眉目秀麗。俺自身が美少女になる事だ(?)
「高嶺の花」と言う言葉がある。
意味的には高い所にある花とかそう言う意味だろ。
……多分……。
曖昧だなとは思う。しかしこんなクソニュアンスになるのも仕方ないと言うか……アレ、俺自体、昔聞いただけだから本当に詳しい意味は知らん。調べる気もない。
「はぁ……"ソレ"を体現したのが今目の前に居られるのですよねぇ……鏡面越しで、でッスわが……」
奇怪な語尾により今一瞬自分が何を言ったのか分からなくなった。
その変な語尾も、この現実の自分とは似ても似つかない分不相応な容姿も、全てこのアバターに刻まれたデータ道理なのだからホントに質が悪い。
(これが自分じゃなかったらなぁ。 ……ホント自分じゃなかったら……どうなるんだ?)
実際、美少女すぎて近たり難い、まさに高嶺の花と言うのが似合ってる(主観)女性アバターが例えば本物の女性として現実に存在していたところでどうなるんだ。
その人と付き合える訳でも、ましてや口すら聞いてくれるか分からないのに自分じゃなかったらどうするんだよ。
告白? 友達から初めて交流を経てから告白?
それにしたって話を聞いてくれるのが前提なのにそもそも俺みたいな奴が話を聞いてくれると思うのか? と言うか俺自身が話しかけれるのか?
出来るわけないだろ。出来てたら一人暮らしなんてしてないし通院中も誰か見舞いに来てくれるだろ。
「そうでッスわ……身バレ一発芸しておケジメつけようとしてた俺クシが、この容姿の御令嬢と付き合える訳がないのにどうしようとしてたのでッスわ……?」
膝をついて四つん這い体制で落胆する。
そうだった。
学生時代はイジメこそ無かったが友達も居なかったし、授業以外は寝るか呆けてたし、先生以外は話しかけてくる人なんて殆ど居なかったし、話しかけられても名前どころか苗字すら覚えられてなくて呼ばれた事ないし、委員会活動も俺がいた方が逆にやりにくそうだったし、道徳でクラスメイトの長所を言ってみようとかそんなのでは必ず『静かで周りに迷惑をかけてない所』『掃除を真面目にできてる所』とか単調な物しか書かれてなかったり、
あれ……なんでかな?
バーチャルなのに頬に冷たい感覚がする。
「俺クシの青春銀河はマクロコスモスだった……でッスわ?」
可笑しいなぁー別に辛いことだけじゃなかったのに。
例えば、新学期特有の自己紹介では紹介し終わった後に静かになったけど担任の無駄に響きのいい拍手と一緒にクラス全員から歓迎されたし! それに修学旅行ではなんやかんやで一人ではなかったし………まあ、大体温かい目か疎ましい目で付き合ってくれてる感じだったけど……
(あー懐かしいなー。旅行先の街にあるレコード屋さんで聞いたプログレが高校での一番の思い出だったかなぁ)
当時の高校はヤンキーも居て、イジメも合ってかなりビビりながら登校したなー。でもなんか標的にされなかったな?
一度、不注意で肩が打つかった事があり、しかし殴られると思ったがそんな事はなく素通りされた。
今思えばただ単に認知されなかっただけかも。
「あれ? ……なんでかな? 目から涙が止まらないでッスわ……」
すっっげぇぇ出てる。
こんだけ有れば女子高生に盗まれても平気だな!
「平気じゃねぇぇぇぇ!!!ッスわぁ!!! 何がお悲しくて美少女アバターでネカマ配信なんか、ましてや語尾も一人称も常軌を逸する偏屈な口調で配信なんか出来るかぁぁぁ………痴態露出も良いところでッスわぁ……」
確実に黒歴史だ!
就職活動を諦めて、たまたま出来たチャンスにあやかって他人から貢いで貰って生活するとか恥でしかない!
企業と契約して立ち絵制作やら機材やら、感覚的に言えるにわか知識しかないから詳しくは知らないけど、それでも色んな努力の果てでVtuderレビューした人達に失礼極まりないだろ!
調子に乗ってVを始めんじゃねぇ! 謝れ!
「申し訳ございませんでッスわ!!」
過去の金でニート生活して、しかもネカマしてるとか親が見たらなんて思う?
恥ずかしい。だよ!
「お父様、お母様大変申し訳ありませんでッスわーーーー!!!」
お前みたいな奴を産んでさぞかしご両親は落ち込んでるんだろうな! 実際最後はゴミを見る目で見てたしな!
「ォォォゴォだがががががごごぎガぜぜ、ぜ、せ"め"ら"れ"て"る"……俺クシの中の俺クシに責められてる……し、しぬ……」
寄生虫が! 氏ね! クズが! 市ね!
「い、嫌だ。シ、下、子、しにたくない……生きたい!」
駄目だ死ね!
「うごががが息が急り、ぢずらく!」
────制御機能を超えました。直ちにログアウトして下さい────
ーー
こっからは後日談だが、この制御機能は精神異常、または長時間ログインなど身体に害がある行動が確認された場合に発動する機能である。
そして俺はその警告に従いログアウトしようとするが、
『ア?……あああれぇあえアレぇぇぇ??? ななななんでログアウトボタンがないのでッスわ!?』
クソパニクっててログアウトボタンを見逃し、
『ピッ』
まるでテレビの電源を切ったかのような発声をして強制退出された。
「ま、こんなの動画に出せないよな」
実のところ俺はとある事情から入院していた時期があり、今でこそ一人暮らしが出来るくらいには社会復帰したがそれでも薬を常備しているし、職に在り付けなかったからVレビューしたけど、
「でもまー、こんな調子じゃ駄目だよなぁ」
ログインした途端に精神異常きたしてるんだもん。
こんなんじゃ配信中に発狂するに決まってる。
(アレでも前回は長時間って程ではないけど割と少し長くプレイしてたけど基地らなかったな)
うーん……もしかして人に見られてるから緊張してある意味冷静でいられた?
「んーいや緊張てか、安心って感じがするな」
前回の配信を思い出し、その時の感覚から考察し、導いた結論は俺は人に見られる事で逆に安心感を得るうさぎタイプだったって事。
「マジかよ。否応にも人と関わらないとタヒるじゃん」
配信する理由が一つ、出来てしまった。
ともあれ、これで安心してライブ出来ると同時に発狂するなら実況動画作れば良いじゃん作戦が徒労に終わってしまった。
「一応テストでビデオ機能を設定オンにして撮ってみたけどこれはお蔵入りだな」
そう言い美少女が突然発狂する映像をフォルダの奥に閉まった。
捨てないのは戒めのつもりでフォルダ名も【戒め】に命名した。
「明日から配信始まるとして、取り敢えずは……クスリとエナドリをキメてヘブンするかぁ……」
主人公くんの自己PR的な話です。
訳あり人物で人間関係拗らせ系の主人公を描いたつもりです。
そこに補足するとかなり面倒臭いライダーオタクでもあります。(後書きで補足しないと伝えられない作者のクソ文章力)