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ラプンツェル、空をゆく

作者: 誘宵空蘇



高い塔のてっぺんの部屋。ラプンツェルと呼ばれる少女は、そこで何不自由なく育っていた。




ある日いつものように窓の外を眺めていると、一人の青年がやっていた。ラプンツェルは驚き、言葉をなくす。

今までもたくさんの男たちがラプンツェルの元にやって来た。その美しさを一目見ようと、それこそ王様まで。ラプンツェルは生まれながらに美しく、人ばかりならず動植物にまで愛されているのだ。ラプンツェルが居ると植物が異常繁殖したり、たくさんの人がひっきりなしにやって来たりして大変だったので困った伯母はラプンツェルを塔に幽閉した。今となっては、ラプンツェルとの面会料を財政源としているほどだ。両親はまだラプンツェルが小さい頃に亡くなってしまった。

さて、ラプンツェルが驚いたのは、その青年があまりに美しかったからではない。実際彼はそこそこの外見を持っていたのだが、これなら昨日会った侯爵の方が美形だ。


 「君がラプンツェル?」


フワフワと、巨大な羽根ような物の上に立つ青年が小首を傾げる。ラプンツェルは窓枠に両肘をついたまま、ポカンと口を開けていた。


 「初めまして、僕は魔法使い。魔法の力の代償に名前は盗られちゃったから…そうだね、何て呼びたい?」

 「…侵入者」


少しずつ状況を理解し始めたラプンツェルが答えると、魔法使いはこける振りをする。地上から何メートルもあるここで転んで落ちたら、彼はぐしゃぐしゃになるのだろう、と頭の片隅でラプンツェルは考えた。


 「それは嫌だなぁ」

 「だって、てゆか貴方、何なのよ」

 「魔法使いって言ったでしょ?」

 「魔法使いなんて実在しないわ。そんなの、童話の中の話よ」

 「ラプンツェルだって童話の中の人でしょ?」


魔法使いの言葉にラプンツェルは黙り込む。そして、拗ねたような声で言った。


 「皆がラプンツェルと呼ぶだけよ」

 「本当の名前は?」


危うく口にしそうになったが、伯母に言ってはならないとキツく言いつけられているのを思い出し、ラプンツェルは鼻で笑う。


 「怪しい人には教えない。貴方だって、名前教えてくれないじゃないの」

 「僕は名前を盗られたんだってば」


困ったように言う魔法使いに、ラプンツェルは冷たく「誰に」と聞いた。魔法使いは青い天空を指差し、


 「神様に」

 「神様なんて居ないわ」

 「いるよ。凄く意地悪だけど。神様にお願いして、僕は魔法使いになったんだ」

 「何のために」


初めて魔法使いが口を閉ざした。言葉を探すように虚空に視線を泳がせ、顔を赤くして決意したように小さな声で、告げる。


 「君に会うために」


ラプンツェルは瞬きを繰り返し、必死に頭を動かした。しかし魔法使いの言っている意味が分からない。


 「君は覚えてないだろうけど、僕は昔、庭で遊んでいる君を見たんだ。君は傷ついた僕を見つけると優しく手当てをしてくれて…」

 「ち、ちょっと待って!」


慌てて声をあげたラプンツェルに従い、魔法使いは言葉を切る。


 「貴方いくつ?私と変わらないわよね?」

 「これは呪いの副作用だよ。僕はもう何年もこの姿のままさ」

 「…私を見かけたのが先?魔法使いになったのが先?」

 「君を守りたくて、魔法使いになった」


名前と、人としての老いを犠牲にして。


 「あの日、僕は喧嘩して傷ついててね。君の家の敷地と知らずに入り込んで、そのまま倒れちゃったんだ。君が手当てしてくれなかったら死んでたよ」


ラプンツェルが外を歩いていられたのは、両親が死んでしまうまでだ。だとすると、魔法使いが言っているのはまだ歩き始めて間もない頃のことだろう。

ほがらかに命の危機を語る魔法使いに、ラプンツェルは呆然とするしかない。


 「で、ラプンツェル。僕は神に魔法の力と引き換えに名を奪われた。だから、君が名付けて?そしたらここから連れ出してあげるよ」

 「連れ出して、なんて言ってないじゃない」

 「飽きたでしょ?この不自由な生活」


片目をつむる魔法使いを、ラプンツェルは声をあげて笑った。確かにその通りだ。本当は、青い空が恋しくて仕方なかった。泥だらけになるまで、大地を走り回りたい。


 「でも、私が一緒だと苦労するわよ?」

 「大丈夫。僕は魔法使いだからね」


両手を広げてくるり、魔法使いは回る。


 「さぁ、君の名前を教えて。僕に名を与えて?」


差し出された左手を、躊躇う素振りを見せたラプンツェルが掴んだ。気がつけば、羽根の上に引き上げられている。


 「私はラズベリー。そうね、貴方は…ウィザルでどうかしら?」

 「ウィザル…うん、良い名前だ」


魔法使い改め、ウィザルは極上の笑みを浮かべた。ラズベリーはなぜか赤くなった顔を隠すように、青く高い空を見上げる。


 「行こうか、ラズベリー」

 「えぇ。退屈させたら許さないわよ?」

 「尽力するよ」


羽根が中空を滑るように走り出す。遥か下方の地上から、伯母の怒声が聞こえたが気にしなかった。






こうして、ラプンツェルと呼ばれた美しい少女は、少し頼りない魔法使いと共に自由を得たのでした。

めでたしめでたし。



すみません完璧な思い付きでやらかしました。

一時間かからずに書いたので誤字脱字多いと思います。ご指摘いただければ直しますので…!


閲覧して頂きありがとうございました☆




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― 新着の感想 ―
[良い点] ウィザルさんのキャラ、カッコイイです。 [一言] 財源になるほどの美しさを持ったラズベリーさんすごいです。
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