蠱毒物語。好奇心は命か知に羽化する
こちらも急いで書いたのでメチャクチャです。
ちょっと謎展開になってしまいましたが「これだから底辺は…」と吐き捨てて下さればなによりです。
「そう言う訳で、お早い事失せやがれでッスわ!」
どう言う訳で?とツッコミされそうな言葉の強襲と共に奴の頭にハンマーを叩きつける。
「────泥雲霧払い」
だがやはり、ファイヤーボール程度の火力では体力も状態異常も気にならないのか、事前情報ではNPCやモンスターとかはプレイヤーと違って一定の体力減少により怯みが発生するらしいが謎のイケメンは平気な様子でスキルを放って来た。
「でッスわよねぇ〜! 瀕死になってません事よねぇ〜!」
はいはい。やってないフラグ回収したよ。
……まあね? 俺は"理解"してるんで、ね?
奴が生きてる事は分かってたしどうやって凌ぎきったのかも分かるよ。
どうせ変形する鎧を一瞬だけ展開して装甲を厚くして凌いだのだろう。てかそれ以外にアソコから防げる防御系のスキルはない。発動速度が遅いからだ。
まあ分かってる行動にいちいち動揺なんかする訳がなく、奴が放った泥雲霧払い……効果は自分より優位にいる相手に対して威力が高くなるだったかな?
ジャイアントキリングな性能で対人性能が高いそのスキル。
だかな、イケメンよ、現対人環境一位で俺の理想であるプレイヤーにもそのスキルは使われてる。
ならば当然見慣れているのだ。
「泥雲は……自分より不利な相手には梅雨ほどの威力にランクダウンするッスわ!」
俺が優位なのは身動きしづらい体勢の相手に武器を振ろうとしたからだ。
ならば攻撃と判断されなければいい。
奴が俺にトドメを刺さなかったのは今みたいに攻撃系のスキルはあるが有効打になり得ず体力ミリで耐えられるかもしれない。だから体力を上手いこと減らしてこの一発で終わらせようとした。
俺の体力値を見れるスキルを持っているのか、俺は聖女のパッシブスキルにより秒間毎に体力を自動回復するがそれは『元々の』ではなく『現在値』を参照するため体力が危険ラインを切ってる今の俺では気休めにもならない。
だからこの泥雲を食らえば奴の確信めいた行動も相まって負けてしまう可能性大だ。
相手がピンチならば、な。
初見ならともかく一位さんの対戦動画を何度も見てきた俺からしたらこの対処自体は今までより楽だし実際もうしてる。
「……回復させたのか……僕を」
「ついでにバフも掛けておりまッスわ♪ Serviceって奴でッスわ」
俺が奴の頭にハンマーをぶっ叩こうとした時、スキルを使わなかったが実のところヘカノティアはスキルの発動中は形状を変えられないのだ。
勿論パッシブスキルとかの常に発動してるとかそれに近いのは例外だが、俺はそれにより振ってる間に形状を最後の一つの旗に変えた。
旗の効果は回復、強化魔法の詠唱破棄とヘカノティア最大の特徴のオリジナルスキルがあるがそれは今は関係ない。関係あるのは詠唱破棄の方だ。
ファイヤーボールで何処まで減ったのかは知らんが、怯みがないのなら体力は半分以上あると推測できる。
鎧によって威力も減少されてるから奴の体力を十割にしてその分の二割減ってたらいい方だろう。
ので、回復魔法の下級に位置するヒールと強化魔法のチャージを詠唱破棄で打ち込んだ。回復は掛けすぎると体力値を超えてストックされるので回復量の少ない下級魔法のヒールを掛けて
まあそんな感じで俺よりも圧倒的に体力が高く、強化もされて、そんな奴が不利に捉えるほどこのゲームのシステムは狂っていない。
泥の刃と言うべきか、生で見ると割と怖いけどそれが俺に当たり、そして砕けた石みたいに崩れる。
泥雲霧払いは不利な相手にはダメージを負わせず、逆にその差だけ発動者に行動不能のデバフを与える。
よって謎のイケメンは俺と奴の体力差かな?を参照してその分の、おそらく1分くらいのデバフを喰らってるはず。
本来なら普通の攻撃スキルをやればいいのにどうしてこうなったのだろうな。
アレだ、雑に軽量戦士を調整した運営が悪い。もう何もかも悪いじゃん運営さんよ。
「何をするのも成すがままって感じでッスわね。その前に回復させていただきますが」
旗により俺が使用する回復と強化の魔法は詠唱を破棄することができ、詠唱短縮では厨二病分を簡略して魔法名だけを言うのだが旗の効果でその魔法名も言わなくても良くなる。
ヒールよりワンランク上のハイヒールを今度は自分にかける。
さっきまでは猛攻によって回復する余裕がなく、また旗は攻撃にも利用できるが基本的に戦闘向きではないので謎のイケメンのサンドバッグに成り下がっていたが、好転した今の状況ならば余裕を持って回復に務められる。
しかし詠唱破棄にもデメリットはある。
詠唱を破棄した魔法はクールタイムとは別に使用が封じられる事だ。
まあでも、この状況なら関係ない。
残り40秒くらい。
回復は保険だ。
あり得ないがもしかしたら窮地を脱して反撃するかもだから念の為に回復をし、次に俺は詠唱破棄により使えないチャージの代わりにそれより上位の物や効果が近寄ってるけど違うバフを自身に掛けまくる。
この時点で30秒を切った。
少し相手が動いた気がするが秒数カウントが間違ってたのかな?
