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爆ぜる  作者: 変汁
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第七章 ③⑦

体育の時間を体調不良を言い訳に授業を見学するつもりでいたけど、やたら蓮が絡んで来る為、保健室へ逃げた守親だったが、しばらくして新たに保健室へ入って来た人物に愕然とした。


なんと保健室のドアが開き、具合が悪いと保健の先生に話をしているのは、絶対に忘れる事のない声の持ち主だった。


守親はベッドの前に引かれたカーテンの隙間から声のする方を覗いた。やはり間違いなかった。


そこには古里宗太郎がいたのだ。


宗太郎はついさっきまで音楽室にいた筈だ。それがどうしてここに?守親は直ぐにシーツを頭の上まで上げ寝たふりをした。


だが宗太郎にはそれが嘘寝だというのは直ぐにバレたみたいだった。


自分が休む為に指定されたベッドに入るフリをして、宗太郎は守親の寝るベッドに擦り寄って来ると側でしゃがみ小声で囁いた。


「起きてるのはわかっとるで」


シーツの下から宗太郎の手が守親へ忍び寄り脇腹をつねった。


ここで声を上げると保健の先生から怒られここから追い出されかねない。


それにそんな風に喚いたりしたら、夕方に宗太郎達から更に酷い目に遭わされるかも知れない。


そう思った守親は奥歯を噛み締め痛みに耐えた。守親が堪えている事が余程楽しいのか、宗太郎のつねりは更に強くなった。


それでも守親は歯を食いしばりながら痛みに耐えた。自然に額に汗が滲み出る。


我慢の限界だと思った矢先、宗太郎のつねる力が緩まった。


つねり疲れたのか、それとも別な箇所をつねるつもりなのか、不安を抱えている隙に宗太郎の手が守親の身体から離れた。


その直ぐ後に宗太郎が忍びながら守親のベッドに入り込んで来た。


痛みで流れる涙を拭う守親に、宗太郎は背後から抱き込むような体勢で忍び寄りその耳元に顔を近づけた。


「お前が大層な演説をした日の夜、ワシは夜中に抜け出して河原へ行ったんや。けど言い出しっぺのお前はいつまで経っても現れんかった。他の奴らが来ないのは最初からわかっとったから、ええんやけど、まさか言い出しっぺのお前まで来んとはびっくりやったわ。隼人も不憫やわ。死んでからもお前にいいように利用されるんやからな。これじゃ隼人も浮かばれんよ」


宗太郎は囁くように捲し立てると守親の股間を鷲掴んだ。


「これ、もいでオネエにしちゃろうか?」


自分の言ったセリフが滑稽だと感じたのか、宗太郎はクスッと笑った。守


実際、オネエにチンコがあるのかないのか知らないが、オネエにすると言う宗太郎の言葉は間違っていると守親は思った。そんな守親の気持ちなど知る由もなく宗太郎は再び喋り出した。


「家の両親がな。守親の事を元気で明るくて礼儀正しい良い子だって言うんや。最近遊びに来んけど元気にしとるか?って。やから元気は元気やけどやっぱ隼人の死が相当堪えとるみたいや。ワシもそうやけど、守親はワシらなんかより、よっぽど隼人と仲が良かったけん。相当辛いと思うわ。両親にはそういうておいたわ。ま、実際、お前は隼人が死んだ事は何とも思っとらんやろがな。思っとったら、あの夜河原に来るやろし、守親としても隼人が死んでホッとしとる部分もあるんと違うか?お前は知らんやろがな、ワシら全員、隼人から聞いとったんや」


その言葉に思わず守親が反応した。


「何を聞いたっちゅうんや」


「お前が隼人にさせてた事やしとった事や」


「ワシは何もしとらん」


「そういうと思ったわ。隼人は死んでしもうたから、本人の口からお前にされた事を話す事も出来んからな」


宗太郎はいい守親の手首を掴んだ。払いのけようとした守親だったが、脇腹を殴られ諦めた。宗太郎は守親の手首に2本の指をあてた。


「鼓動がえらい早いのう。隼人に対して罪の意識があるから、こんな風になるんや。ワシらに知られてビビったんやろ」


守親には返す言葉がなかった。あったとしてもここは保健室だ。


せっかくズルしてここで今日の夕方まで休んでいようと思っていたのに、思わぬ宗太郎の出現でそれも危うくなって来ている。


これならまだ、口臭蓮の相手をしている方が楽だった。


「ま、それでも家の両親はお前の事を良く思っとる。やからワシはな。隼人の事もあったけど、お前の側にいたら自分も良い子に見えるのか?と思って良くしてる振りを続けていたんや。結局、今まで付き合ってみてわかった事は、お前はただの自己中で、承認欲求が強いただの甘ったれのガキって事や。そういう奴は大人になると決まって社会に迷惑かけるんや。やから今のうちに、守親、お前を矯正しとかんとあかんのや。勘違いしたらダメやぞ?ええか?ワシらがあの空き家でお前にしとる事は、お前が隠れて隼人にやっとった事と同じやからな?これも全部、お前の為や。守親が隼人に言うとったように、ワシらがしとる事は正しい事なんや。全部、お前の為や。こっちだってやりとうてやっとる訳やない。このままお前が大人になってしもうたら、皆んなの迷惑になる。社会の迷惑になる。そのせいで沢山、辛い思いや悲しい目に遭う人が出て来るんよ。そういう人が社会に出んように、今、ワシらがお前を躾けんとあかん。やらんといけんわけや。わかるな?」


大層な御託を並べてた宗太郎だったが、当然、守親には返す言葉もなかった。


驚いたのは一文一句、自分が隼人に言った言葉を宗太郎が言って来た事だった。


守親の中に隼人へ対する憎悪が呼び覚まされて行く。死人相手には何もできないのが腹正しかった。


隼人の野朗!と思ってもあいつは焼け死んだ。正直、その話を耳にした時、腹を抱えて笑い出しそうになった程だ。


聞いたのが学校でだった為、笑う事は出来なかったけど、反対にこれからもっといたぶるつもりだった隼人が死んだ事に、少なからず、残念でならなかった。


隼人に対しザマァと思った気持ちは今でもある。が、それ以上に、更に深い憎しみが芽生え始めていた。


その憎悪をぶつける相手がいない事が、今、自分が置かれている状況から上手く抜け出せない原因かも知れない。


こうなったら、蓮か悠人を同じ目に遭わせてやろうか。宗太郎や真弘には体格的に勝つ事は無理だ。だけどあの2人のどちらかなら……


「まぁそういう事や」


宗太郎はいいようやくベッドから出て行った。


「今日も逃げんなや」


捨て台詞を吐きながら宗太郎は自分にあてがわれたベッドへと身体を滑らせて行った。


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