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03 ヒロインと当て馬の出会いを早めよう

 というわけで、遠くない未来に新とつむぎが働くカフェ・ゼロファに、翌日の放課後にやってきた。

 どうやってつむぎを誘うか、肝心のところは決まっていないけど、新がもう働いているかどうかをチェックしにきた。新がいないのに焦っても仕方ない。というのは半分口実で、実のところ私が生の新を見たかった。



「今日なんも予定なかったの?」

「うん」

 つむぎと紺をひきさく作戦の第一歩と知らずに、一緒にやってきた紺もメニューを眺めてる。女子の誘いを断りまくる紺だが、カフェを餌におびきよせたらホイホイついていくのではないか?というくらい甘いものが大好きだ。



「いちごタルト、甘夏アルト、カフェラテとレモンティーください。」

 紺が代表で注文をしてくれて

「かしこまりました。飲み物はアイス、ホットどちらにしますか?」と注文をうけてくれたのは、新だった……!



「マーブルキス」の実写化俳優さんとは少し顔立ちが違うものの、特徴は同じだった。むしろ俳優さんよりも好みかもしれない。

 新を一目見ようと訪れたのだが、こんなに早く出会えるだなんて!

 その後ケーキを運んでくれた新の人懐こい笑顔に、新は現実なんだとドキドキを鎮めるのに苦労した。


 ひとまず新が働いていることは確認できた。あとはつむぎをどうやって働かせるか…。


「おいしい」

 紺はすごく嬉しそう。ふだん表情をあまり変えない紺からハッピーが伝わってくる。よほど美味しかったんだろう。

「ほんとだ、おいしい」

 寡黙な紺とあまりおしゃべりでない私だと会話は特に弾まないので、遠慮なく作戦会議を脳内で続けた。



 店内は広くフロアに出ている店員さんは平日でも4人はいる。人員は多く必要そうだ。

 先程お手洗いにアルバイト募集の紙が貼ってあるのを見かけた。詳しくはHPへ、とのことでQRコードを撮影しておいたのだ。

 リンク先に飛んでみると、やはり募集していた。



「バイトすんの?」紺がスマホを覗いてくる。

「高校生なったし考えてる」と適当に答えてみるが、たしかに...ショートカットの子がバイトを始めるのを待つより、私がつむぎを誘う方が早いんじゃないか…?



「しちゃおっかなー」

「いいと思う」

 その場のノリと勢いもあり、私はそのまま問い合わせフォームからバイト申し込みをしてみたのだった。

 つむぎが紺に恋に落ちるまでに新と出会わせる作戦、最初の一歩だ!



 ・・・



 その日の夜には連絡があり、翌日面接となった。履歴書を慌てて書きながら私は既に後悔をしていた。

 私がつむぎを誘う方が早いと思ったけど、肝心なことが抜けていた。私つむぎと接点無いんだけど!?!


 あの場ではいい案だと思ったけど、どうしてそんなこと思ってしまったのか。私がつむぎやお姉ちゃんのような性格ならすぐに友達になれるのかもしれない。

 つむぎが紺に恋に落ちるまでに、知り合い程度ではなく、バイトに誘えるほどの友達になれるだろうか?よっぽどショートカットの子が働き始めるほうが早いかもしれない。



 原作でもつむぎと冴は全く仲良くない、完全なライバルボジションだ。悪役令嬢さながら嫌がらせをするようなことはしなくても冷ややかな態度は崩さないし、冴が失恋したあとでも、紺と沙良が結ばれればいいと思っているので関係がよくなることもない。



 今の私なら、つむぎとうまくやれるかもしれない。だって私はヒロインのつむぎも大好きだったから。私から歩み寄ればつむぎは拒絶することもないだろう。



 作戦:紺に恋に落ちるまでに新と出会わせる

 └→ つむぎに早くバイトをさせる

  └→ 冴がつむぎと仲良くなり勧誘!


 と作戦ノートに書きこんで、ふと気づいた。



 私って、つむぎと仲良くなってもいいの……!?!?



 私は序盤の雑魚敵ではあるけど、それなりに時間稼ぎはしたはずだ。巻数でいうと3巻くらいまでは、つむぎの恋の芽生えと、冴との対戦だ。

 紺に恋をしたつむぎはまず、冴と紺が付き合ってると思い込み恋を諦めようとする、結局付き合っていないことがわかり安堵、でも紺に想い人がいることに気づき、それは冴なのではないかと悩んでみたり。

 そのうちに紺が冴ではなく沙良に長年片思いをしていることが判明するのだが、つむぎはしなくてもいい心配をしばらくは続けるわけだ。

 まっすぐ紺を好きだと認めて、紺への想いから抜け出せなくなるのは3巻くらいなわけで、それまでに新と出会うことができれば……。



 私の存在が時間稼ぎになるのであれば、悪役としての役割を全うしなくてはいけない。

 でも紺を気になる前に新に出会いさえすれば……

 でも、それまでにつむぎと仲良くなれるのだろうか……!?



 どちらを優先していいかわからず、気づけば履歴書を放り出してグルグル悩み眠れない夜を過ごすことになるのだった。

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