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令嬢辞めたら王子に親友認定  作者: たぬきち25番
第1章 幼少期を変える!!

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9 優秀な王子様



「いや、アルフレッド殿下、ランベール殿下……止めましょうよ……危険ですよ」


 まさかランベール殿下まで了承すると思わず、私は二人に向かって声を上げた。すると、アルフレッド殿下がキリリとした王族の顔を作りながら言った。


「ジェイド。危険があるというのも理解している。だが、上に立つ者として市井の人々の普段の様子を知っておきたいのだ。私が行くと、皆かしこまって普段の様子が見れない」


 アルフレッド殿下はゲーム本編で町の人々を攫ったり、脅したりする窃盗団を壊滅させるために動いていた。

 上に立つ人が庶民の暮らしを知っていてくれたら、どれほど民は心強いだろうか……


「そのお心は素晴らしいと思いますが……」


 アルフレッド殿下の気持ちはわかるが、王族がお忍びで城下へ視察?


「学院に通うようになれば、顔が知れ渡ってしまう。まだ顔の知られていないうちに真の姿を見ておきたい」


 そう言われて私は前世で見た時代劇を思い出した。

 将軍様が町人に扮して悪を正す……

 

(う~~ん。偉い人の間では……よくあることなのかも?)


 この時の私は、時代劇の将軍様はフィクションなのだということをすっかり失念していた。

 心が傾きかけた頃、ランベール殿下に最後にダメ押しされた。


「ジェイド、無駄だ。俺たちが否だと言っても、フレッドは一人で行くと思うぞ? ああ見えて結構頑固だからな」


 アルフレッド殿下が一人で町へ?


(うわ~~行きそう。アルフレッド殿下、よくわからない行動力があるからな……その方が、問題かも……)


 私もアルフレッド殿下とはすでに二年も一緒にいるのだ。

 この人は、やると決めたらやる人だ……

 それなら側に居た方がいいのかもしれない。


「わかりました……お供します……」


 結局、私たちはアルフレッド殿下の熱意に負けて、お忍び視察にお付き合いすることになった。

 私が答えると、アルフレッド殿下が立ち上がりながら言った。


「よし、では行くぞ」


「は?」


「待て、フレッド。これから行くのか?」


 ランベール殿下も慌てて声を上げた。そんなランベール殿下に向かってアルフレッド殿下が声を上げた。


「なんのために、今日、ジェイドを語学の授業につき合わせたと思っている。今日は珍しく時間があるし、これから3人で歓談をする予定になっているだろう? 見張りも外にしかいない。絶好の機会だ。これから私の部屋に行こう」


(アルフレッド殿下、計画的犯行だった!!)


 どうやら私が語学の授業に呼ばれた真の理由は、この町への潜入だったようだ。


(おかしいと思ったんだよ……どうして語学って……あ~~違和感はあったのに……回避出来なかった!!)


 今更、そんなことを思ってもすでに後の祭りだ。 

 綿密な計画を立てて私を呼び出し、行く気満々のアルフレッドを止められる人はいない。

 私とランベール殿下は二人で顔を見合わせて苦笑すると、アルフレッド殿下の部屋に向かった。

 アルフレッド殿下の部屋に到着すると、アルフレッド殿下は本棚の中から数冊の本に擬態させた箱を取り出した。


「ここに変装用の服がある。ランベールはこれで、ジェイドはこれだ」


 幸い、今の服の上から羽織れそうな服だったので、私は頭から服を被った。

 そしてアルフレッド殿下とランベール殿下も町人の服だという服に着替えた。


「二人共着替えたな。では、行くぞ」


 アルフレッド殿下は、本棚を横に押した。

 すると本棚の後ろから隠し通路が出て来た。


「え!? こんなの私に教えたらダメですよ!!」


 私は慌てて声を上げた。


「静かに!! ジェイドなら問題ないと判断した。では行くぞ」


 アルフレッド殿下は、ランプを持つと隠し通路に入って行った。


「ええ……」


 私がどうしたらいいのかわからずにいると、ランベール殿下が肩に手を置いた。


「私もジェイドなら信頼できると思っている。フレッドを見失う前に行くぞ」


「は、はい!!」


 私たちは隠し通路の中に入ると、内側から扉を閉めてランプの光を頼りに真っ暗な隠し通路の中を進んだ。

 オレンジ色の蝋燭の光がやけに明るく感じた。

 カツカツと歩く度にやけに音が辺りに響く。

 階段の段差が均一ではなく歩きにくい。


「……足元に気を付けろ」


 ランベール殿下が注意を促したので私も素直に「はい」と答えた。


 始めは細い階段だったが、少し進むと少しだけ広い道になった。

 三人で横一列で進めるくらい広さがある。

 私たちはアルフレッド殿下を真ん中にして通路を進んだ。


(うわ……ここって絶対私が知ったらダメな道だよね……)


 途中で細い階段と合流するので、もしかしたら国王陛下の寝室とか、王太子殿下の寝室などに繋がっているのかもしれないと思うと……胃が痛くなった。


「ジェイド、怖いのか?」


 ランベール殿下が心配そうに声をかけてくれたが、私が怖いのはこの状況ではなく、この道を知ってしまったということだ。

 

「そうですね……怖いです(ここの存在を知ってしまったことが……)」


 私が素直に怖いと言うと、アルフレッド殿下が私の肩に腕を回しながら言った。


「ジェイドは怖がりだったんだな~~大丈夫。問題ない。何度か探検したことがあるから」


 アルフレッド殿下の言葉にランベール殿下がぎょっとしてアルフレッド殿下を見ながら声を上げた。


「何度か来ているのか……今度からは絶対誘え。あと、こんなところでそんなにジェイドにくっつくな。つまずくぞ……」


 アルフレッド殿下は、素直に私の肩から腕を下ろすと困ったように言った。


「あ、ああ。だが、大抵は夜中に探検するから誘えなかったんだ」


(夜中に、こんなところを一人で探検!?)


 私はアルフレッド殿下の無謀な行動力に思わず声を上げた。


「アルフレッド殿下、危ないです。本気で止めてくださ~~い!!」


 ランベール殿下も真剣な顔で頷いた。


「本当に危ない!! フレッドは王族なのだぞ? もしも何かあってからでは遅いだろう?」


 アルフレッド殿下はまるで犬が耳と尻尾をしゅんと下げたように反省しながら「すまない……今回町に行ったらもう《《一人では》》行かない」と言ったのだった。


(一人では?)


「一人では?」


 私とランベール殿下の心が一つになった瞬間だった……

 アルフレッド殿下は、「一人では」と言って口角を上げると前を指さした。

 壁にランプを持っているアルフレッド殿下の指を伸ばした影が大きくうつる。


「あ、そろそろ出口だぞ」


 そしてアルフレッド殿下に言われて到着したのは城の外れだった。

 さらに私たちの通ってきた場所を確認すると古井戸があった。

 どうやら、あの隠し通路は古井戸に繋がっていたようだった。

 ランベール殿下が辺りを見まわしながら言った。


「なるほど……井戸か……井戸の中に入ろうなどいう物はいないから……考えたな……それにここからなら、町外れまですぐだ」


 アルフレッド殿下が頷きながら言った。


「ああ。先日、兄上と一緒に警備計画を確認した時に、この先に見張りの死角になる場所があることがわかった。行こう!!」


 アルフレッド殿下は恐るべきことに見張りの死角まで把握していた。


(アルフレッド殿下、本当に優秀だな!!)


 私はアルフレッド殿下の凄すぎる行動力に感動さえも覚えたのだった。


 


 





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