第三章 ①②
その事を拳法ババアに聞いた事がある。
「人間って何であんな綺麗に骨だけになるんやろ」
「そりゃ燃やす火の火力が高いからや。やからライターの火なんかじゃ人は骨にはならん。皮膚が焼け爛れる程度や」
「そのライターやけど人が燃えるくらい集めても駄目なん?」
「莫大な数のライターが必要やろうな。火葬炉の火の温度が800度から1200度らしいが、ライター自体もそれに近いんや。近いならライターで人間を焼けば骨に出来ると思うが、多分そうするには骨まで焼き続けられるように火力を保ち続けんといかん。火葬炉なんかは骨になったかどうかいちいち火葬炉の中を確認するらしいからの。骨になりきるまで最大火力の状態で火を絶やさんようにせんといかんのやろ。正直、ワシにはようわからんが、火葬炉を使わず人を骨だけにするには要は燃やし方やないか。ほれ、火事なんかで家が燃えて逃げ遅れた人がいるやろ?でも死んで綺麗に骨になったなんて聞いた事あるか?ないやろ?家一軒燃えるくらいの火でも人間は骨にはならんのや。ただ焼け焦げた死体が出来上がるだけや。そやからワシが思うに骨にするにはより良い燃やし方をせんと駄目なんやと思うで。ワシは知らんがの」
そういい拳法ババアは沢山の前歯が欠けた口を開け、ゲラゲラと笑った。
そんな拳法ババアの言葉で弓弦は何となくだが、燃やし方をイメージ出来た。
骨だけにするには火葬場のように死骸に火をつけた後、火ごと密閉してしまえばええんやないかと。
そこまではええ。
けど、強い火力の火を絶やさんようにする方法がいまいちよくわからなかった。
例えば枯葉を使ったとしてもそれが燃えてしまったら、火も小さくなるし、そうなったら火はその内消えてしまう。
死体を骨にするまで焼き切る事は出来ない。
火を絶やさずずっと燃え続けさせないとなると火以外の何かが必要になるのか?と拳法ババアの話を聞きながら弓弦は思った。
ライターの火の力をより強くする為の何かがなければ、きっと人間の死体は火葬された後をのような綺麗な骨にする事は叶わない気がした。
河原に近づくと、羽音がより激しく鳴り始めた。
弓弦は苦笑いを浮かべた。
「ほんまに諦めの悪い奴やのう」
再び指で耳の穴をほじりながら弓弦は羽音を出す奴に話しかけるように囁いた。
「まだ、お前の事をワシが怖がっとると思っとるんか?」
弓弦はフンっと鼻を鳴らした。
だが片手で掴んでいるハンドルは強く握られていた。
弓弦は時折現れては、このように嫌がらせをして来る、羽音を主が、誰なのかわかっていた。
アイツ以外にいなかった。




