3 悪役令嬢×3は無理だって……
競歩の如きスピードで廊下をひたすら歩いていると、後ろから声が聞こえた。
「ジェイド待って。置いて行くな!! それにお前が辞める必要はないだろう?」
私はランベール殿下の声が聞こえたので振り返ったが足を止めるつもりはなかった。
どうやらランベール殿下も逃げてきたようだ。
「どうみても私は場違いですよ!!」
私は歩きながら声を上げた。 するとランベール殿下もまた声を上げた。
「俺だって場違いだろうが!! というか、あんな怖い場所に俺一人で置いて行くな、薄情者!!」
「それはすみません。ですが、誰か一人いらないと言われましたので、仕方なくです!! 公爵家に睨まれたら生きていけません!!」
私が後ろを向きながらランベール殿下に声をかけると、誰かに両肩を掴まれて歩くのを止められた。
ふと前を見ると、アルフレッド殿下が私の両腕を掴んで立っていた。
「ジェイド、後ろを見ながら歩いていたら危ないぞ?」
「アルフレッド殿下……」
(しまった……まさか、アルフレッド殿下がここにいるなんて!!)
私はアルフレッド殿下から逃れるために自然に離れようとした。するとランベール殿下の声が聞こえた。
「フレッド、そいつを逃がすな!! 自分だけ魔窟から逃げだろうとしていた」
(ランベール殿下、その言い方危険だから~~!!)
私がアルフレッド殿下に掴まれたまま、ランベール殿下を見ているとアルフレッド殿下の低い声が聞こえた。
「……そうなのか、ジェイド?」
私がアルフレッド殿下の顔を見ると、アルフレッド殿下が正面から捕らえるように確保された。
かなり力が入っている……
「うう……アルフレッド殿下……お許しを……公爵家を敵に回したら生きていけないのです……」
「私が守るから問題ない」
そして追いついてきたランベール殿下が、私をアルフレッド殿下の腕の中から救出してくれたかのと思うと、離さないというように手を握られた。
「ふ……これで逃がさない」
ランベール殿下に手を繋がれたまま顔の位置まで手を持ち上げられ、圧のある笑顔を向けられ、一歩後ろに下がると、アルフレッド殿下に肩を掴まれて、顔を覗き込まれた。
「まさか、ジェイド。生徒会を断ったりしないよな? 私の頼み、聞いてくれるよな?」
(ひぇ~~~!! 美形×2……いや、美形²の睨み怖っ!!)
私は二人に至近距離で見下ろされて慌てて声を上げた。
「アルフレッド殿下。なんでも生徒会役員は5人だそうなのです。他にご令嬢が3人いらっしゃいますので私は入れません。定員オーバーです」
アルフレッド殿下は、いつも城で私たちだけに見せる面倒そうな態度で言った。
「なんだ、それは? とにかくジェイドは辞めるな」
私はこんなところでアルフレッド殿下が素を出してもいいの不安になったが、とにかく逃げるために全力を尽くすことにした。
「そうはいきませんよ……皆様、経験者なのでしょう? アルフレッド殿下とランベール殿下を支えてくれる方々ですよ? どう考えても新参の私が辞退するのが得策ですよ……」
アルフレッド殿下は納得しない顔をしたまま言った。
「とにかく、ジェイドも一緒に来い!! 逃がさないし、私がなんとかする」
結局私は首の後ろを掴まれるようにアルフレッド殿下に捕まえられて、ランベール殿下にきつく手を繋がれて、生徒会室に再び戻ることになったのだった。
◇
三人で魔窟……ではなく、生徒会室に戻るとアルフレッド殿下が、ノックの後に爽やかな笑顔で扉を開けた。
そしてアルフレッド殿下が部屋に入ると、先ほどまでとは声の高さや表情まで変わったジュリアが声を上げた。
「これはアルフレッド殿下お待ちしていましたわ。お久しぶりですね、殿下。確か最後にお会いしたのはゲイール様の夜会でしたわよね?」
アルフレッド殿下が近づいてジュリアに微笑みかけた。
するとジュリアだけでではなく、他の令嬢も顔を赤くした。
アルフレッド殿下は表情を一切変えずに対応していた。
「エルスト嬢、お久しぶりです。ええ、そうですね……」
アルフレッド殿下は、当たり障りのないあいさつをすると他の二人の令嬢を見た。
「ああ、こちらが現生徒会役員の方々ですね。ヴァルト嬢に、ベルク嬢もお久しぶりですね」
アルフレッド殿下に声をかけられて、他の二人の目がとろけるようになる。
「お久しぶりですわ、アルフレッド殿下!」
「覚えていて下さったなんて光栄ですわ」
(凄い……アルフレッド殿下……一瞬でこの場を自分のフィールドにした……)
完全にアウェースタジアムだった場所を一瞬でホームに変えてしまった……
恐るべきコミュニケーション力……
いや、これは彼の人間力とでもいうのだろうか?
私が心底感心していると、アルフレッドはさも当たり前のように言った。
「規約によると生徒会役員の数に規定はなく、その年の生徒会長の采配により人数が決まるということですよね? 多い時は8名で、少ない時は2名だったとか……」
(え? そうなんだ……人数決まっているわけではないんだ……)
先ほどのジュリアの話では5人が決まりなのかと思ったがそうではないようだった。
上に立つ者が生徒会役員の数を決める仕組みのようだった。
ランベール殿下が声を上げた。
「そうなのか? 俺はそちらの令嬢に生徒会の役員は5名だと決まっていると聞いたが……」
ジュリアはランベール殿下の視線を受けて慌てて声を上げた。
「え、ええ。ですが、ここ数年は5名で運営しておりますし、こちらの皆様はすでに生徒会を経験されている経験者ですので、お忙しいアルフレッド殿下とランベール殿下を十分に支えていけると思いますわ」
アルフレッド殿下はにっこりと微笑むとまさに王子様という表情で言った。
「そうですか、皆様ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします」
ジュリアが一瞬ニヤリと笑ったのを私は見逃さなかった。
(あ、なんだ……やっぱり5人で生徒会を運営するのか。それじゃあ、私はいらない……かな?)
私はなぜここに連れて来られたの疑問に思っていると、ジュリアが3オクターブくらい高い声で言った。
「それでは、アルフレッド殿下、よろしくお願いいたしますわ」
アルフレッド殿下は微笑みを保ったまま言った。
「ええ。皆様よろしくお願いいたします。では今年は、私とランベールと、ここにいるジェイド。そして皆様。6名で今年は生徒会を運営していきましょう」
アルフレッド殿下の言葉に令嬢たちだけではなく、私も驚いていた。
(え? 6人?? 今の会話の流れって、これまで通り5人で運営するって意味じゃないの??)
「え? 6名……ですか?」
ジュリアがアルフレッド殿下に確認するように尋ねた。
そんなジュリアにアルフレッド殿下は笑顔で答えた。
「はい。6名です」
(え……嘘……私、今回、こんな早くにしかも悪役令嬢3人と一緒に生徒会メンバーになっちゃんだけど……!? BADエンド回避できるかな?)
内心怖すぎる状況に震えていると、アルフレッド殿下は有無を言わさない笑顔で言った。
「何か問題でも?」
ジュリアはアルフレッド殿下の笑顔を見てあっさりと引いた。
「いえ……ありませんわ」
「それでは内容説明をお願いします」
アルフレッド殿下の言葉にジュリアが声を上げた。
「かしこまりました。殿下」
こうして私は結局生徒会に入ることになったのだった。




