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爆ぜる  作者: 変汁
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第一章 ③

転校生の蓬原ヒヨリと席を並べた苦痛の1日がようやく終わった。


蓬原は全ての授業が終わると1時間目に、先生に向かって気持ち悪いと言ってから初めて僕に対して口を聞いてきた。


授業と授業の合間の僅かな休み時間や給食の時などは、他の女子に誘われるまま、蓬原は話をしたり一緒に机を並べ給食を食べていた。


その時の僕は後ろの席の血脇弓弦(ちわきゆずる)の机に椅子だけを向けて一緒に食べていた。


血脇とはそこそこ近所でお母さん同士が仲が良く、その事もあってか幼稚園からずっと一緒だった。勿論、別なクラスにも幼馴染の生徒もいたが、話したりするのは血脇弓弦1人だけだった。


友達と呼べる存在かと聞かれたら、そうだよと僕は言うと思う。けど、血脇が僕の事を友達と思っているかはわからなかった。


2人で食べていても会話も殆どないのだから、友達とは言えないかも知れない。


けど、今学年から同じクラスになった時、最初に話しかけて来たのは血脇の方だった。それからちょくちょく会話をするようになった。


一緒に登下校すると言う事はないけど、それでも血脇のお陰でクラスで孤立する事はなく、それについては血脇に感謝していた。


「朝礼の時のあれは、恥ずかしかったやろ」


食べている途中で、突然、血脇がそう言った。


「あ、うん。まさか蓬原さんがあんな風に言うとは思わなかったけん」


「それもやけど、自分的には雷鳥がニヤけていた事がツボやった」


「言うほどニヤけてはいなかった筈やよ」


「ま、あんな風に言われたら、恥ずかしいけん、当人はそういうやろ」


まぁ、そうだろうと思った。でも本当に自分でニヤニヤしているとは感じていなかった。


だがそれを蓬原は観察していたのだ。


けれどそれほど長い間、ニヤけていたのなら自分でも気づくのではないか。例えば思い出し笑いのように。


でも雷鳥にはそのような感覚はなかった。

あの時、自分は何を考えていたのだろう。


「又、ニヤけるつもりなんか」


血脇が嫌らしい目つきで僕を見返していた。


「さっきから手が止まってるけど、それはニヤける為に必要な手順か何かなんか」


「あ、違う。考え事してたけん」


「ご飯食べる時はご飯の事だけ考えた方がええよ。余計な事を考えてると、ご飯も美味くないし、身体にも栄養がいかんけん。美味いか不味いかは別に、ご飯の時はご飯と向き合った方が食べ終わった後で、別な事を考える方がより上手く纏まったり、答えが見つかったりするもんやで」


「そんなもんか」


「そんなもんや。何でも1つの事に集中した方がええんや。複数の事に頭を使って解決しようとすると、決まって失敗したり、しっぺ返しを喰らったりするけんな。シンプルイズベストやで」


「そっか。わかった。今度からそうするように気をつけるよ」


僕はいい、給食と向き合った。集中して食べていると、給食に対し色々な事に考えが及ぶ。


どんな人が作っているのだろうとか。この野菜やお米は誰が作ったのだろうとか。


そんな事が頭に浮かび、僕は僕なりにその人達を思い浮かべながら給食を食べ終えた。


「トイレ行ってくる」


血脇はいい、食べた給食のお膳を持って席から立った。教壇の側へ運び教室から出て行った。


僕は残りを食べ自分の机に向き直った。お膳を運び席に戻る。クラスの生徒達の笑い声や話し声が教室内に響き渡っている。


血脇と一緒に食べている時は気にもならなかったけれど、こんなにもうるさかったのか、と思った。


そんな中を複数の男子が校庭で遊ぶ為、教室から出て行った。


それぞれの生徒が残りの休み時間を有効に使おうと、仲の良い者達で固まり、会話をしたりスマホを持っている者の所に集まり動画を見せて貰ったりしていた。


僕がその中に入る事はない。反対に向こうも僕を誘う事はなかった。


積極性。協調性。いつもこの2が足りないと通知表に書かれている。複数の友達などを誘って校庭に出て遊ぶ、そのような時間の使い方を僕は知らない。


外に出てサッカーやドッチボールなんてやりたくもない。本を読むのは嫌いじゃないけど、うるさい場所では本に集中出来ないから学校で読む事はなかった。


図書室に行くのもありかなと考えた事もあったけど、結局行かないままで終わっている。


だからといってこのまま教室内にいるのも、何だか落ち着かなかった。何をする訳でもないけど、僕は席を立ち教室から出る事にした。


体育館の方に向かって廊下を歩く。

途中、その廊下でお喋りをしている他組の女子達がいた。


その女子の輪に入ろうと金木とその仲間の木下康太がいた。その2人は笑いながら女子にちょっかいを出している。されてる女子も満更でも無さそうだった。僕は顔を伏せ、その輪の側を通り過ぎた。


金木と木下の笑い声につい苛ついてしまう。

仲間だった田原隼人が火事で死んで、まだ間もないというのによく笑ってなんかいられる。


その神経が僕には信じられなかった。別に田原隼人の事はよく知らないし、話した事もないから、田原が死のうがどうって事はないけど、ただ仲間なら、もっと悲しむべきだと思う。その悲しみと向き合うのが辛いから敢えて、おちゃらけキャラを演じているなら、最低だ。


実際、そんな風には見えなかった。きっとこの2人にとって田原隼人の事は友達でも仲間でもなかったのだろう。そんな木下や金木には他にも仲間もいるが、今はそいつらの姿は見当たらなかった。


体育館の前を抜けると、その裏にゴミ焼却炉がある。

先生達の要らなくなった資料等を用務員のおじさんが集めて燃やすのだけど、今はそのゴミも用務員のおじさんの姿もなかった。やはり、燃やすのは昼間か夕方なのだろう。


小野乃木雷鳥は1度で良いから焼却炉の中の燃え盛る炎をこの目で見たいと思っていた。


田原隼人の家が燃えたあの日の深夜に見た、怒ったような炎のように雷鳥の心を揺さぶる程の炎が見れるかも知れないと考えていたからだ。


だが、その雷鳥の思いはまだ叶えられるずにいた。自分でも紙を燃やした事はあったが火力不足なのか雷鳥がみたいと思う、あの黒い人影がいうようにアーティストになれる程の炎を作り出す事は出来ていなかった。


ジッポライターのオイルも未だ手に入れる事も出来ず、その事も雷鳥を苛つかせる要因でもあった。


お小遣いを貯めて何度かオイルを買おうとしたが、店員のおばさんが不審に思ったのか、両親を連れてくるよう雷鳥に言い、それ以来買う事を躊躇するようになってしまったのだ。


あの黒い人影から貰ったジッポライターは見つからない場所に隠してあるけど、もしオイルを手に入れる為にママに着いて来て貰うと、オイルの必要性を追求されるに決まっている。


それは避けたかった。ジッポライターとあの夜出会った黒い人影の存在と交わした会話は自分だけの宝物なのだ。


例えママでもその事を知られる訳にはいかない。

当然、雷鳥自身、話すつもりもなかった。


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