早めに終わらせなきゃとヘカノティアを鎚にさせてヘビースイートの時にやったストレートスマッシュを発動する。
「────アダム」
ーー2
森から果樹園まで数十分。
奴との戦闘で一時間近く。
再びリトライすることになった俺はもう一度奴と出会すことなく果樹園を翻弄し、ヘビィースイートを倒すことなくそのまま果樹園を通って次の沼地ステージに足を掬われながもようやく第二の街に着いた。
「はぁ……最悪でッスわ……」
再送する苦痛を俺TUEEEEで誤魔化して何とかここまで来た。
結局あの後俺は負けたのだ。
何故負けたのかって?
分からん。
そもそも奴が気配がなく姿を突然現した原理も分からないし、視聴者に聞いても酷似してる物すら分からない始末。
あまつさえそう言うイベントだと結論された。
だがそれで納得するには流石に無理がある謎だ。
何故なら俺は気付いたら始まりの街にリスポーンされていたから。
(登場についてはワープとか思うが、最後のは何度考えても分からん。ワープの応用だとしても市んでるって事になってるし、それならなんやかんやで紙んだのかと思うけどその過程がなく突然街に戻されてるんだよなぁ……リスポーンとして)
即タヒ系のスキルか何かだろうか。
ともかく4時間に及んだ3回目の配信はちょっとモヤっとした感じに終わってしまった。
配信を打ち切った俺はその後も街を探索し、戦闘に使えそうなアイテムや素材を換金したりして次回の配信を円滑に進める準備をしていた。
「お、この釘打ち用ハンマー良さそうでッスわね」
明確な目標が出来た今、俺はちょっと鍛冶職の専用アイテムを買い漁っていた。
謎のイケメンとの戦闘は強制的に終わらさせた感あって最悪な思いをしたが、何も収穫がなかった訳ではない。
奴の変形する鎧に最後に言った『アダム』と言う言葉。
宗教系の匂わせがプンプンする伏線は俺に金目的の配信だけではなくゲームそのもの自体にやる気を起こさせるキッカケになった。
(まずはアイツの防具を再現してみよう。考察はその後だ)
今後また現れるのかもしれない。
もしかしたら無いかもだがその場合の為に俺はアイツの対策を考える必要がある。
だが一回の戦闘で引き出せたのは鎧が変形する事と奴自体の戦闘能力だけだ。
鎧の性能までは判明出来なかったので全体的に見れば不明点が多い。
(なのによく俺はあそこまで強気で攻められたな)
オタクとしての知識と昔の経験による危機管理能力の賜物よるのか、何にしてもあの鎧の謎が分からないことには対策のしようがない。
だから実際に使ってみて、それを解明しようとしたんだが……
「鍛冶職でね〜ッスわぁーー!!」
またしても課金してジョブガチャに勤しむ俺。
周囲のNPCが好奇の目で見てくるが、まあ当たり前だろう。奇声を上げる女なんか注目の的だしそもそも俺自体が承認欲求様を満たす為に周囲目を集めるように課金装備外して適当に服屋で買ったワイルドキャットなる露出の高い服を着ているのだ。
まあ注目の的だろう。恥ずかしいが、自分の平常心のためにやらなぁアカンのはかなりの矛盾を感じる。
「……あの聖女専用装備がお怪しいと勘ぐりまして試しに脱いでみたのでッスが……何度お繰り返しても結果は同じ……やはり操作されておられると考えるのが妥当と言う事でしょうか」
奴の……ふむ。
いちいちこれで名指しは如何ともしないな。
『アダム』と呼ぼうこれからは。
ともかくそのアダムの防具を真似ようにも鍛冶職にならなければ武器防具すら作れない。
しかし確率が操作されているのならそれも叶わない……さて、どうするか。
少なくともNPCには頼れない。
NPCに出来るのは決められた装備を手順通りに作る事で一緒に創意工夫して新しい何かを作ることはできない。
となると他プレイヤーとの共同は不可欠。
(でもなぁ……めんどくさいんよなぁ……オンラインゲームでのプレイヤー同士のいざこざはよく耳にするし、現実以上に配慮しなければならないしなぁ……)
ネットもネットで色々と面倒だ。
下手したら現実よりも厄介なことないか?
