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爆ぜる  作者: 変汁
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第九章 ⑤①

「雷鳥、さっきの奴らなんや?」


雷鳥は弓弦の問いに気まずそうな表情を浮かべた。


最悪なタイミングで現れた2人にどう説明したらよいか雷鳥にはわからなかった。


冷静になれば事情を説明するだけで済む事だが、2人とは遊ぶ約束もしてなかったし、それに今日は用事があると前もって2人には釘を刺しておいた。


勿論、この場面を見られない為だ。家が近い弓弦には目撃される可能性がないとは言えなかった。


雷鳥が用事があるから遊ぶ相手もいないからと1人自転車で山の方へ向かったりしたら、間違いなく見られただろう。


もしくは弓弦のお爺ちゃんやお婆ちゃんにも。お爺ちゃん達の畑に行くには家の前を通って行くからだ。


そのように血脇家の誰かに見られる可能性があったのにも関わらず今日を指定したのは、当然、電気代などを支払う為にお金が必要だったからだ。


それも早急に。なのにまさかのヒヨリまで一緒だとは雷鳥は全く考えもしていなかった。


弓弦とは遊ぶ約束をしていなくても、お互いふらっと家に行ったりして遊ぶ事は昔からあった。


けど蓬原ヒヨリは違う。約束していない日に遊んだ事なんてない。そのヒヨリがいるという事はつまりそれは弓弦がヒヨリを誘ったという事だ。


僕の痩せた身体について、弓弦はヒヨリに黙っていられなかったのだ。弓弦はそういう男だ。弓弦が友達だと信頼している人には一切隠し事をしない。


過去に万引きした事や、親の財布からお金を抜き取ってお菓子を買って家に来た事があった。何処かよそよそしかった弓弦に雷鳥は聞いたのだ。


弓弦は包み隠さず話してくれた。雷鳥は正直に話してくれた事が嬉しかった。だから雷鳥は共犯を申し出で遠慮なくそのお菓子を頬張った。


だからこそ、自分がこんなにまで痩せてしまった事を、そうなる前に話さなかった雷鳥の事を怒っているに違いなかった。


勿論、雷鳥は雷鳥なりの言い分があったが、弓弦からしたら、友達なら言い訳や言い分なんていらない。


包み隠さず話すのが、それが例え弓弦や雷鳥の嫌な所を言わなければいけなくても、2人の間で遠慮は悪だった。それこそが友達なのだ。


だから弓弦はヒヨリにも話したのだ。だからこうして、今、雷鳥の前に立っているのだ。


「それとさ。雷鳥が手に持ってる封筒。さっきのデブなオッさんが買い取ったとか何とか言ってたけど、トラックの荷台に乗っていた物を売ったお金が入ってるんだよね?」


雷鳥は頷いた。この状況ではどう足掻いても隠し通す事は不可能だった。


出来たとしてもいずれはわかってしまう。

近所の人が最近、小野乃木さん家のパパやママの姿を見かけないと噂をし始めたらそれで終わりだ。


「中で話そうよ」


雷鳥はいい、2人を引き連れるように家の中に入って行った。


ヒヨリが最後にドアを閉めて直ぐ、下駄箱の上の三種類の紙に気がついた。


雷鳥に続き弓弦が靴を脱ぎ、リビングの方へ向おうとした時に、ヒヨリはその紙に気がついたようだった。


一瞬、置きっぱにした自分に腹が立ったが、どの道、さっきの場面を見られたのだから停止の用紙を隠していてもバレたのは明らかだった。


ヒヨリはそれを持って2人に遅れてリビングに入って来た。


「なーんもないね!」


パパやママが帰って来なくなって直ぐに、まだ自分が痩せていない頃に1度だけヒヨリも家に遊びに来た事があった。そのヒヨリがリビングを見回して行った。


「そこにあったテレビがない。ここのソファーとあっちの冷蔵庫もないし、あ、レンジもないね」


言ってからヒヨリはカーペットの上に体育座りした。


「何もないってのも、家が広くなっていいじゃん。ね?弓弦?」


「あ、うん、ま、そうかもやけど、それより雷鳥、これは一体どういう事や。お前がそんなんなるまで痩せた理由と関係ないとは言わせんで?」


「間違いないよ。だってこれだもん」


ヒヨリが全てのライフラインを停止した旨が書かれた紙を弓弦の顔の前で揺らしてみせた。

ヒヨリの手からその紙を受け取った弓弦が簡単に目を通した。


「そがぁな所で立っとらんで、雷鳥も座れや」


弓弦が床を叩いた。


「ここは雷鳥の家やないか」


「……うん。そうだね」


雷鳥は2人の前に座った。


「ジュースとか無くてごめん」


「えー?雷鳥何もないの?私喉乾いたのにさぁ。

あ、冷蔵庫ないや。あ、水道も止められてるんだ。なら仕方ないね。我慢するね」


ヒヨリはいい笑ってみせた。


「そがな言い方せんでもよかろうが」


「だって雷鳥、暗い顔してんだもん」


「そりゃ暗くもなるやろ」


「まぁ、確か冷蔵庫とテレビがないのは暗くなるかな」


「炊飯器と洗濯機は残っちょるよ」


雷鳥がいうとヒヨリがバカ笑いした。


弓弦は苦々しい表情で頭を掻いた。


「雷鳥、それって全然自慢にならないからね?」


「あ、そうや、そうやね」


雷鳥の惚けた返事のお陰で場の雰囲気が僅かに軽くなった。そのお陰で先程、ヒヨリがあんな風に言ったのは、重たい空気を軽くしようとしてのヒヨリなりの気遣いの言葉だったのだとこの時になって雷鳥にも弓弦にも理解出来た。


「ヒヨリってホンマ何考えとるかようわからんわ。いきなり雷鳥を馬鹿にするような風に言うからワシヒヤヒヤしたで」


弓弦の言葉に雷鳥が笑った。


「私?私が考えてる事は1つだけだよ」


「それは何?」


「封筒の中のお金は幾らあるのかな?って事だけ。それしかない!」


ヒヨリは胸を張っていい、それから雷鳥が手にしている封筒へ手を伸ばそうとした。


すかさず弓弦がその手を叩いた。


「痛っい」


「大事なんはそんな事やないやろ」


「だってジュース飲みたいじゃん?弓弦だってわざわざ私を迎えに来て、チャリの後ろに乗せて必死に漕いで来たんじゃん?喉乾いてて当然じゃんか」


「ジュース買って来る」


雷鳥が立ちあがろうとするのを弓弦が止めた。


「全部話すのが先や。それが終わったらワシとヒヨリの分のジュース買ってもらうけん」


雷鳥は封筒を2人の前に置いてから、自分の身に起きた事を話始めた。


勿論、パパが知らない女の人と一緒にいる所を目撃し、それをママに話した事から始めた。


それが今の雷鳥の状況への始まりのきっかけだったからだった。

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