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04 聖地潜入開始

 

「それじゃあ……この場の返事になるけど、採用です!」

 あれこれ考えている暇もなく即採用されていた。ガランとしたスタッフルームで店長とふたり。店長の益田さんは40代くらいの朗らかな男性だった。


「この春、就職や進学でごっそり辞めちゃって。応募してくれて本当に嬉しいよ!本当に人が足りないから早速だけど初出勤日を決めてしまってもいいかな?」

 シフト表とカレンダーを引き出しから取り出す店長。こちらとしても助かる話だ、私も早ければ早いほうがいい。


「明日からで大丈夫です。」

「本当!?バイト初めてだよね。ゆっくり覚えてくれたらいいから。とりあえず明日出勤してもらって、そのときに今後のシフトは決めていこう。希望だけ出してもらっていいかな?」

 本当にトントン拍子で決まるものだ。どうやってつむぎを勧誘するかまだ定まっていないのは頭が痛いけれど。


「あと明日提出してもらいたい書類だけど、未成年だから親御さんのサインも必要で……」

 店長が色々な書類を渡してくれる。

 まだ高校にも馴染めていない段階で初めてのバイトなんて焦りすぎたかもしれない。人と接するのが苦手なのに接客業なんてできるのだろうか!?どう考えても暴走しすぎだ。


「じゃあ次は制服を合わせてみようか。シャツとエプロンはこちらから貸出で、ズボンは手持ちのデニムで大丈夫です。」

 店長の説明にうなずくのに精一杯で何も考えられる余裕がない。働くのは人生初なのだ。どうにでもなれ!と私はもう流れに身を任せることにした。



 ・・



 一通りの説明が済み、貸出の制服と契約書類等を受け取ると、

「そういえば湯岡さんはA高校だよね?A高校の子は何人かいるから安心してね。」

 シフト表の中から数人指指す。その中に新の名前を発見する。体温があがった気がする。


「一年生はいたりしますか?」ショートカットの子が既にバイトを始めていないだろうかと希望を込めて聞いてみる。

「いや…今週入学式だったんでしょ?まだ一年生はいないね。湯岡さんは行動が早いね。」

それは完全にそう。どう考えても気が焦りすぎた。そしてショートカットの子にすぐには頼れなさそうだ。


「ええと…前からこのカフェで働くの憧れてて……。」

 昨日が初来店ではあったけど嘘ではない。「マーブルキス」内でつむぎと新の恋はここで動いていたのだ、言うならば聖地である。憧れなのは本当だ。


「そうなんだ、ありがとう!さっきも言ったけど今バイトが足りていなくて。もし湯岡さんのまわりでバイトしたい子がいたら誘ってほしいな。今は入学したてで忙しいだろうし、すぐじゃなくてもいいから……ほら、A高校からうちは近いから。」

 店長の提案はまさに渡りに船である。つむぎの勧誘方法は全然想像つかないがバイト勧誘の建前はとりあえず出来たわけだ。

 お手洗いに貼ってあったバイト募集の紙と同じものを数枚渡してくれる、本当に助かる。


 全ての話が終わってスタッフルームから店内に移動する。

「お店の説明やメンバーの紹介も明日するからね。」

 営業時間内で忙しくスタッフが働いている、挨拶は今日は難しそうだ。



 その中でお客さんから注文を受けている新を発見した。紺やつむぎが少女漫画の登場人物と言われてもそこまでピンとこないけど、新は推しキャラなだけあって現実味がない。本当に生きている新がそこにいるんだ。


 新のために頑張るからね。絶対につむぎと幸せにしてあげるからね。と心のなかで誓いを立てたのだった。

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