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爆ぜる  作者: 変汁
107/107

エピローグ ①⓪⑥

[血の雫]

   

            冴木守親


絞められるモノをみた それはとても美しく


暗黒に包まれ 真っ赤な血を流す


涙し 歓喜し 


新たな自分が産み落とされる


絞められるモノは 命を切り裂き


行きつく先は 平穏な地


羽衣は血に染まり、美しい羽根は


広がる時を待っている


絞められるモノは 血の中で 溺れていく


そのモノは もう1人の俺だった


俺は迫り上がる吐き気を 頭を振り乱しながら


堪えている


失われるのは 己の身体か それとも命か


遥か彼方の闇星は 全てを見透かしていた


悪いのは 憎んだ俺か それとも焼かれた貴方か


闇月が欠けていく 


眼から滴り落ちる生命の血


その冷ややかさに


憎悪の涙が溢れた。


闇月のある世界から見れば 俺など


あぁ 口が裂けても言ってはならぬものが


このような世界にあったとは


何処かで 俺を笑うモノがいた。


残骸


死骸


腐臭


飛び出した内蔵


俺にたかる蝿


身体を蝕む無数の蛆虫


風に晒され風化する命


爪がパキリと剥がれた


遠くの国で人が死ぬ


悲痛な叫びを耳にする


国境は必要ない


打ちひしがれ 両手を天に向け掲げ


頬を伝う涙は  枯れ果て


もはや生き抜く意味さえ見失った


なのに神は天から舞い降りる事も


その存在を示す事もなかった


雲ひとつない澄み切った闇夜に


何処からか1発の銃声がした


俺の頭は吹き飛び脳漿がバラバラに散らばった。


こんな命を欲しがって何になる?


こんな命を欲しがって何になる?


こんな命を欲しがって何になる?


そこにいるのは誰だ?


そこにいるのは誰だ?


そこにいるのは誰だ?


俺は俺を憎んでいる


俺は俺を嫌っている


俺はそこにいて


俺を見る俺は


俺は俺を憎んでいる


俺は俺を嫌っている



この手紙が家に届いたのは6年生の始業式の日だった。

冴木守親が新たな病院に移送されたと担任が話した後、弓弦は見舞いに行きたいと思い、先生にどこの病院か尋ねたが先生も聞かされていないという事だった。


どうやら家族の意向で学校関係者には教えたくないらしい。


それならそれで仕方ないのだけど、弓弦は冴木に一言謝っておきたかったのだ。


だがそれも叶わない事で少し落ち込んでいた時に、この手紙が送られて来たのだった。


差出人の所には冴木の名前以外、住所等は書かれていなかった。


だから返事を書く事も出来なかった。

いや、書くつもり等最初からなかった。


より遠くに、自分の知らない土地に冴木が行った事が弓弦の気持ちを楽にした。


向こうから連絡がなかったとは言え、あのクリスマスイブの日に拉致されていたのだとしたら、弓弦が約束を守って廃屋へ向かっていれば、冴木もその他の奴等の命を救ってやれたかのかも知れないのだ。


だからその事を謝りたかった。手紙を読む前まではそう思っていた。


けどこの詩を読んだ後、最後の文で堀籠朱音が言った事を思い出す事が出来た。


1番嫌っている事があるんじゃない?


そうだ。あった。1番嫌いなのは自分自身だった。

よく見せようとする自分を弓弦は憎んでいた。 


冴木への謝罪も自分の為だった。本気で悪いなんてこれっぽっちも思っていなかった。


それを冴木守親に詩という形を使い見透かされたようで、正直、腹が立った。


けどきっと冴木は自分の事を言っているのだと弓弦は思った。


冴木とは実は似たもの同士だったのかも知れない。


あんな奴と一緒にするなという自分がいる。

そうだと思う自分がいる。


弓弦はそいつを殺してやりたかった。

それが出来なければやがてヒヨリや雷鳥を傷つけてしまうかも知れない。


自分をよく見せようとし過ぎて本当の自分がわからなくなるかも知れない。


怖いと思った。女王蜂にした行為等は最初から自分がしたかった事だ。


よく見せようとした訳ではないが、ただその形が違うだけで、本質は同じことだった。


弓弦は机の引き出しの奥からライターを取り出した。

そして着ていた衣服を脱ぎ裸になった。


そしてライターを点火させ、自ら心臓部へその炎を押し付けた。皮膚が焼けた爛れ痛みが頭を貫いた。


眼球が裏返しになりそうな程の激しく蠢いた。


死ぬんだと弓弦は思った。


まるで自分が焼き殺した女王蜂やその他の生き物のように四肢が折れ曲がり爆ぜるような痛みが弓弦の内部で弾け飛んだ。


俺は俺を殺し、俺は新たな本当の俺を産み落とす


弓弦の眼から涙が溢れ出した。


痛みからか、それとも産み落とされた新たな命への感謝から流れた涙なのか、


まだ幼い弓弦にわかる筈もなかった。


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