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爆ぜる  作者: 変汁
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第七章 ③③

ヒヨリに誘われるがまま、河原へと来たのはこれで何度目だろう。


その全てが貯まった手紙を燃やす為だけにこの場所へ来ていた。


僕達のいる場所から離れた所には例の5人組みの姿があった。お調子者の木下と言ったか。


あいつはちょくちょく僕らの教室に来ては馴れ馴れしくヒヨリに話しかけて来た。


ヒヨリ自身、最初は仕方なくと簡単な会話には付き合っていたが、いい加減その付き合いに疲れたのかある時、木下にこっぴどい仕返しした。


「お前、知らないかもだけど、全女子から嫌われてるからな?当然、私もその中に入ってるよ。私も転校して来てまだそんな日が経ってないから、仕方なしに話聞いてやったけど、正直、ウザッ。自分の事をカッコいいとでも思ってるわけ?あんたなんか四国の中で1番、不細工な小5だわ。悪いけど私は関東育ちだから、あんたみたいな田舎者を相手にする暇はないんだよ。2度とうち教室に顔だすな」


この言葉でクラスの中でのヒヨリの立場が決まった。木下自身、ヒヨリが言うほど僕のクラスの女子から嫌われていた訳ではない。


勿論、木下の事を嫌いな女子もいたし、そうでもない女子もいた。普通に会話する女子や男子もいる。


けど、ヒヨリが転校して来てからの木下に対しクラスメイト全員が思っていた事は、


「ウザい」だった。


稀に笑わせてくれるような事もあるにはあったが、毎時間の授業が終わる度に顔を出されるとさすがにウザいとしか言いようがなかった。


だからヒヨリの言葉に内心、誰もが頷いた筈だ。


木下はヒヨリに捲し立てられ、顔を真っ赤ににして僕らのクラスから出て言った。


返す言葉もなければ、ヒヨリの木下の存在自体を否定した振られ方をすれば、誰だって顔を真っ赤にして怒りたくもなる。


でも木下は黙って出て行った。反撃する上手い言葉が見つからなかったのだろうけど、そもそも口喧嘩で女子に勝てる訳がない。


その点、木下は賢かった。もし反撃などしたら、ヒヨリにもっと酷い言葉を投げかけられただろう。


そんな木下がいつもの仲間と離れた場所で戯れあっていた。


こちらの存在には気づいて無さそうだけど気づいていたら、きっと気まずくなり帰るのではないだろうか。


僕としては、何をそんなにはしゃいでいるのかわからないけど、その喚く声がウザいから今すぐあのグループにはいなくなって欲しい。


けど、それよりも早く手紙は燃えてしまうだろうから、河原から離れるのはきっと僕らの方が早い筈だった。


焦げた手紙の燃え滓が河に流されていくのを眺め終えた後、おもむろにヒヨリが立ち上がった。


「帰ろうや」


弓弦の言葉に僕とヒヨリは頷いた。3人とも河原の土手を登っている最中、再び甲高い喚き声が聞こえた。


そちらを振り返ってみると、伸びた雑草の陰に隠れて、1人の人間が裸で地面にうずくまっていた。


その1人を見下ろすように4人の人間が立っていた。その内の1人、身体の大きな人間が一歩前に出た。


伸びた雑草の隙間からその顔が見えた。木下だった。その木下が奇声のような笑い声を上げながら地面に横たわる裸にされた1人を足で蹴り始めた。


周りにいる他の3人はまるで体調が悪く体育の授業を休んだ生徒のように、膝を抱えその光景を眺めていた。


そいつらの表情まではわからないが、木下の行為を止めない時点で、1人だけがターゲットにされているようだ。


あれほど仲が良いグループなのに何かしらの亀裂が生まれたようだ。


その1人が誰なのかここからではわからなかった。気になって足を止めてると、弓弦が僕の腕を掴んだ。


「そっち見んな。アイツらとは関わらん方がええ」


確かに弓弦の言う事は間違いなかった。仲良しグループが仲間割れするほどだ。


おまけにあんな風に全員から蹴られたりしたら、きっといつかは死んでしまう。


おまけに狂ったように蹴り続ける木下は、ヒヨリからこっぴどく振られたばかりだ。


八つ当たりされるのごめんだった。


だから僕は弓弦の言葉に従い、土手を上って行った。


普段ならこのままヒヨリと別れ、そして弓弦と別れ家に戻り自転車に乗って山へ向かうのがいつものパターンだけど、今日に限ってヒヨリがまだ遊び足りないから弓弦か雷鳥の家に行きたいと言い出した。


「ワシん家は駄目や。爺ちゃんと婆ちゃんおるしな」


「いても良いじゃん。友達だって紹介してよ」


ヒヨリにそのように言われた弓弦は少し困った表情を浮かべた。


「その内、紹介しちゃるけど、今日は駄目や」


「え?何で?どうしてよ?今日が駄目な理由でもあるわけ?」 


「爺ちゃんの畑仕事手伝う約束しちょるんや。やから無理や」


「あ、なら私達も手伝うよ?ねぇ?雷鳥?」


ヒヨリがこちらを見た瞬間、弓弦が首を振って見せた。どうやら弓弦には何か別の用事があるようだった。


「いや、畑仕事の手伝いはしんどいから嫌だなぁ」


その調子だと言いたげに弓弦が何度も頷いて見せた。


「なら家にくれば?」


自分でも思いも寄らぬ言葉が口をついて出た。


「お父さんもお母さんもいないし。あ、けど、家に帰ったら山に行く用事があるから、ヒヨリにも付き合って貰う事になるけど、それでもいい?」


「山?ダルいからやだよ。つか雷鳥、山にどんな用事があるわけ?」


「燃やす為の枯葉を拾いに行くんだ」


「あ、なら行く。けどまさか歩きじゃないよね?」


「うん。自転車」


僕がそう言う時ヒヨリは悪そうな笑みを浮かべてこちらを見返した。


その笑みの意味が何を訴えているのか、僕にはすぐに理解が出来た。


絶対に2ケツしろよ?と言う意味に違いない。


僕がそのように感じ取った事を悟ったのかヒヨリは更に悪事を企んでいるかのような笑みに変わった。


「私が後ろに乗ってやる。雷鳥、死ぬほど喜べ」


ヒヨリの言葉に弓弦が呆れた顔をした。


「その内、弓弦の後ろにも乗ってやるからな」


「ワシのチャリの後ろにヒヨリなんか乗せんわ」


弓弦がいうとヒヨリが拳を握り殴る構えを取った。弓弦は拳から逃れるように小走りに走り出した。


「早く帰らんと爺ちゃんに怒られるから、ワシは先に帰るけんな」


僕とヒヨリは、ランドセルを揺すりながら駆る、弓弦に向かって手を振った。


2人で歩きながら、離れていく弓弦を見送った。

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