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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

顕微鏡の見つめるモノ

作者: 土凡夊山

どうも、土三夕凡(ツチミセキハン)です。

目の前に一本の顕微鏡。

ここは理科室。今は放課後、掃除の時間。私の掃除の班は5人だが、今日はみんな用事があるらしく、私1人だ。

何故顕微鏡があるんだろう?理科室だから当然かもしれないが、理科の先生はとてもしっかりしていて、しまい忘れることはないはずだ。

ふと覗きたくなった。何故かは分からないが、とても覗きたい。

試料は置いてないので何が見える訳では無いが、覗いてみたい。

廊下を見ても誰もこの教室に来る様子がない。理科室は校舎の端にある。理科準備室が隣にあるが、理科の先生は今職員室におり、掃除が終わったら理科室の鍵を返しに行く約束になっている。

誰も来ない部屋で1人、そして何故か置いてある顕微鏡。後で報告するとしても、1回覗くぐらいいいのではないのか。

心臓が激しい鼓動を鳴らしているのが聞こえる。その鼓動を感じながらそっと顕微鏡を覗いた。

黒い塊。

驚いて思わず顕微鏡から顔を外した。

なんだろう今のは…。

顕微鏡のステージの上を確認したが何も無い。反射鏡はしっかりと理科室の灯りの光を受け取っている。

恐る恐る再び顕微鏡を覗いた。そこにはまた黒い塊。じっと見てみると、それは塊ではなく、黒い烏だった。なぜ烏が?

烏が私の視線に気づく。

烏と私の視線が合い、数秒間見つめあった。

烏が口を開く。

「君には見えるんだね。」

「え?!」

突然聞こえた声。顕微鏡から顔を外して周りを見渡す。誰もいない。

「こっちだよ、こっち。」

顕微鏡の方から声が聞こえ振り返ると、そこには漆のような鮮やか長い黒髪の青年が机の上に座っていた。

「誰?!」

青年はニコッと笑った。

「誰だろうね。」

優しい声。その声を聞くと何故か心が落ち着いた。

ハッとした。どう考えても不審者である。思わず身構えた。

「誰ですか?大声出しますよ?」

青年は相変わらずニコニコとしていた。

「酷いなー、さっきまで熱心に見てたのに。」

「え?…。」

青年の座っている机はさっきまで顕微鏡が置いてあった。その顕微鏡がなくなり、彼がいる。

「君の願いを叶えに来た死神だよ。さあ、君の願いを聞こうか。」

唐突過ぎる展開。自分のことを死神という人が本当にいたとは…。ヤバい人かもしれない。

「にしても君は偉いね。いつもは5人ぐらいで掃除してなかった?」

そう5人。いつもは5人で掃除していた。

「他の人は?」

「みんな…用事あるって…。」

思わず彼から視線を逸らした。

「用事ねぇ。そっかそっか。分かったよ君の願い。」

彼は突然机から飛び降りた。驚いて彼の方を見ると、彼は目の前にいた。

「何を…?!」

「動かないで。」

彼は私の顔を両手で包み、私の右眼をじっと見つめた。

「分かった、1人は体育館で部活中のようだね。」

「え…?」

彼は窓を開けて身を乗り出した。

「何を…え?!」

彼は身を投げ出した。

体育館で部活中、1人…。そこで私は気づいた。

「山本さん?!」

掃除の班員の中で今日部活があるのは女子バスケ部の彼女だけだ。

私は走って体育館に向かった。

彼が何者か、何をやるかはわからないが、なんとなく危険な気がした。彼は自分のことを死神と言った。

生命の死を司る神。魂の管理者。

自分のことをそんな風に言うやつは確実に危ない。

体育館まであと少し。まだ何も起きていないといいな。そう思ったのがいけなかったのかもしれない。

「キャー!!?」

突然女子生徒の悲鳴が聞こえた。1人ではない、複数。何かが起きた声だ。

恐る恐る体育館を覗こうとすると後ろから男の先生が走ってきた。

「どうした?!」

「いえ、私は今悲鳴が聞こえて…。」

「そうか。早く帰れよ。」

そう言って体育館の中に入って行った。体育館の中の1箇所、そこには人が倒れていた。

それは人と言っていいのか。人だったと言った方が正しいかもしれない。

手足は本来曲がる向きとは逆に曲がり、内蔵が飛び出ている。

「これは…。何が…山本!?山本なのか?!何があった?!」

山本…女子バスケ部は人数が多い、山本なんてありふれた苗字、いくらでも…。

「山本…リンカさんが…突然倒れて、苦しみ出して…それで…。」

部長と思われる女子が泣きながら話す。

山本リンカ。私のクラスメイトで同じ掃除の班。

「おっ、来たんだね。」

聞き覚えのある声。振り返ると顕微鏡の青年がいた。「やっほ〜。」と言いながら私に手を振る。なぜこの人はこんなに楽しそうなんだろう。

「あと三人だね。」

彼は不気味に笑った。

「あなたは何なの?!」

私の怒りと恐怖の混じった声に彼は驚いた。

「何をそんなに興奮してるんだい?」

「興奮してるんじゃない!」

彼は困ったような顔をしていた。困っているのはこっちだ。私は俯くしかなかった。

ふと彼は周りを見渡した。

「人が集まってきたね。僕は戻るよ、君も今日は早く帰った方が良い。はい、これ。」

彼が渡してきたのは鍵だった。

「早く返した方が良いよ、これから慌ただしくなる。僕は明日以降は旧校舎の理科室にいる。あと三人。君の願いを叶えるよ。」

「待っ…?!」

顔を上げると彼の姿はなかった。

あと三人と彼は言った。つまり、私の掃除の班員全員を殺すまで止まらない。

彼は私の願いを叶えると言った。私の願い、私が彼女に死んで欲しいと願ったのだろうか。

私の願いとは何だろうか。

いかがだったでしょうか。

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