【悲報】攻略は絶望的
学園の廊下を歩いていると、前から一人の女子生徒がぶつかってきた。
「あ、ごめんなさい……」
「キャ――――!!」
私が彼女に謝ると、ぶつかってきた女子生徒の甲高い叫び声が聞こえ、その後すぐにカランと金属音が聞こえた。
「……え?」
何が起こったのかすぐには把握できなかった。
ざわざわと人の声が聞こえて、気が付くと私とぶつかってきた女子生徒の制服は真っ赤に染まっており、目の前には腕から血を流す令嬢の姿。そしてすぐ横の床にはナイフが落ちていた。
「大丈夫ですか!?」
私がぶつかってきた令嬢に手を差し出した時。
「どうした?」
「何があった??」
どうやらすぐ近くに多くの男子生徒がいたようで、私たちの元に走って来た。
その中には私の婚約者のアルフレッド殿下もいらっしゃった。
すると女子生徒がアルフレッド様に向かって衝撃的なことを……言った。
「ブランカ様が、突然、私を斬りつけてきたのです!!」
「……え?」
私は全く身に覚えのない出来事に身体を強張らせた。
その間に私にぶつかって来た令嬢は、アルフレッド殿下に泣きながら擦り寄っていた。
アルフレッド殿下は、大きな声を上げた。
「これはどういうことだ、ブランカ!! 私の婚約者でありながらこのようなこと!!」
「誤解です!! 私はその令嬢を斬りつけてなど……」
私が声を上げると、殿下と一緒に駆けつけた男子生徒が私の言葉を遮って、床に落ちていたナイフを拾い上げながら言った。
「殿下!! ここにリンハール家の紋章が入った短刀が落ちています!!」
私は思わず声を上げた。
「まさか!!」
どうしてこんなところに私の家の紋章の入った短剣があるのか理解できずに困惑していると、心底落胆したといった表情でアルフレッド殿下が口を開いた。
「ブランカ……話は……牢の中で聞く」
そして私は牢獄の中でまともに話を聞いてもらえないまま……処刑が決まった。
どうしてこんなことになってしまったのか、全くわからない。
これまでずっと必死に努力してきたのに、こんなことで全てが奪われるなんて!!
……運命とは皮肉なものだ。
(……さようなら……アルフレッド殿下……)
全てを失って絶望した私は目を閉じた。
【BAD END】
◇
「嘘でしょう……? またBADエンド……」
BADエンドの時に流れる音楽を聞きながら、私は唖然とするしかなかった。
脳内に事前に聞いていたゲーム購入者の感想が浮かんで来る。
――いや、いくらなんでもBADエンド多すぎでしょう⁉
――これ……happyエンド本当にあるの??
――難易度が高すぎて挫折。ここまでは求めてないよ……
乙女ゲームを購入する前に攻略が難しいとは聞いていた。
聞いていたが……さすがに、ここまでだとは思わなかった。
なんとこの鬼畜ゲーム。
happyエンドは1つなのに、BADエンドは数種類はあるというバッドエンド好き(?)のために作られたような究極の鬱ゲームだった。
だが……絵師の方はもちろん声優の方々もかなり豪華!!
――難易度が高いと言っても、大丈夫でしょう?
好きな絵で、豪華な声優さんたちを堪能したい、そんな軽い気持ちで購入を決めたが、もう3日も仕事が終わった後の時間を全て注ぎ込んでいるにも関わらず、まだ一人もhappyエンドを見れていない。
「これ……全員分のhappyエンド見れるかな……」
私はすでにこのゲームの難易度の高さに心が折れそうになっていたのだった。