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爆ぜる  作者: 変汁
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第六章 ②⑧

転校先の小学校で、私は初日から金魚というあだ名を付けられた。


同じクラスの生徒から付けられたのなら、まだ「仕方ないか。四国の田舎の子供だからあだ名のセンスもないよね」くらいには思えた筈だ。


どうしてかと言うと最低でも2年はここで暮らさなくてはいけないという話を両親がしていたのを耳にしたからだ。


だからまだクラスメイトから付けられたあだ名なら、我慢のしようがあった。最低でも2年はこの子供達と付き合って行かなければいけないから。


けれど私のあだ名な別のクラスの男子、金木真弘というお調子者によって金魚と名付けられてしまった。


ただ可愛いと言われた事については、まぁ、気分は悪くなかった。だからって金魚としか言えない金木の頭はどうかしてるし、悪いとしかいいようがないとその時は思ったものだ。


産まれた時から関東に住んでいたからそれくらいわかる。田舎の子供はまるでセンスがなってない。


当時、金木に金魚と言われ内心頭に来ていた私は、このクラスの生徒も小学校の生徒全員も所詮、金木程度の知能とセンスしかないのだろうと話をする前から勝手に軽蔑していた。


当時は関東から来たと言うのが私のプライドだった。けれど親の仕事の都合とはいえ、こっちに来てしまったというのは私にとっては人として、女の子として、最低なランクまで突き落とされたあげく、その田舎者から見下されているように受け取っていて、そのせいでここで生活していく事自体、恥ずかしいものだと思っていた。


住めば都という言葉があるが、あれは嘘だと今でも私は思っている。勿論、嫌な思い出ばかりじゃないし、少なくとも一刻も早く関東へ帰りたいという気持ちが、日々の生活により徐々に薄れていったのは確かだった。


思い悩んでいたのも最初の数ヶ月だったし、それ以降はクラスの生徒と馴染めたお陰か、関東へ帰りたいという言葉が、家庭内にいる間、私の口から徐々に減って行ったのは確かだし気づいたらそのような事を言わなくなっていた私に、母はとても安心したようだった。


それと忘れてはいけないのは最初に座った私の席だ。転校初日、教科書も揃っていなくて隣の男子生徒と机をくっつけて教科書を見せて貰うよう先生に言われた。


私は言われた通り机を寄せた。くっつけた後、隣の席の男子の方を見た。その男子は一瞬だけ私の方を見て、直ぐに目を逸らすと渋々といった感じで机の上に出してあった教科書を2人の間の真ん中へ、丁度、2人が良く読める位置へとずらしてくれた。


そして私はその男子生徒の教科書を共有し授業を受ける事となった。


名前は忘れもしない。小野乃木雷鳥という。雷鳥の第一印象は気弱で大人しい男子だな、だった。


クラスの男子からイジメに遭うようなタイプだと思ったし、金木なんかの格好のターゲットとも思えた。


けれど私の第一印象は大きく間違えていた。小野乃木雷鳥はイジメに遭ってはいなかった。ただ引っ込み思案の性格の為、友達は1人しかいないようだった。


それがわかったのは給食の時で雷鳥は後ろの席の血脇弓弦と向き合って食べていたからだ。私は他の女子に誘われるがままそちらの席へ椅子を持って移動したが、雷鳥と弓弦が給食を食べている間、殆ど会話もなかった感じだった。


聞き耳を立てていた訳じゃないから正確な所は不明だけれど、さほど仲良しでもないんだ?くらいには思った。


その時点で私は雷鳥が可哀想に思えて、なるべく話しかけてやろうと思った。こちらに引越しして来た事のストレスもあった為、八つ当たりまがいの口の聞き方や、嫌がらせのような事を言ったりもした。


けど、その時の雷鳥の反応が何故か嫌になれなくて、授業に飽きて来るとちょっかいを出したりした。


雷鳥は嫌がっていた風だけど、私は私に弄られる雷鳥は満更でもないと感じていると思っていた。


それが正しかったか、間違っていたかは、私にはわからない。聞いた事も無ければ、雷鳥がキレて怒鳴るような事もなかったからだ。


引越しした当初、家の近くにはコンビニはないし、ショッピングモールもなかった。買い物だって車で15分から20分くらい走らないと大きなスーパーやデパートはなかった。関東にいた時のように学校帰りに友達とちょっとしたショッピングを楽しむような場所もなかった。だから殆どの女子は真っ直ぐ帰宅していたし、男子は河原や公園などでサッカーやキャッチボールをしていたりした。大人になった今では、あの場所もコンビニはあるしモールもある。でも、私は2度とあそこには住みたいと思えなかった。


だってきっと当時生活をしていた場所にクレープ屋はないと思うから。そんな何もない廃れた町でこの人達は何故、生きていられるのだろう?とふと本気で考えた事もあった。同級生はいつも似たような服装だし、オシャレの1つもしていない。メイクだってそうだった。


小5にでもなれば、ある程度の化粧品くらい持っていて然るべきだ。けど、クラスの女子は1人もメイク道具を持っていなかった。


でも、やはりそこは女子だ。中にはオシャレに強い関心を持っている女の子もいた。その子が休憩時間に私がマツエクをしていた事に気づいて話しかけて来た。それがきっかけで、その1人の女子グループ達と仲良くなり、話題はいつもメイクやオシャレの話だった。


私はいつも皆んなから質問を受ける立場にあり、そのような状況が好きだった。


尋ねられたり褒められたりして、気持ちが良くなり、いつも饒舌になっていた。金魚とあだ名を付けられた事すら忘れるくらいに。


そんな私の自尊心はいつも休憩時間に満たされた。


その為に授業中は私の心は勉強には向かわず次の休み時間へと飛んでいた。次は何を自慢しよう?原宿や渋谷、青山の話もしないといけない。そんな風な妄想に耽っていらた。


でもそのような満たされた気持ちでいられたのも僅か、数時間の間だけだった。


何故なら、次の休み時間には、病欠で休んでいる堀籠朱音という生徒がモデルをやっていると聞いたからだ。


「私達なんかより朱音ちゃんならメイクの事とか服やネイルなんか、話が合うと思う」


私にそのように進言をしたあの子は一体、誰だったか。今となっては名前も顔すら思い出せない。きっと当時の私にとってのその子はそれほど印象の薄い女子だったに違いない。


けれどその子のお陰で堀籠朱音と話をするきっかけが出来たのは間違いなかった。


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