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断章二

 六月二十五日、午前二時過ぎ。

 私たち三人は、真夜中の山道を登っていた。

 風は生ぬるい。草木や土は、ぷぅんと強く香る。近くの茂みでガサゴソ音がするたび、私は身を竦めた。

 また、昨日までの長雨のため、山道はずいぶんとじるい(、、、)。ぬかるみに足を取られ、何度もつんのめりそうになる。

 それでも私たちは心許ない明かりを頼りに、暗い山道を歩きつづけた。

 先頭を行くミカの息も、私同様に荒くなっている。あの真新しかった靴は、とっくに泥だらけだろう。

「あと……どれくらい?」

 そう訊ねると彼女は少し間を置き、硬い声で「もう少し」と答えた。一時間ほど前と同じセリフ。それでも私は、迷いなく進むミカを信じ、ついていく以外なかった。

 彼の方はといえば。もう、なにも口にしない。ずっと無言を貫いている。私とミカの選択に身を委ねている。

「もう少し」

 再びミカが繰り返した。山道に喘ぐ私や、彼に向かってというよりは、自分自身に言い聞かせているような声音だった。

「もう少しだから」

 私たちは三人で、ともに登っていた。

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