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爆ぜる  作者: 変汁
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第五章 ②③

授業中、堀籠朱音が言っていた心霊スポットの事が頭から離れなかった。


施設で暮らす堀籠がそこにいる同じような境遇の高校生のお姉さんの元彼の話として語ったのだけど、正直、弓弦はもっと知りたいと思った。


実際には、そのお姉さんが堀籠に話した事が全てだろうし、それ以上の事は例え堀籠に事情を説明し会わせて貰ったとしても新たに聞き出せる事は殆ど無いと思われた。


もし可能性があるとするなら、元彼が行ったと言われる心霊スポットの場所を聞き出し自ら行ってみるという事くらいしか自分に出来る事はないだろう。


だからそれは無意味だと思われた。

何故なら幾ら元彼と今の自分の状況とがほぼ重なっているからと言っても、自分はその対処法を知っており反対にその元彼は知らなかった為、自ら命を断つ羽目になった。


一方は自分以外の生き物を焼き殺す事で生きていて、もう一方はそれを知らないまま死んで行った。


同じ目に遭っていたとしても、その差は歴然としている。


それに弓弦の耳の奥で鳴る羽音と元彼が聴こえていたという羽音が同じ物だという確証もない。


自分はスズメバチの巣を駆除したに過ぎず、それによってある時、羽音が聞こえるようになってしまった。


一方で向こうは心霊スポットと呼ばれる場所へ肝試しに行った後、ある日、突然耳鳴りがしだしたという。


堀籠の話によれば、その後で元彼はブォォンという羽音が聞こえ始めたようだ。


元彼に聞こえていたという羽音を出すものが、弓弦が焼き殺した女王蜂だと限らないし、同じとはどうしても思えなかった。


もしも2人に繋がりがあるとするなら、考えられるのはスズメバチの生態に関する事に違いない。


スズメバチは作った巣を放り出して、新たな場所に引越し巣を作る事もあるという。


そういう点で見れば、心霊スポットにいた筈のスズメバチが肝試しに来た元彼達の手によって、何らかの悪戯を受け、女王蜂は仕方なく心霊スポットにあったその巣から引越しをするしかなかった。


その引越し先が偶然にも弓弦の家の縁側の下だったといえない事もなかった。


スズメバチの行動範囲がどれくらいあるのか知らないけど、心霊スポットから家までの距離がその行動範囲内であれば、羽音を出すものが、弓弦と同一の女王蜂だと考えられなくもない。


お昼休みが終わる寸前、弓弦は堀籠に心霊スポットへ出かけた元彼が、そこでスズメバチの巣を見なかったか?悪戯しなかったか?と聞きたくなった。


が弓弦はグッと堪えた。堀籠に余計な詮索をされたくなかったからだ。それにアイツは自分に近寄ると鳥肌が立つなんて言うような女子だ。


その言葉だけとれば、弓弦に対して堀籠は凄く失礼な事を言ったのは確かだった。


他人から見たら堀籠は弓弦を馬鹿にし見下した言葉を使い、イジメていたと言われかねない。


自分はそんな風には思わないが、周りはどうだろう。このクラスにはいないだろうが、他のクラスだと恐らくはそうはいかない。


何故なら堀籠朱音はこのクラスの中で1番浮いている存在だし、変な女子として見られていた。


なのに勉強は誰よりも出来るなんて、やっぱり頭のいい奴は、他人から見たらとても可笑しいな所を備えているのかもしれない。


そもそも小学5年であんな雑誌を読んでいる人はいなかった。


夏になれば怪談話やトイレの花子さんをパクった噂話が出たりするけど、誰も信じてはいなかった。


話をする奴に合わせて怖がる振りをしたり驚いてみせたりしてるだけだ。


話の最初から否定なんてしようものなら、そいつらから絶交され、そいつらにあの子とは口を効かないでとか、無視しなよ?とか根回しされて翌日からクラス全員の無視が始まるだけだ。


口には出さないけど、同じクラスの奴のしだした話を全面的に否定するとそんな目に遭う。


そういう事は誰しも3年生くらいまでで学ぶから、皆んな話を合わせる事を嫌がったりはしない。


けどその殆どがクラスの中で孤立しない為に身につけたスキルだった。


それでも中には虐められる奴もいる。今のこのクラスではいないようだけど、他では必ず1人や2人はそんな目に遭っている筈だ。


一見、どちらかといえば堀籠も虐められる側のタイプに属している。


変な本ばかりみてるし馬鹿正直に思った事を話すから、その対象となりがちの筈だが、堀籠自身、1人が好きなのか、他人と付き合うのが嫌なのか、この学校に柏木雫が転校して来てから少し変わったようだった。


