたんだろうからね。けど、その前にどうして話し合わなかったんだい?最初からそうしておけばこんな事にもならずに済んだんだ。まぁ、単純に君と君の両方ともが、リーダーになって偉そうにしたかったんだろうけどね」


恭次郎さんはいい、宗太郎と悠人を見下ろした。


2人はそのまま守親を睨んでいた。話す恭次郎さんを無視する形で、言った。


「守親、やらねーよな?」


「幾らなんでもそれはねーよ」


悠人が宗太郎に加勢する。


守親の乳首を切り落とした張本人がいうのだから、笑けてくる。通常であればそう思った筈だ。だが今は状況が一変していた。  


「守親君の乳首を切ったのは君かな?」


恭次郎さんはいい悠人の前に立つ。余りの感の鋭さに背中を冷たい汗が流れ落ちる。


「じゃあ始めようか」


恭次郎さんの合図にも、守親は動き出す事が出来なかった。やられた事をやり返すだけなのだから罪悪感など感じる必要はない。


同じように切ればいい。簡単な事じゃないか。守親は自分に言い聞かすが身体はカチコチに緊張し動かなかった。


ハサミを握る手が微かに震えている。

この時、守親はハッキリと気がついた。


自分はまだ、心底、憎んでいない事を。許せない気持ちは当然ある。死にかけたんだから当たり前だ。


でもまだ、元通りに戻れるチャンスがあるのではないか?自分が偉そうにしないで、誰もが平等に仲良く出来るのではないか?そう考える自分に気がついた。


宗太郎も悠人も僕を睨んでいる。乳首を切ったら一生許さないという顔をしている。


そんな2人の顔は今まで見た事がなかった。

もし、この先仲直りする事が出来たなら、今まで以上の仲間になれると守親は思った。


だからハサミを握った手を宗太郎の手首へと向けた。ハサミが拘束バンドの間に入った瞬間、守親の手を恭次郎さんが掴んだ。


「恭次郎さん、僕には出来ないよ。コイツらが僕にした事は許せない。けど、そうさせてしまったのは僕のせいなんだ。だからいつかは僕にした事を後悔すると思う。反省する筈だよ。ひょっとしたらその事で一生、苦しむかも知れない。それも1つの復讐でしょ?僕の復讐はそうしたい。それを完結にしたいんだ。だからお願い。コイツらを、いや、僕の友達を許して欲しい。いや、ごめんなさい。許してください。お願いします」


守親は恭次郎の前で土下座をした。泣いているのか、肩が震えている。


「守親君、顔を上げてくれないか?」


恭次郎さんはいい、守親を抱き起こした。椅子の向きを変え、皆んなに守親の顔が見えるようにした。


「君がそこまで彼等を思っていたなんて驚きだよ。うん。そうだね。君には君のやり方の復讐がある。僕はその復讐に敬意を払おう」


恭次郎さんはいい、守親の手を拘束バンドを使い椅子の手置きに縛りつけた。もう片方も縛ると次は両足だった。


「お涙頂戴的な事を言えば僕が従うと思ったかい?残念でした。大体さ。クズはどこまで言ってもクズなんだ。反省し悔やむ?ないない。この2人の顔を見てみなよ。顔全体に嘘だって書いてあるじゃないか。全く君は甘ちゃんだね。見込み違いもいいとこだ。その点、雷鳥君は違う。あ、そうだ。君達は雷鳥君と同級生じゃなかったかな?確か5年生だよね?知ってるかな?小野乃木雷鳥って名前の男の子」


悠人と宗太郎が頷いた。


「別なクラスやけど、小野乃木雷鳥ってのはおる」


ぶっきらぼうに宗太郎が言った。


「そうか。そうだよね。同じ5年生だもん。そりゃ知ってるか。雷鳥って名前も珍しいからね」


「その小野乃木がどうかしたんか?」


相変わらず反抗的な口調で悠人が尋ねた。


「木下康太。彼は君達の友達じゃなかったかい?」


「康太は俺達の仲間や」


「死んだよね?彼」


「……まさか」


宗太郎が呟いた。


「康太君を殺したのは僕さ。あ、けどとどめを刺したのは雷鳥君。木下康太君の父親も雷鳥君が包丁で何度も刺して殺した。彼はさ。クズは死んでもクズって事を理解していたんだ。だから守親君のように自分に言い訳したり、考えを変えたり、ビビったりはしなかったよ。迷わず2人を殺したんだ。かっこよかったなぁ。だから僕はね。雷鳥君と友達になった。親友って奴さ。互いにの秘密も共有しているから、裏切る事もないからね。