……まあ、こんな感じで出鼻を挫かれた俺でした。
幸いにもプレイヤースキルによってはアダムと渡り合えそうであったから俺と同等のレベルでステータスポイントもその分から割り振ってたのかも。
だとしたら変に偏ってるスキルとかは習得するために必要なポイントをやりくりした結果だろうか……だからと言って最初に泥雲霧払いを覚えさせるより普通の攻撃スキルを覚えさせた方が効率的だろ。
と、俺が先が思い知らされる展開に机の上でグダられていると足音が一つ、俺の元に近づいて来た。
(? こんな痴女に関わろうとするNPCとか居るんだな……)
俺が居座っている席はギルドの端に位置する。
しかもここ以外が空いてない訳ではなく、他にも空いてる席はチラホラとあるはずだ。
わざわざ面倒な手合いの近くに来るとはとんだ変態か蛮勇な勇者かのどっちか。
まあそろそろログアウトするので関係ないが。
「あ、あの、アンタは俺クシさんでアルか!!」
「!? 何その口調でッスわ!?」
俺も人のこと言えないけど、何そのアルって語尾。
アル中か何かかよ。
衝撃な話し方にビックリして思わず振り向くと、そこにはチャイナドレスを着た中学生ぐらいの美少女がいた。
「その……まっずは自己紹介つーかぁー、アんシはゆたんぽってネームアルYO。 アンタと同じ性別逆転の被害者だからシクヨロアルね」
小悪魔みたいな風貌にお団子ツインテールの黒髪。
首元にかかるサイドテールは丁寧に編み込みをされており、なんて言うか魅惑的だ思うよ胸元空いてるのに意味がないほどのちっぱいとか特に。
いやそれよりも何だって?
俺と同じあの課金パックによって女になった?
「……そう言えば初回配信の時、その事について言及した方が居ましたが、もしかしてその人でッスわ?」
「その人でアル!」
プレイヤーネームが表示されている。
さっき言ってたのと照らし合わせると昔学校で習ったような気がする漢字だ。
湯の湯の婆?
湯は「ゆ」の他に「たん」と読めるとそれを使ったラーメン屋で覚えてる。婆って「ぽ」とも読めるの?
ゴメンやっぱ習ってないかもしれない。誰に謝ってるんだ俺配信はとっくに終わってるぞ。
「はぁ……? それで、貴方様は……一体何の要件で尋ねて来たのでッスわ?」
「あーね。アんシはマヂの頼みがあるアルYO」
「はいはい。それは何でしょうかでッスわ」
「グラビアモデルになってくれっつー頼みアル!」
「……んーー??????????」
何言ってんだこの人。
口調は俺みたいに強制的に変更されたのだろうがその脳味噌は据え置きのはずだろ?
出会って間もない人にグラビアやれってなんだよ。
あ、待って。
凄い勢いでどこから取り出したのかカメラを取り出したぞ。
そして勝手に撮り出したぞ!
グラビアってのはよく知らんが水着とか着た状態で撮るんだろなんで肌面積が少ない時に…あー!! そうだった!!
俺今、痴女コスだったーっ!!
「ちょ、何、勝手に、撮って、せめてbl○ck ○ird fl○で撮って下さいましーっ! ッスわぁ〜ッッッ!!!」
その後、ガチムキの受付嬢(♂)に外へ放り投げられた。
「アレわー警備員だと思うんアルYO」
「確かにそうでッスわ」
コーヒーみたいな黒色の飲料を飲みながらそんな謎の会話をする程には何故か打ち解けていた。
いやなんで?
今回、補足が長いので読み飛ばし推奨。
《補足》part 1 アダム
アダムさんの格好とかあんまり考えてなかったのでかなり適当です。これから作り上げていきます。
ネタバレすると後3回くらいしか出番はありません。
《補足》part 2 ソロモード
ソロモードと言っても他のプレイヤーが乱入できない訳ではない。
ソロモードのさい、個人個人に設けられた専用のルームがあるのですが他のプレイヤーは特定のルームの番号を入力すれば後は部屋主の許可が降りればソロでも他のプレイヤーは入れる。
しかしその許可の初期設定がOFFに設定されているため番号さえ分かれば不法侵入し放題の無法地帯へと化す。
《補足》part 3 湯湯婆
湯湯婆さんは今後の主人公さんの相方枠になる予定です。
彼女もとい彼が主人公さんの元に行けた訳は上記の理由からである。
なんで同じ奴が居るんだよ。とか、そんな都合よく美少女なれるのかよ。とか、無断で撮って無断で人のルーム入って情緒どうなってるんだと思ってる方も居るかもなので言うと。
もしかしたら俺クシさんルーム設定初期のままなのでは?→掲示板にて:皆んな! 俺クシさんのルーム番号割り出すの手伝ってくれ!→同士が集まって特定開始→2時間くらいで特定完了→ヨシ! じゃあ行く人決めるけど俺クシさんと同じような性別逆転した人な!(意図は不明)→結果、湯湯婆が選ばれた(完)
ま、まあタイトル通りなので…ほら、好奇心に駆られた奴らがネットという蠱毒で争って浮かしたのが湯湯婆さんなので…はい。
ちなみに湯湯婆さんの口調書いてる時、頭痛がしそうになりました。