まぁそれは柏木雫の異様なまでのしつこさのせいかも知れない。


ストーカーやないかと思うほど、柏木雫は堀籠朱音にくっついて離れようとしなかった。



理由は勉強を教えて貰うという事らしかったが、

いつの間にか堀籠が持って来ている心霊雑誌を2人で読み耽るようになっていた。


それからだったか。1人、2人と堀籠の周りに人が集まるようになった。


授業でわからなかった所を堀籠に聞くというが集まっている理由だったが、それ以上に堀籠には周りから同情を得るような事がその身に降りかかった。


授業参観日の時、堀籠の父親が現れて堀籠を殴ったのだ。それがきっかけとなり、堀籠は父親と離れ施設で生活するようになったのだ。


だから勉強を教わる振りをしながら、その中にはやたらに堀籠の父親の事を聞きたがる女子生徒の姿も少なからずあった。


そんな堀籠だからあいつが変なこと、つまり他人を馬鹿にするような言葉を言ったりしても、元々変だった事も踏まえ皆んな堀籠の事は多目に見ていた。


だからお昼休みの時に堀籠が言った事を他の生徒が言ったとしたら、それは生徒同士の噂話となりやがて先生や、その当事者同士の親や、そのどちらかの親と仲良くしている保護者会の人達やPTA役員達が弓弦に言った言葉だけを吊し上げいつの間にか問題にし、事を大きくしてしまったりしただろう。


だから皆んな、友達に向けて使う言葉にはどこか気をつけている風だったし、そんな雰囲気は誰からも感じられた。


ただ稀に会話が盛り上がりテンションが高いまま思わず暴言や失言をしたりするけど、そういうのは大体、盛り上がってつい、みたいなノリでその場限りで収まりがつくものだ。


だが、中にはそのような会話の中にいなかった人達、入れなかった部外者がその連中を陥れようと、帰宅時の夕飯時にさりげなく親に話たりする。と、どうなるだろうか。


その話を聞いた親はその後しばらくして、ここだけの話だと一応、言い逃れする為に保険をかけながら別の親にLINEや電話で話したりする。


やがてその噂はゆっくりと広がりをみせ、とんでもない尾鰭のついた嘘の形を取り、いつしか先生やクラス中の話題となり気づいたら子供同士や、自分の両親、周りの大人を巻き込むまでに発展しその圧力に気圧され、あれよあれよと加害者と被害者という構図が形成されてしまう。


それはまるで靴に染み込む雨水のように、元々友達同士だった者の心へと浸透していく。


そうなったらもう後戻りは出来ない。外部からの圧力はより激しくなり、仲良くしていた関係に亀裂が入り、それは自然とその者達の関係を壊してしまう。


そしてお互いが無視しあい陰口や悪口をいい、クラスは幾つものグループに別れ嫌でも歪み合うようになって行く。


実際、そのような事はこのクラスにもあるだろうなと、弓弦はさっきからやたら落ち着きのない雷鳥の背中を見ながらそう思った。


とにかくそんな雷鳥は友達として、こちら側に引きとどめておきたかった。


燃やすという行為に頬を赤らめ、悦に浸る雷鳥のような友達はそう見つかるものではない。


だから弓弦はいつかこの羽音の事は話さなければいけないとも考えていた。


何故なら毎回、雷鳥の目を盗み、生き物を焼き殺すなんて出来ないからだ。


ただ、2人でミミズが焼け死ぬ所を見てからは、そのハードルも最初の頃よりはずっと低いものへとなっていた。


けど、自分が生き物を焼き殺すのは自分が自分以外の者になる事を恐れているからだ。


自分でコントロール出来ない感情に振り回されない為だ。


なら雷鳥はどうなのだろう?何故燃やす事が、好きなのか?枯葉が燃え進めてくる中、その熱さから逃れようと暴れるミミズを雷鳥は助けようともしなかった。


それを見ていた自分は羽音を鎮まらせる為に手も口も出さなかった。


つまり自分には理由があるが、雷鳥がミミズを助けない理由はなかったはずだ。


興味本位で、というのは誰しにもあるけど、いざ炎が迫って来て目の前で焼かれそうになっていたミミズを見たら、普通は可哀想だと感じ助けやしないだろうか?

やっぱ可哀想。ごめんなってなる筈だ。


もし自分に羽音が聞こえなければ、きっとミミズは助けていた。だけど、雷鳥は楽しそうに焼かれるミミズを眺めていた。


そうする理由が雷鳥にもあるのかも知れないけど、それを弓弦は知らなかった。


だから余計、あの時の雷鳥の横顔はととも印象に残っている。


きっとこの先一生、自分は雷鳥の悦に浸るあの表情は、忘れる事が出来ないだろう。


まだ蓬原にちょっかいを出されている雷鳥を後ろの席で眺めながら、弓弦はそんな風に思った。

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