そう考えると君達のは友達ごっこだ。実にくだらない」


恭次郎さんはいい、床に落ちているハサミを拾うと宗太郎の髪の毛を鷲掴み、あっという間に両方の乳首を切り取った。


跳ねた乳首が守親の爪先にあたる。恭次郎さんは金切り声を上げる宗太郎の髪の毛を掴んだまま押し倒した。


そして馬乗りになると宗太郎の目にハサミを突き刺した。引き抜くとその先に巨大なオタマジャクシのような目玉が突き刺さっていた。


「守親君のではないけど、この目玉はそこの人形の絵に飾ろうかなぁ」


そう言って目玉をハサミの刃から抜き取ると守親の腿と腿との間に置いた。


そして改めてもう1つの目玉へハサミを突き刺し抜き取った。そして立ち上がり、人形の絵の側へ行き顔の部分へ目玉を当ててみた。


「長い釘でもないと突き刺せそうにないね」


宗太郎は喚き散らし、床の上で暴れ回っていた。


「痛いかい?守親君も、そうだったよと言ってるよ」


恭次郎さんはいい、


「でも君も男の子だろ?少しくらい我慢出来ないかな?そんな弱虫じゃ彼女も出来ないよ?」


恭次郎さんは言い、再び宗太郎の側へ戻った。悠人や金木は目の前で起きている事を受け入れる事が出来なかった。だから宗太郎を助けようともしなかった。いや、そのような考えさへ浮かばなかった。ただ吹き出す血を浴びながら呆然と宗太郎を眺めていた。そんな2人に恭次郎は微笑み返した。何も言わないのは、2人が死を覚悟していると感じたからだ。恭次郎は片膝で宗太郎の頭を押さえつけ首元へ向けてハサミを振り下ろした。1回目で宗太郎の片足が上がり、血が噴き出す中、2回目で金魚のように口を膨らませた。首元からは血泡がぷくぷくと湧き水のように出ていた。恭次郎はその後も何回も何回もハサミを宗太郎の首へ振り下ろし続けた。


宗太郎の身体から力が抜け、動かなくなったのを見て、恭次郎さんはフゥと息をついた。


その後、しばらくの間、天井を見上げて、やたらと激しい呼吸を繰り返した。


それが終わると恭次郎さんはキッチンへと立ち、ありったけの包丁を手に取った。そしてその中で1番、刃が細く長い包丁を持って戻って来た。宗太郎を抱き上げる。テーブルの上へ大の字に寝かせた。椅子に足をかけテーブルに上がると宗太郎の股間付近に跨った。

両手で包丁を握り、宗太郎の鳩尾辺りに突き刺した。

まるで大きな魚を捌くかのように宗太郎の腹を切り開く。余りの残酷さに守親は顔を背けた。悠人は未だ呆然と恭次郎さんの行動を眺めていた。金木は泣き出し嗚咽を上げていた。


「人間の心の温かさは内臓の温かさと比例するんだ。内臓が冷たければ、心も冷たい。おや?この子の内臓は温かいなぁ。心も温かかったんだね。けどだからって幸せになれるわけじゃない。温かくたって人の心のその中には残忍さが潜んでいるからね。この子もそうだったんだろう」


恭次郎さんは切り開いた宗太郎の腹部の内臓の中に両手を差し込み、持ち上げては頬ずりをした。


「守親君もどうだい?仲間の内臓を触ってみたくはないかい?」


恭次郎さんは宗太郎の肋骨の下へ手を差し込み、何かを引き抜いた。


「こんなちっぽけな物が僕達を生かしているんだ」


恭次郎さんはいい、取り上げた宗太郎の心臓を両手で掲げ唇をあてた。まるでワールドカップを優勝した選手が見せる仕草だった。ワールドカップとは比べ物にならない程、その行為は残虐非道で憎むべき姿だった。

守親は繰り返し嘔吐しながらそのように思った。

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